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第一章 5「灰被りの地下墓 最深部」

 その後も試練とやらはどれもギミック系で大変だった。


 例えば同時に2対のボスが出現し、まとめて刈り取らないともう片方が復活させるタイプだったり、物理攻撃が通ったあとは同じぐらいの魔法ダメージを。魔法ダメージの後にも、またしても同じぐらいの物理攻撃を要求するなど様々なボスが配置されていた。


 どいつもこいつも面倒だが今の俺には難しくない塩梅の難易度である。だがこの癖のあるダンジョンをクリアできるのは───上位陣ぐらいじゃないのか?

 そう思うと疑心程度であったこのダンジョン自体を不審に思い始めた。


 そう思うのは戦利品だ。地べたに座りながらもこれまでドロップしたアイテムを整理していく。地図、謎のカバン、アイテム収納用の袋。手に入った時は気にしていなかったが、妙にしょぼいのが俺を逆に困惑させてくる。


「(あのレベルの試練のクリア報酬がこれとは……バグじゃないよな。だがこれはいささ不自然じゃないか?)」

 と思うも、これまでの長年の実績があるエンデスの開発が安直にこれらを渡すわけないと深読みした俺はウンウン唸りながらも階層を降りていく。地下だというのに此方を照らすような日差しで気づいたが、ここが最後の階層フロアのようだ。


「ここでラストか、あれは……NPCか……?タゲロックができないから、今のところ敵ではなさそうだが」


 このゲームは話しかける際は能動的に話すことが要求される。俺も最初は見ず知らずの人物に話しかけるには、まごまごしていたが、今は慣れたものである。


「やぁ冒険者くん、予想よりちょっと遅かったね」


 その少女は木の椅子に座りながら歩いてくる俺へと話しかけた。


「あ、はい、すんません……ん……遅い?ああ、ちょっと話しかけるかどうか迷ってたもんでね」


「ギリギリだったね。あと一秒遅れてたら失格だったし。警戒してるのはわかるけどね〜ボク戦うの面倒だし」

 面倒と言われては肯定したいのもあるが、ゲームってそういうもんだろうと否定したい。


「……面倒って、じゃあさっきの4Fでこのダンジョンの試練は既に終わってたって事か?」


「そうとも!そして……おめでとう冒険者くん、全クリアだよ!」


 立ち上がった少女が指パッチンを鳴らし、煌びやかな演出が彼女の周りにだけ起きていた。少しシュールではあったが。


「お、おぉー……?」


 彼女に呼応するように此方もガッツポーズをあげるも、俺はついていくばかりで、イマイチ乗り切れておらずにいた。


「で、さっそく報酬を渡したいんだけどいいかな?」


「お、おう。俺は構わないが」


 お祝いムードから唐突な切り返しに振り回される。───情緒不安定かよ。


「さすが有一くん、話が早くて助かるよ」


 NPCがどこからとりだした袋を探っている間に、ふと疑問をぶつける。


「んん?なあ、なんでお前さんは俺のリアルの名前知ってんだ?」


「ありゃ、口が滑っちゃったか。ボクも気をつけてたんだけどねえ」


 とテヘペロと苦笑いするNPC?との間に短い静寂が走る。妙な空気を感じ取り、距離をとった瞬間、彼女からバースデーコーンを兜の上から被せられ、クラッカーが鳴り響く。


「お誕生日おめでとう!今日は君の誕生日だよ〜」


「いや誕生日じゃないんだが?」


 すかさずツッコミを入れるが彼女には通じない。


「いやいや今日は君の誕生日だよ。ボクの管理する世界でね」


「管理してる世界?全然話が見えねんだけど」


 何言ってるんだこいつは。そう言いそうになったが、そこは我慢した。失礼なのは良くない。


「バースデープレゼントは異世界への転生になりまーす!」


「……?……はぁ!?」


 異世界転生。厳密には俺が子供の頃にみたアニメ映画で、似たような転移の方だった気がする。そんなジャンルもあったなと思いながらも、目の前で起きている事はまさに映画みたいなことであった。


「つまり今回の最後の報酬が、俺が異世界に行くって事か?」


「そういうこと。どうだい?ボクはこれでも女神だから、君一人ぐらい送るなら問題ないよ?」


 いまいち信用できないが、ひとまず話を聞くことにした。判断はそれからにしよう。

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