第一章 7「STAGE SELECT ▶︎ ???」
女神についていきながらダンジョンの奥へ、奥へと歩みを進めていた俺は、女神に問い掛けを投げつけた。
「なあ、女神様よ。どこまで歩くんだ?」
「もうちょっとかなぁ、暇だしおしゃべりするかい?ボクのことはアシュで構わないよん」
人騒がせで能天気、それでいて聡明なアシュへ、遠慮なくお構いなしに質問をぶつけていいことになった。色々知りたい状況であったが、アシュへの質問する時間も限られているので、大事なことを聞くことにした。
「どういう世界なんだ?その、アシュの管理してる世界とやらは」
「うーん、君のゲーム脳的に簡単にいうと、先任者のやらかしで生まれた律と混沌で渦巻く……ゲームのシステムとかが適応された世界って感じ?」
「え、なんじゃそりゃ……普通のファンタジー世界じゃねえの?」
有名洋画で見たようなゴリッゴリのファンタジー像が崩れていく。見るからに落胆した俺を、アシュはすかさずフォローする。
「ファンタジーはファンタジーなんだけど、先任の神たちがやらかしてねえ。そういう世界になっちゃったんだ」
「はい?」
つまりは元々は普通のファンタジー世界。それを担当していた初代達の何らかの失敗で世界が壊れて、どこかまともじゃない世界になったとアシュが、ちょっとだけ怒り気味に言い捨てた。
「白の男神と黒の女神。二人が勝手に始めた神々の盤戯のせいさ。まあそれ以外は普通の剣と魔法の世界だと思ってくれていいよ。わかりやすく言うと、ドラ○エとかが近いかな」
「……なるほど」
ゲームシステムが適応された世界と言われたからには、ゲーマーとして疑問が尽きない。RPG系なのかアクション系なのか、あるいは死にゲーなのか……。
そう深々と考え込んでいると、B5の地下を下った先にある大きな扉の前までたどり着いた。最下層のB5の下にあるはずなのに、聳え立つ大扉はまるで山のように見上げるしかないほど、壮大であった。
「ついたよ有一くん。さてチュートリアルといこうか」
「……チュートリアル?さっきので終わりじゃねえの?」
アシュに尋ねるも、彼女は首を振って口を開く。
「さっきは君への試験で、こっちは僕の世界へのチュートリアルさ。この大扉を潜れば、ボクの異世界へ直通だ。そこで君には二度目の人生をコンティニューすることになる。準備はいいかい?」
「俺に課せられる目的とか、使命とかは……?」
「ない。君は勇者でも無いから、特にやってもらうことはないよ。でも、強いていうなら……誰かを助けるヒーローでも、世界を旅する旅人になってくれていい。そうそう忘れるとこだったけど、君には特典付きだから、しばらくは安心したまえ」
特典。RPGゲームなどで二周目などを始める際によくあるものだが……今回のケースだとさっぱり検討もつかない。とりあえず特典の話は置いて、彼女に聞きたいことは聞けた気がする。
「そうか……わかった。短い時間だが世話になったなアシュ、ありがとう」
ほんの数分程度ではあるが、律儀に彼女に頭を下げた。二度目の人生のチャンスを得られたことへの感謝のつもりで言ったのだが、気を抜くと涙が漏れてしまいそうな心持ちであった俺は、顔を隠したかったのもある。
「ボクも選んだのが君で良かったよ。また会うぐらいときは、今よりも!もっと!とびっきりの笑顔で出迎えてくれよ?」
「あぁ。今度会うときはうんと自慢してやるぐらいに元気になってやんよ」
そういって俺はアッシュとの握手を済ませる。彼女の華奢で小さな手を丁重に握り、離した矢先にアシュからハグされたのは驚いたが、どこかひどく懐かしい気持ちになった俺は、アシュを抱きしめ返した。
それからアシュと別れ、大扉の前に立つ。見るからに重厚で巨大な大扉に触れると、ほんの少しだけ勝手に扉が開き、俺が通れるだけの隙間ができた。
最後に感謝を伝えようとアッシュの顔を見ようと振り返るが、視界を暗黒のモヤに遮られた。まだ感謝も伝えきれていないのにと、もがく俺の耳元へ彼女の声だけ届く。
「がんばれよ、有一くん」
それが聞こえた際、微かにモヤの合間から見えた俺を見送るアシュの顔は、あいつに似てひどく寂しそうだった。
そんな顔を見てしまっては感謝ではなく、俺は別の言葉をアシュに言い放つ。
「行ってきます」
サムズアップをしたまま、俺は暗黒に全て包まれた。アシュとはどこかでまた、会える気がしたから。だったら別れは、笑顔で送ろう。
暗黒のモヤに五感の全てを包まれた俺は眠るように意識を失った。
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