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ブラック・エンジェル・ユニバース  作者: Leon Black Angel


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409/411

第11シーズン第405話(最後の嵐の前に)」。

ヴァーロンとの死闘の果てに敗北したレニ。しかし、その戦いは多くの者に深い感動と敬意をもたらした。第2 fase(第二フェーズ)が終わりを迎える中、温泉でのつかの間の休息、そしてソルの秘めたる想いと迫り来る不穏な影。ついに始まる第3 fase(第三フェーズ)の初戦で明かされる、驚愕のカードとは――。

挿絵(By みてみん)

スタジアムは今なお総立ちのまま、重く静まり返っていた。

破壊し尽くされたアリーナ。あちこちに刻まれた緑の魔力の痕跡、飛び散る破片、そして舞い散る煙。

その中心で――レニは両膝をつき、傷だらけになりながらも、どこか晴れやかな笑みを浮かべていた。

その目前には、緑のエネルギーを纏ったままのヴァーロンが静かに立っている。最後の一撃を放つための構えは完璧だった。

スタジアム全体が息を呑み、固唾を飲んで見守る。

「パパ……!」ヴィニーの目から涙がこぼれ落ちる。

ケルは震える娘の手をしっかりと握りしめた。「大丈夫よ……きっと大丈夫だから……」

レニは深く息を吸い込み、立ち上がろうとしたが、その両脚はもはや限界を迎えていた。

そのまま彼は仰向けに、大の字になってアリーナの地面に倒れ込む。そして、天井の青空を見上げながら声を上げて笑い出した。

「ははは……っ!」

ナンドが目を剥く。「レニ……!?」

レニは静かに目を閉じ、力を抜いた。

「負けた……完敗だ。お前の強さ、しっかりと思い知らされたよ」

スタジアムが静まり返る中、ヴァーロンは無言のままその場に佇んでいた。

「お前は強い……強すぎるよ……」レニの口元に柔らかな笑みが浮かぶ。「俺の負けだ、潔く認めよう」

数秒の沈黙の後、審判が高々と腕を振り上げた。

「――勝者、ヴァーロンおよび時の双子!!」

轟音のような歓声がスタジアムを揺るがした。しかし、それは単なる熱狂ではない。死闘を演じた戦士たちに対する、純粋な敬意の表れだった。

ナンドは頭を抱え込む。「嘘だろ……レニまで負けたのか……!?」

ソルは鋭い眼差しでヴァーロンを見据えていた。「あいつは……私の想像を遥かに超えている」

ダリアンは腕を組みながら、誇らしげな笑みを浮かべる。「さすがだな、ヴァーロン。クスピア人の名誉は完璧に守られた」

観客席からヴィニーが駆け出し、ケルがそれを追いかける。

レニは這うようにして上半身を起こし、駆け寄ってきたヴィニーを優しく抱き締めた。

「おいおい、泣くなよ。パパはまだこんなにかっこいいだろ?」

「パパぁ……っ!」ヴィニーはレニの胸に顔を埋めて泣きじゃくった。

その様子を遠くで見ながら、カムも苦笑いを浮かべる。「盛大にやられたな、お前」

「うるせえよ」レニは悪びれもせずに笑う。

長老カミも穏やかに目を細めた。「だが、今日の戦いで我々は多くのことを学んだ」

レオンはその光景を、静かに、そして深く見つめていた。

傍らに歩み寄ったラーラが、そっと彼の腕にしがみつく。

「ねぇ……これで、残っているのはあなただけよ」

レオンはアリーナの広大な空間に視線を向け、どこか楽しげに微笑む。

「ああ、胸が高鳴るよ」

「何がよ? 相手はあのヴァーロンよ?」

「だからこそさ。あいつと戦うのが、今から楽しみでならない」

ラーラはあきれたように溜息をつく。「あなたって本当にどうかしてるわ」

「かもしれないな」

リュウとジュンも近づいてくる。「このトーナメントは、僕らの想像を遥かに超えて進化している」

ジュンもうなずいた。「戦うたびに、自分の内側にある何かが書き換えられていくような感覚がするわ」

アリーナの中央に、ヴァンダーがゆっくりと姿を現す。司会者がマイクを受け取り、高らかに宣言した。

「――皆様、お待たせいたしました!! 第二フェーズはこれにて終了となります!!」

割れんばかりの拍手が沸き起こる。

「明日より――いよいよ第三フェーズが開幕します!! しっかりと体を休めてください。ここから先は、このトーナメントに潜む『真の怪物たち』が牙を剥くステージとなりますからね!!」

熱気冷めやらぬ中、観客たちは次々とスタジアムを後にし、それぞれの宿舎や街へと戻っていった。

夜――温泉郷。

もうもうと立ち昇る湯気が、冷たい夜気に溶けていく。

心地よい静寂の中、露天風呂の湯船に浸かるレオンの隣で、ラーラがじっと彼を見つめていた。

「ねぇ……さっきから何を考えてるの?」

レオンは遠くの星空を見上げたまま、静かに口を開く。

「実は……一つ、分かったことがあるんだ」

ラーラは真剣な表情になる。「何が分かったの?」

レオンはまっすぐに彼女の瞳を見つめた。

「俺は――」

場面が切り替わる。

冷たい夜風が吹き抜ける山岳地帯。

岩場に腰掛けるソルとダリアンの間には、気まずいほどの沈黙が流れていた。

ダリアンはただじっと、ソルの横顔を見つめ続けている。

「……そんなにじっと見つめないでよ」

「いや」ダリアンは平然と言い放つ。「見惚れていただけだ」

「もう……見るならよそを向いてよ」

「嫌だね」

ソルは腕を組み、ふいと顔をそむけた。「本当に調子のいい男……」

ダリアンは少しずつ彼女との距離を詰めていく。

「ダリアン……?」

「ん?」

「変なこと企んでるでしょう」

「まさか。ただ、君の顔が近くで見たいだけだ」

「もう……!」

ソルが言い返すより早く、ダリアンは彼女の顎を優しく引き寄せ、その唇を重ね合わせた。

驚きに目を見開いたソルだったが、やがて抵抗するのをやめ、ゆっくりと目を閉じ、その温もりを受け入れた。

冷たい山の風が二人の髪を揺らすが、その空間だけは不思議なほど穏やかで温かかった。

――だが、その光景を遠く離れた暗がりから見つめる影があった。

三人の人物。ナリス族(ナルス族)の者たち。

偽りのブズ、偽りのヴァルダリアン、偽りの黒き炎。

偽りのブズが冷ややかな視線を向ける。「彼女は分かっていない。あんな真似をして、タダで済むと思っているのか」

偽りのヴァルダリアンは腕を組み、鼻で笑う。「アレスがそれを知ったら、どうなるか……想像に難くないな」

「我が国のプリンセスが、道を踏み外そうとしている」

偽りの黒き炎は遠くの闇を見つめ、低く呟いた。

「……非常に危険だ。排除対象になるのも時間の問題だな」

場所は変わり、レニの部屋。

ケルが荷物を片付けている傍らで、レニは窓の外の夜空をぼんやりと眺めていた。

「ねぇ、本当に体は平気なの?」ケルが心配そうに声をかける。

「ああ、問題ないさ」

「あんなに無茶をして……負けたのに、どうしてそんなに晴れ晴れした顔をしてるの?」

レニは振り返り、妻に優しい笑みを向けた。

「悔しくないと言えば嘘になるさ。でもな……ここで生きている実感が湧くんだ。お前やヴィニーがいて、仲間がいて、強敵と命を削り合う……少し前まで、こんな日常が訪れるなんて想像もしなかったからな」

ケルは微笑み、そっと彼の隣に腰掛けた。「……そうね。私も、今が一番幸せよ」

「あぁ。だからこそ、明日はレオンの戦いを全力で支えてやる。あいつなら、きっとやってくれるさ」

さらに離れた場所。

静まり返った夜の廊下で、キラは眠る赤ん坊を腕に抱きながら、星の輝く夜空を見上げていた。

「リー……」

ポツリと零れた名前は、誰に届くこともなく夜風に消える。

「あなたがいれば……このトーナメントで、どんな景色が見えたんだろうね」

頬を伝う一筋の涙を拭うこともせず、キラは我が子を強く抱きしめた。

廊下の別の場所では、ナンドとジーラが歩きながら熱く議論を交わしていた。

「いや、だからさ! ヴァーロンやあの双子を相手に、レオンが勝てるビジョンがどうしても見えないんだって!」

「あなたって本当に見る目がないわね。レオンの底知れなさ、まだ分かってないでしょ」

「だって相手は化け物だぞ!? さすがに無理だって!」

「いいから見てなさいよ、絶対にあっと言わせるから!」

言い合いながらも笑い合う二人の足音が、静かな廊下に響いていく。

そして――翌日。

満員の観客で埋め尽くされたアリーナ。熱気は前日を遥かに凌駕していた。

司会者が興奮冷めやらぬ様子で絶叫する。

「――皆様、お待たせいたしました!! いよいよ『第三フェーズ』の幕開けです!!」

観客席から割れんばかりの歓声が上がる。

中央の巨大スクリーンが眩い光を放ち、最初の対戦カードを映し出すために文字が激しく回転し始めた。

選手たちも、観客たちも、全員が固唾を飲んでその行方を見つめる。

ピタッ。

文字がピタリと停止した。

『ヴァーロン&時の双子』 vs 『トリオ・ダス・チャマス・ネグラス(黒き炎の三人組)』

スタジアムが瞬間的に静まり返り、次の瞬間に爆発的なざわめきに包まれた。

レニが思わず立ち上がる。「おいおい……初戦からこれかよ……!」

ナンドは頭を抱える。「初戦から飛ばしすぎだろこのトーナメント!!」

だが、ソルの表情は凍りついていた。

彼女は微動だにせず、スクリーンに映し出された名前を見つめている。

――彼女は知っていた。その「三人」が本当は誰であるのかを。

レオンは静かに、しかし鋭い眼差しでその対戦カードを見つめていた。

傍らのラーラが不思議そうに尋ねる。

「レオン? 何か気になるところでもあるの?」

レオンは静かに答える。

「ああ……ようやく、いくつかの『仮面』が剥がれ落ちようとしている」

アリーナの入場ゲートから、ヴァーロンたち、そして対戦相手である三つの影がゆっくりと歩み出し、中央へと進んでいく。

その緊迫した空気を感じ取りながら、ソルは恐怖に似た冷たい震えを覚えていた。

それは、絶対に避けたかった因縁の対決の始まりだった。

(第405話・完)

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

第二フェーズが終わり、いよいよ開幕した第三フェーズ。初戦からまさかのカードが飛び出し、物語は一気に加速します。仮面の裏に隠された真実とは一体何なのか。次回の展開も、どうぞお見逃しなく!

【重要なお知らせ】

読者の皆様により深く世界観を楽しんでいただくため、作者より新しい取り組みを開始しております!

各エピソードの合間に、キャラクターたちの姿や雰囲気がひと目でわかる「挿絵イラスト」を順次追加中です。ぜひ、キャラクターたちのビジュアルをイメージしながら物語をお楽しみください。

また、作者のプロフィールページでは、キャラクター個別のイラストとともに詳細なバイオグラフィも公開しています。

「このキャラクターが気になる!」「もっとこのキャラの活躍が見たい!」というご意見があれば、ぜひコメント欄で教えてください。皆様の声が、今後の物語の展開を決める大きな力になります!

次回もお楽しみに!引き続き応援よろしくお願いします!

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