黒き天使 第二期 第42話 ― 捕らわれた狩人
いつも『黒き天使(Anjo Negro)』を読んでいただき、本当にありがとうございます。
前回、レオンは惑星ノアへと向かい、リーの行動を追って要塞の監視任務に就きました。
そしてついに、リーは最大規模のクリザード要塞へ侵入します。
しかし、彼を待っていたのは単なる軍隊ではありませんでした。
王アレスの子供たち――五つの元素を司る戦士たちが、彼を「倒す」のではなく「捕らえる」ために動きます。
力で押し通してきたリーが、初めて真正面から力ではない戦いに直面します。
そして、その光景を遠くから見つめるレオン。
二人の道は、いよいよ交わろうとしています。
それでは、第42話
『捕らわれた狩人』
お楽しみください。
夜の惑星ノア。
雪に覆われた山々の間に、巨大なクリザード要塞が赤い光を放っていた。
その闇の中を、一つの影が進んでいた。
リーだった。
彼の足取りは静かだったが、その瞳には明確な殺意が宿っている。呼吸は荒く、だが迷いはない。
城壁の前に立つと、彼は一瞬だけ空を見上げた。
(もう戻れないな…)
次の瞬間、地面を蹴る。
人間ではあり得ない跳躍で壁を駆け上がり、見張りのロボット兵の背後へ回る。
閃光のような一閃。
金属音が小さく鳴り、二体の守衛は声を上げる間もなく倒れた。
リーは血の付いた刃を振り払い、要塞の内部へ侵入する。
(どんな壁でも関係ない。どんな軍でも関係ない)
(この王国は…全部崩れる)
しかし、彼が進むほど、違和感が強くなっていった。
通路の先に、小さな炎が灯る。
まるで誘導するかのように揺れている。
リーは眉をひそめながら進んだ。
その瞬間――
ゴゴゴゴゴ……
背後の床が閉じた。
岩がせり上がり、退路が完全に塞がれる。
「……チッ」
地面。
見えない場所で、土の力が動いていた。
さらに数歩進むと、水たまりが現れる。
そこに映ったのは――
無数の要塞の姿。
「水の幻影か…!」
同時に、突風が吹き荒れた。
リーの体が押し流される。
その先には――炎の壁。
イリスとソルの火が、生き物のように立ちはだかっていた。
さらに上空から、雷が落ちる。
雷光が檻のように空間を囲む。
上、下、前、後ろ。
すべての出口が閉じた。
完全包囲だった。
リーは歯を食いしばり、咆哮する。
「ふざけるなァ!!
俺は……お前たち全員より強い!!」
炎へ突撃する。
だが――
足元が崩れた。
大地の双子が操る岩柱が一斉にせり上がり、彼の身体を挟み込む。
動きを止めた瞬間、雷が直撃した。
体が震え、膝が落ちる。
さらに光の鎖が彼の腕と胴を縛り上げた。
リーは膝をついたまま、それでも吠え続ける。
遠くの断崖。
その一部始終を見ている者がいた。
レオンだった。
彼は帽子の影から静かにその光景を見下ろしている。
(リー……)
(お前の強さは、ずっと武器だった)
(でも同時に……お前自身を縛る鎖だったんだ)
その時、包囲する戦士たちが左右に分かれた。
静寂が落ちる。
雪を踏む足音がゆっくりと近づく。
現れたのは――
クリザードの王。
アレスだった。
彼は捕らえられたリーの前で立ち止まる。
そして、低く告げた。
「ようやくだな……」
「狩人が、獲物になった」
リーは顔を上げ、血を吐きながら睨み返す。
二人の視線がぶつかった。
その瞬間、空気が凍りついた。
――続く。
第42話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回のエピソードは、リーにとって大きな転機となる回です。
彼はこれまで圧倒的な力で敵を突破してきましたが、アレス側はそれを理解した上で「戦わずに勝つ」方法を選びました。
つまり今回の敗北は、力の差ではなく“戦略の敗北”です。
そして遠くから見ていたレオン。
彼はリーの強さだけでなく、弱さも理解し始めています。
この出来事が、今後の二人の関係を大きく変えていくことになります。
次回はいよいよ、アレスとリーの対話が始まります。
王が息子に何を語るのか、そしてリーは何を選ぶのか――物語の核心へ近づいていきます。
また、作品の設定資料・キャラクタープロフィール・世界観の補足、
さらに作中音楽(主題歌・イメージソング)や短編(one-shot)は
**作者ページ(マイページ)**にまとめていますので、ぜひそちらもご覧ください!
ここまで読んでくださった皆様に、心から感謝します。
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それでは、次回も『黒き天使』でお会いしましょう。




