第二章 1「バラ村へ」
廃村を後にした俺たちは地図をみながらも、近くの都市である交易都市アリューンへ向かう道を辿っていた。
しかし俺たちにとっては初めての旅なんで、時折休憩を挟みながら、ひとまずはアリューンにいく道中にあるバラ村に立ち寄ることになった。
幸いこの村は健在で、門周りには衛兵も立っていた。さすがに都市に近い周辺の村はしっかりしてるなと安心しながらも衛兵からの検問を受けていた。
当然ながら通行料を要求された。残された親父さんの財布から二人で数えながらも、二人分の通行料を払うことができた。アリサが教えてくれて助かった。
ホッとする俺より先に門を超えたアリサは初めてみる他の村に目を輝かせていた。バラ村はアリサが元々いた廃村よりも広く、人の往来が多いのだ。
アリサも自分の村以外を見るのは初めてなようで、キョロキョロしながらも色々見ていた。俺としては散々MMOゲームで村とかで訪れているから、彼女ほどの感動が少ない。もちろんリアルで見るのは初めてだからすごいとは思うが、ちょっとだけアリサを羨ましいと思いながら近くの屋台の店主の男に色々聞いてみることにした。
「らっしゃい、注文は?」
「薬か飯、あと休む場所が欲しいんだ」
店主に会釈した俺は、俺の後ろで隠れるように控えるアリサにも挨拶するように促しながら挨拶した。
強面の店主には俺がゴツい鎧を着てるせいで表情を固くしたが、年齢より小柄なアリサを見た瞬間表情が柔らかくなって答えてくれた。
「わりいな、薬は……ねえんだ。あとうちは飯屋だ。薬が必要なあそこにいくといい」
店主は指差ししながら答える。振り返った先には村の中央で、何やら人が集まっている。その人だかりの後ろには大きな入り口が見えた。
「なんだありゃ。観光名所ってか?」
「あれはこの村名物のダンジョンさ。癒しの祠という名前でね、あそこに新米冒険者などが毎年来るわけさ」
店主は屋台で何かの肉を焼いている。幸い他の客や村の住人も、この串焼きを食ってるから問題ないはず。焼いた肉と塩・胡椒などの香辛料の匂いで、出ないはずの涎が出そうになる。
「ダンジョンか…待てよ、癒しの祠ってことは、怪我の回復とかできるってことか?」
「そうだ。おかげでこの村に薬屋はねえし、必要になったら元冒険者の治療師が中で薬の材料を取りに行くわけよ。俺らもたまに低階層で怪我とか肩こりとか治しにいくのさ」
店主の言う後半は、人としては割と切実なことだなと、聞き流す。
「教えてくれてありがとよ。じゃその串焼き2本買うぜ」
「あいよ、毎度あり。そうだ、嬢ちゃん用に一本オマケしてやるよ」
親切に教えてくれた店主への礼を込めて、外食用に二つとおまけが付いた獣肉の串焼きを買った。
店主から巻いた葉の包み受け取った俺は、それをアリサへ手渡して早めの昼食となった。
なんの肉かわからないが、兜を外して焼いた獣肉を頬張る。
適切な塩加減が効いた美味い獣肉は、身の奥まで火が通ったおかげで食べやすい。元の体以来の久方すぎる肉に「美味い」と、声に出すとアリサも見上げて期待する目が輝いていた。
アリサも俺を真似するように、俺を真似て頬張ろうとしていたが、流石に食いづらいだろうと少しずつ肉を串から外して食べさせてやっていた。
肉を頬張って口に油の輝きでてかてか光るアリサの口を拭ってやったら、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。
「(アリサの療養にいいかもしれないな。)」
手首や、足首に巻いてある包帯がちらほら見えるアリサを見れば、ふとそんな考えが過ぎる。
毎年冒険者が来ると言うことは、比較的死傷者が少ないこと。それを踏まえてそう思った俺はアリサに聞こうと視線を向けて、彼女の方を向いた。
「ちょいと寄り道するけど構わねえな?」
「うん!」
「よし、ならのびのびと休息を取らねえとな」
アリサと共に列に並ぶ事になったが、俺がゴツい装備と幼いアリサを連れているアンバランスさに、辺りからの視線を集めている。
非常に気まずいが、次第と他の連中も気にしなくなっていった。
入り口にいるのは村の衛兵らしく、俺たちを一ヶ所に集めた上で説明を始めた。店主に聞いた通り、このダンジョンは新米冒険者や新兵向けのダンジョンとのこと。
ダンジョン内では回復治療を受けたり、ポーションを作れたりすることも可能。それに伴って冒険者向けの手帳や、教材が売られてるのも見た時は、確かに名物だろうなと思った。
その説明を受けた後にダンジョンに吸われるように人が入っていく。そのうち順番が回ってきたが、どうやら俺たちで最後のようで、入った途端ダンジョンの出入り口は封鎖されてしまった。外からの余計な二次被害を生まないようにすることらしい。
ダンジョン内はヒカリゴケと呼ばれる苔で比較的明るいが、魔物も当然出る。腰回りにピッタリと何かが密着したが、魔物への畏怖が治りきっていないアリサだ。そんな彼女の手を握ってあげながら進むことにした。
ここに出るのは緑と水色のスライムに、歩くキノコのような魔物。大きいフロアでそいつらと新米冒険者たちは戦っていた。さすがにこんなダンジョンに人型クラスの魔物が出ることはないだろうと思うが、振り返ってアリサの様子を伺う。
「大丈夫か?無理なら戻るか……?」
「……大丈夫。お兄ちゃんがいてくれるから、私も頑張る」
小刻みに震えてる手でこちらを見上げながらも答えたアリサの頭を撫でてやった。
「なら一緒に頑張るか」
俺の言葉を聞いたアリサは頷き、共にダンジョンの奥へと進む。目的地は中層のセーブポイントだ




