第六章 幕間「ある冒険の終わり」
うら若き冒険者の一行が、一名を残してダンジョン続きの廃坑の入り口から脱出を果たす。
その若い騎士見習いの少女は、行動不能になった仲間二名を抱え、止めていた息を吐き出すように、口を開いた。
土埃で汚れた鉄兜の紐を解き、やっと恐ろしき蜘蛛の怪物の威圧感から逃げ去ってきたのだ。
少女はすぐさま傷だらけになった自らの大楯を地面に乱雑に落とし、革鎧だけの姿でダンジョンへ残していった一名の救援に向かおうとしていた。
────だが、廃坑に一歩踏み出せば、廃坑内の空間が揺れていることに気づく。
少女は廃坑内を無我夢中で走っていたため、崩壊しているとは気づいていなかったのだ。疲労と焦りが見える細面には、もうすぐここが崩落するの可能性を感じ取っていた。
鍛えたはずの体躯にふさわしい足が震え、あの怪物のプレッシャーを思い出していた。廃坑の入り口から引き返してやっと、解放されるように地面にへたり込んだ少女は、残った彼を案じるしかなかった。
────あの人を、置いていけるわけがない。
そうは思うが救援にいったところで、引き返す前に間に合わないだろう。
「……ッ、ごめんなさい……!」
騎士として息巻いたつもりであった。祖父の教えのまま心構えができていたはずだ。誰彼のために戦うのが、騎士の務めのはずだった。だが、彼が残ると言った時────安堵してしまった。
いないはずの彼に向けて、懺悔と謝罪を声にあげる。
「よう、誰に謝ってんだ?」
────少女は顔をあげる。ここにはいないはずの彼が、目の前に。後ろで廃坑が崩れ去っていく音を傍に、変わらぬフルフェイスの鉄兜に革鎧。会釈するように手を挙げた彼に、少女は笑みを浮かべた面で迎え入れた。




