9話 集う仲間(傭兵視点)
運が尽きたと言えば、良いのだろうか。
それとも、縁に見放されたと言えば良いのだろうか。
この世に生まれただけで運が良い。両親も揃って健在。俺のいた村の爺さんはそう言っていた。
だが俺には、そう思えなかった。
兄弟が5人。上には2人下にも2人。食卓は毎回戦場で、気の弱い俺は何かと貧乏くじを引かされた。
「だから、村を飛び出したまでは間違っていなかったと思うんだ」
「なるほど」
「傭兵団に転がり込んで、雑用とかまぁ、いろいろ。そんで、経験を積んでギルドに個人登録した」
嘘ではないが、限りなく嘘だ。村を飛び出したガキがまともな職に就けるはずもなく、ゴロツキどもの世話になり、顔立ちが良かったせいもあって慰み者にされ、成長したら捨てられて、13以上なら誰でも入れるギルドに身を寄せた。
「正直そのときは、気分がよかったよ。何かになれた気がしていた」
「はい」
「必死に働いた。個人で登録している傭兵なんか、評判が全てみたいなところがあるからな。いい働きをすれば店で飲めるくらいには、儲かったし。期待にそえなければ、その日の空腹を紛らわすのに必死だった」
まぁ、傭兵なんてそんなものだ。傭兵にとって名前は、商品価値の全て。
名の知れた傭兵団になる程、名前を重んじる。
名前を騙り潰された奴らは数知れない。そして、ここの団長はあんまりその事を分かっていない。今まで、潰されてないのは単に知られてないからだ。その辺りのリスク管理は、何か上手くやっているのだろう。いずれにしろ、時間の問題だ。
名の知れた傭兵団に潰されるか、単純に死ぬか。何かを選ぶ権利は、俺には無い。
だというのに……
「よく、こんな話にそうも。楽しくないだろ」
「そんな事ないです。わたし、こういう話を聞くのが好きなんです!」
「人の苦労話をか?いい趣味しているな」
「いえいえ、違います。自分で家を出る決断をして、いる場所を決めて、今も頑張っている。自分で考えて決めて動く人の話だからです」
そんな権利なんか、もう無いって。




