第七章 4「パーティー結成!」
「困ったなあ……」
その日の晩、俺は泊まっている冒険者ギルドの一室で、思案していた。
廃坑での出来事、それをギルドから密に詳細を尋ねられ、午後には魔女との密会。
なかなかのハードスケジュールを終えた矢先、俺の心配はメリネとアリサだった。
メリネがついている以上、アリサは問題ないとは思うが、そのメリネのことが気がかりであった。
何せあの魔女が俺との接点として、メリネを側に置いているのが気になる。
まあ魔女も今のところ何もしないとは思うが、メリネと会っていないからな。それが不安に繋がっているのだろう。やれやれ、攻略本やwikiに縋りたくなるぜ。
「とはいえ、魔女が行動しないはずもない。何か、イベントでも起こしそうだなあいつ」
午後の魔女との密会を振り返る。
あの女、魔女ヴェルデは確実に、俺が正体を隠していることに勘付いている。
わざわざ冒険者ギルドまで来て、名指しで俺との密会なんて、脅迫に近い。
なんとか俺の賞金首問題が解決するまで、正体が露見することを避けたいが、しかし、その方面の収穫はいまだに0。読みが外れてしまったか?
「後輩、ちょっといいか?」
「あ?あ、あぁ。すぐ行く」
俺の懸念を中断するように、扉からノックと声が届く。
ボックが呼んでいるが、何かあったのか?と兜を被り直して、扉を開いた。
「どうした?こんな時間に」
「あ、いや。その、皆と話し合いたくてな。俺とロロの部屋にメライ姉も呼んでんだ。その、後輩にも来て欲しくてな、今は大丈夫か?」
「まあ、俺は別に構わねえが……」
ボック先導の元、彼らの部屋に向かう。
彼らの部屋に上がれば、平服姿のロロとメライが談笑していた。
ボックも平服であったが、全身鎧のままの俺だけ異物感がすごい。
「連れてきたぜロロ、メライ姉」
「あ、こんばんわヴァルさん。すみません、こんな夜にお呼びして」
ロロもすっかり回復したのか、顔色も良くなっている。
俺の視界にも彼らのHP/MPバーも回復しているのが見て取れて、俺も安心した。
「ロロ先輩もすっかり良くなって、安心しましたよ」
俺が率直にそういうと、ロロは嬉しそうに頷いた。
とはいえ彼女はまだ万全ではないので、ベッドの上で安静であった。
「で、こうして集まった理由は?先輩」
「あ、あぁ。実はだな……」
ボックもロロの隣へ、椅子を持ってきて座る。
俺にはボックがロロへ対して過保護のようで、心底大事にしていると感じ取った。
ボックは恐る恐る、口を開く。何か重大なことを言うようだが、ボックに似合わねえなとも思った。
「さっき、ギルドの職員が来てな。廃坑での一件で、ランク上げの昇格査定への話が来たんだ」
「昇格査定?」
俺が隣に座るメライに尋ねると、彼女は頷く。
「一定の功績、またはそれに準する活躍したソロ・パーティーへのランク昇格っスね。今回だとパーティーでの昇格かと」
メライが言い切れば、ボックは頷いた。
「ああ。メライ姉が言った通り、俺ら4人のパーティー昇格だ。全員ウッドだから、次はアイアンになるはずだ」
なるほど。ギルドはそう判断するのか、覚えておこう。
「そこでなんだが、後輩。いや、ヴァルさん。あんたにこのパーティーのリーダーを任せたいんだ」
ボックは俺の方を向くと、改めてそう言い放った。
ボック以外を除く俺ら3人はボックに対して驚かざるを得なかった。
ロロが特に顕著で、信じられないものでも見るような表情であった。
「なぜ、俺なんだ先輩?今まで通り先輩がリーダーでいいじゃないか?」
「そうよボック。ヴァルさんなんてまだ新人さんなのよ、それに彼らを巻き込むなんて」
ん?ロロの言った言葉の後半に、何か含みを感じるが、メライは気づいていない。
ボックもそれがわかってはいるが、どこか苦々しく、どういえばいいか迷っているようにもみえた。
「なんでヴァルさんを選んだんスか?ボックさん」
メライの追撃の質問が飛ぶ。ボックはメライを見た後、俺を見た。
俺が何も言わずに頷くと、重々しく口を開いた。
「理由は二つ、ある。一つは私情とギルド側の要請だ」
「ギルド側?」
俺が首を傾げると、ボックは言葉を続けた。
「あ、あぁ。なんでも負傷なく生還したヴァルさんが適任だと判断したらしい。ま、まぁそれが妥当だよな。俺みたいに負傷して倒れちまうよりは」
「それは……」
「それに魔女から推薦があったらしい。ヴァルさんへ」
「推薦?あの魔女が、俺をか?」
どうやら魔女の仕業か。あの魔女が何を考えているかわからないが、仕掛けてきた。
ギルド側にも推薦なんてあるとは思わなかったが、魔女の意図が全く読めない。
だが、俺は下がるわけにもいかないので、こう返すことにした。
「俺は、ボック先輩がリーダーじゃないとパーティーに参加しない」
「!」
「ギルドがそう判断するなら、俺はウッドのままでいい。先輩らに迷惑かけちまうかもしれないが、俺はまだまだ新人。評価としては公正ではないはずだ。」
今度はボックたちは驚いた。
ランク上げの機会を断り、こうも剛毅で、一歩も引かないと決めた俺へ。
「……自分も、ボック先輩がいいっス!ヴァルさんを支持します」
「メライ姉……」
メライも同調するように、俺の側に立った。俺はメライに尋ねた。
「いいのか?メライ。お前さんランク上げたいだろう?」
「そりゃあまあ、そうっスけど、なんかこう。気持ちよく上がりたいっス」
「まぁ、俺も同感だな。先輩方差し置いて冒険者初日でリーダー就任もちょっと、ねえ?」
俺は握手をしようと手を差し出すと、メライがその手を持って自分の肩まで回して、身体をねじ込むようにして俺と肩を組んだ。
俺は呆気に取られたが、まあいいか!とそのままメライと意気投合。その豊満な胸が鎧に当たりそうで、ヒヤッとしたが。
「ボック、私も大丈夫よ」
「ロロ……。わかった、みんな、ありがとう……。でも俺がまだ、リーダーでいいのか、な?」
ロロたちと顔を見合わせた俺たちは、一同揃って頷く。
ボックがリーダーでいいと、3人で決めたのだ。
「ところで私情ってなんだ?」
「あ、いや。その……メライ姉に運んでもらう際に、一瞬だけ見えたヴァルさんの背中が、カッケーリーダーみたいって思っちまって」
「……そっか。いやあ、先輩にそう思われちまうなら照れちまうな!」
そう言って赤面していたボックを、後ろからロロが抱きしめた。それを振り解こうとはせず、ボックは素直に笑った。
「じゃあこの際、自分たちで改めてパーティー結成ってのはどうっスか?」
「「「おぉ」」」
メライがそう言えば、皆拍手と賛同を漏らす。
俺もいつかはこのパーティーから離脱してしまうだろうけど、少なくとも今は力を貸してあげてもいいだろう。
「じゃあパーティー名を決めよう。リーダーが決めてくださいよ」
俺はその場のノリでボックを煽ってやれば、ボックは何かを考え、そのまま立ち上がる。
「よし!俺ら紅の剣はここに、結成だ!」
「紅の剣?」
「あぁ!かの伝説の剣士がいたパーティー!焔の旅団を目指すんだ!」
「確か、彼らのリーダーが持っていた魔剣っスね」
なるほどなるほど。憧れ系のパーティー名か。
結局、その日の晩は皆でボックたちの部屋に泊まることになった。
ギルド側にはボックが断りを入れにいったようで、帰ってきた時のボックは清々しい顔であった。ま、いいけどさ




