第二章 2「癒しの祠 上層 ~ 中層行き」
ダンジョン内を歩きながらも色々把握できた。ここは3層までで入り口近い階層では比較的人が多く、こちらを見ても驚くもアリサに手を振って険悪にならずに済んでいる。
俺の目的としてはここの最下層にある場所でゆっくりアリサの静養させたいところだが、手帳を開きながら最短ルートを考えていると、謎に光っている箇所が視界に映る。
アリサに聞いてみるが何もわからない。気になった俺はそのまま凝視するぐらい見ていると、試しに触ってみると動かせるようだ。
まさかこれは……お約束の隠し通路ってやつか!こんな低階層であるはずないと偏見を持っていたが、動かせる壁を発見したのが確信へと繋がった。
そのまま動かせる壁を膂力を持って動かしていく。今の俺で気づいたのだから、新米冒険者しか来ないんじゃ見つかるわけないよな。
と苦笑いのまま隠し通路への道が開き、それを二人して感嘆の声を上げた。
「「おぉ……」」
「すごいねお兄ちゃん。すっごくピカピカしてる……」
「あぁ、ヒカリゴケでものすごく明るいな」
出てきた隠し通路は大きく、ヒカリゴケの山で眩しい。オークすら通れそうなほど広い。二人してハモるぐらい同時に驚くと二人して中へと入っていく。
隠し通路と言っても今ままでのフロアと特に変化はない。となると残りは……。道なりを進むと小部屋があった。未知を発見したのはいいが、色々と確認しなければならないのも確かだ。
この部屋自体が罠の可能性もありえる。そう判断すれば、アリサが部屋のドアノブを捻ろうとしてるのを引き止めた。
「アリサ、この部屋に罠があるかもしれないから俺が先に入る。一応気をつけて着いてきてくれ」
「わ、わかった」
みょうにしゅんとした彼女を励ます。
「大丈夫、怒ってないさ。ただここはダンジョンで、気をつけねえといけねえからな」
「うん……。でもお兄ちゃんは大丈夫なの?」
「(まぁこの程度の罠のダメージとか無効だろうけど、アリサに心配かけるわけにもな……ん?あれは……あの手で行くか)」
待ち構えている俺の元にポテポテ、とキノコの魔物がノコノコとこちらへ歩いてきた。
好都合だ。俺はあえて武器を使わず、パンチ一発をキノコに叩き込んで軽くノックアウトする。キノコはピクピクと痙攣するだけで死んでいない。
「いいかアリサ、危険を確認する際は物とかで代用するんだ。俺は魔物を使うが、魔物は危ないから参考にしちゃダメだぞ」
「う、うん。すごいキノコさん」
すごいという小声を聞きながらも、まだ生きているキノコを扉を開けてその中へと放り込んでまた閉める。
物音も何もしないから再度扉を開けた。中にも微動だにしないキノコが寝転がっているだけ。俺の視界には殴られた分のHPを継続回復している姿が映っている。
どうやらこの部屋には睡眠ガスのトラップがあって、目の前のキノコはぐーすか寝ているだけらしい。罠確認もできたのでインベントリから品質の悪い火炎瓶を取り出してはキノコへと放り投げる。
ぶつけられた火炎瓶は真っ二つに割れて、中身の液体が降りかかりキノコを燃やし始めた。睡眠ガスを消す勢いで燃え盛っているキノコは、一度も起きる事なくその身を燃やし尽くされて死んでしまった。
そういやと思い出したように手帳を取り出す。確か手帳にはキノコからドロップするアイテムが固定されてはいると記載されていたが、それは物理攻撃で倒したよるもの。ならばゲーマーとしては別の事を勘繰る。
手持ちの炎属性の攻撃として最弱火力の火炎瓶を、丁度よくキノコにぶつけたが……結果はどうかと待っていると、燃え尽きた後には魔石と燃えた胞子の傘なるものをドロップしていた。
俺の試みが成功し、新しい情報を得られたものだから村に情報を売るのもいいなと思いながらも部屋にある宝箱へと視線を向ける。
「さてこの宝箱だが、三つもあるのか。ふむ…アリサ、好きなのを選んでいいぞ」
「え、いいの?」
「あぁ、ただし一個だけな。欲張りも怒られちまうしな」
アリサにそう告げてインベントリから罠外しの小鐘を取り出して、彼女の後ろに待機する。
罠外しの小鐘は回数無制限だが一日一回だけの制約がある。だからこそ個数を一個だけにした。
からんからん、アリサが指差して選んだ宝箱に鐘を鳴らす。罠の反応はないが、念の為に俺が先に宝箱を開ける事にした。
ゆっくりと宝箱の隙間から中を覗くとには緑のペンダントと変な正方形の形をした黒い遺物が入っていた。
ペンダントはアリサに、遺物は俺がもらうことになったが、正直遺物をもらっていいのかと逡巡するが、村長にでも相談してみるかと部屋を後にする。
そういや残る二つの宝箱はどうなるかと振り返ると、部屋があった場所には綺麗さっぱりと扉がなくなっていたことに、俺は唖然とした。
でも俺たちの手元には先ほどのお宝があるので、夢を見ていたわけじゃない。釈然としないがそのまま道の奥へと進んでいく。




