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第一章 15「始まりと旅立ちの朝」

 それ以来アリサが完全に回復するまで共に暮らし始めた。幸いにも容体は安定しており、途中からはアリサに教わる形でこの世界の言語の勉強していた。


 悪戦苦闘しながらも、必死に学ぶ俺を見て笑ってくれるようになったアリサとの穏やかな日々を過ごしていく。

 おかげで読み書き程度はできるようになったが、元から話せたのだからできないことはないだろうと踏んでいた。


 ふと練習がてらかき集めた本にあるはずのない見慣れた日本語があった。

 なぜこんなものがあるんだと内心思いながらも、アリサ曰くそれはこの世界に大昔に伝わったとされる、解読不可《ロストテキスト》なる先の時代の遺産らしい。


 日本語で書かれたそれは、何かの役に立つかもしれないので、俺が預かる事になった。


 それから太陽と月の追いかけっこを何回か繰り返した後に、アリサはすっかり元気になった。

 彼女のリハビリを手伝いながらも、無事に歩けるようになったアリサへ、俺は回復祝いとしてインベントリから服と自分がつけていたマフラーをアリサにプレゼントした。


 この世界での衣服は最初に着た者の所有物になるらしく、彼女にあげた服は、元々は俺がエンデスを始めた頃にもらった初期装備だが、喜んでくれるだろうか。


 上から古びた茶色の外套に白い平服、茶色の手袋に靴。おまけにアシュからもらったショルダーバックがよく似合う。


 さすがRPGの初期装備、男女両方でも似合うデザインなのは流石なもんだ。


 それを着たアリサは嬉々として翻すように見せてくる。俺から見れば女の子主人公の冒険RPGといった感じで完璧だ。


「どう、かなお兄ちゃん。に、似合う?」


「いいんじゃないか?可愛さが倍増で、よく似合ってるぜ」


「でも、こんな綺麗な服、もらってもいいの?」


「あぁ、仕舞っておくよりも、アリサが着た方がいいと思ってな、兄ちゃんからのプレゼントだから大事にしとけよ〜?」


 アリサは可愛いし、よく似合うとベタ褒めしてやった。真っ赤に照れながらもアリサはありがとうと言ってくれた──好感度高めなテンプレじみた台詞を浴びせられたが、悪い気はしない。


 そんな風に元気になった彼女のお披露目が済んだところで、出立の準備を二人で済ませていく。それが終わればアリサの親父さんや、名も知らない村人達の墓へと出向いた。


 俺はアリサを連れて村を出る事になった。そもそもここは廃村になってしまって自分たち以外の住人はいないし、こないだのように外敵に襲われる前に出たほうがいいだろう。


 手を繋ぎながらも、向かう先は共同墓地のアリサの親父さんの墓への挨拶だ。


「親父さん、アリサのことは任せてください。この俺の命にかけてちゃんと守って見せます」


「行ってきます、お父さん。もう大丈夫だよ、私にはお兄ちゃんがいてくれるから」


 二人して親父さんへの挨拶を済ませたのち、祈りを捧げた。しばらくここには来れなくなるだろうと、長い沈黙の中で色々思いながらも今後のことに想いを馳せる。


 さっきまで自分の主たる目的について思い耽っていた。そんなことを考えるきっかけはインベントリから懐かしいものを見つけたからだ。


 それはメモ帳にしては分厚い本だった。それを軽く、ペラペラ、とめくっていきながら振り返っていく。


 いろんなことを書き記していたが、途中からリアルでのやりたいことも混じってくる。何せそれはゲームを始めたことから付けていたやりたいことリストだった。


 書いてある通り、当時の俺はできないことや、やりたいことを書き留めていた。せめてゲームの中でもできたらいいなと書き記していたが、それすらも忘れてしまっていたようだ。


 ならばとこの世界でやりたいことリストをやってしまおうと決意した。

 まずは世界中を見て回ること、大変な旅になるけどやりたいことはやってしまおう。


「お兄ちゃん、どうしたの?」


「あ?ああ、すまんすまん。ちょっと考え事だ。そんじゃ行くか」


「うん!行ってきますお父さん、みんな」


 俺の手を握りながら廃村へと手を振るアリサと、それを真似するように俺も手を振って出発した。ひとまずはメリネの言ってた都市を目指していこう。

 

 そうやって二人での旅が始まった。この時に一匹のゴブリンが俺たちを見ていたことを後で知る事になる。


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