「友よ… ホイッスルが鳴るまで」
予選を勝ち抜き、いよいよ幕を開けた第二ステージ。
実力伯仲の戦いが続く中、静かな夜に一人の王女は思いを巡らせ、そして誰もが予想だにしない組み合わせが、運命のように決まる――。
今回は、絆が試される瞬間を描いてみました。
夜が明け、穏やかな朝が訪れた。
数日間で初めて――
爆発も、
空を裂くエネルギーも、
絶叫もない。
国際拠点が、ようやく息をついたかのようだった。
だがその平穏の裏には、
張り詰めた空気が流れていた。
第二ステージが始まったのだ。
そしてこれからは、
もはや「弱いチーム」など存在しない。
北の山々は静寂に包まれ、
冷たい風が岩肌を撫でていく。
そこに四つの影が現れた。
それぞれの種族の代表。
ブズ、
ヴァルダリア、
黒き炎、
そして中央にはソル。
変装した三人のンハリスがひざまずく。
「我らが姫よ」偽のヴァルダリア人が告げる。
「派遣した工作員は、
全員排除されました」
ソルは真剣な面持ちで言う。
「ガブリエル……」
ブズの姿をしたンハリスがうつむく。
「その名は、伝説の中でしか知られておりませんでした。
ただの物語だと思っておりました。
だが彼は実在し、
K11を守護しているということです」
風がソルの髪をなびかせる。
彼女は黙り込み、考えを巡らせる。
レオン、
ララ、
ダラム、
ジュン、
ナンドのことを。
笑い声、
ふざけ合い、
言い争い、
音楽、
そこにいた人々のことを。
「危険すぎる……」ソルが囁く。
「もしこの地が、本当に創造主に守られているのなら……
一度でも不手際を犯せば、
全員の正体が暴かれてしまう」
彼女は腕を組む。
「何もするな。
情報を集めるのは私に任せろ。
ダラムから、
ララから、
チーム全体から、
何か手がかりを探す。
わかったか?」
「はい、姫」
三人の影は、たちまちに消え去った。
静寂だけが残る。
ソルは一人、空を見上げる。
雲がゆっくりと流れていく。
「本当に神様が、この場所を守ってくれているの?」
返事はない。
「なら……
お願い。
もう、どうすればいいのか、わからないの……」
彼女はうつむき、
心の中の空白と、
決められない思いに、
涙を浮かべる。
「この一年が、
終わらなければいいのに……」
昼間だというのに、
一筋の星が輝いた。
小さく、
遠く、
だが確かに輝いた。
ソルはその星を見つめ、
しばらく佇んだ。
そしてゆっくりと、
両手を広げて仰向けに倒れ、
空を見上げた。
「もしかしたら……
聞いてくれているのかもしれない。
返事はなくても。
それとも……
それこそが答えなのかも。
わからない。
だけど……
ありがとう。
彼らを、
私には値しないけれど、
出会わせてくれて。
この時間を、
少しの間だけでも、
生きさせてくれて。
ありがとう。
神様。
創造主。
どんな呼び方でも。
ありがとう。
この場所を。
そして彼らを。
何よりも……
彼らを」
「一人で何を言ってるの?」
ソルはびくりと跳ね起きた。
「ひゃっ!」
ダラムが後ろに立って、腕を組み、くすくす笑っている。
「びっくりさせないでよ! 死ぬかと思ったじゃない!」
「ごめんごめん」
「全然ごめんじゃない! 何の用よ?」
「レオンに呼んで来いって頼まれた。今日はみんなでうちに泊まるんだ」
「えっ? 嫌。一人で寝る」
「いつもそう言って、いつも来るくせに」
「寝顔、汚いから」
「嘘つけ」
「うるさい。行く」
「行かない」
「行くってば!」
「ソル」
「ダラム!」
「ララはもう知ってるって」
「……」
「レオンが伝えておいたって」
「……それで?」
「キラも来る」
「……」
「ナンドも」
「……」
「それに、レオンがピザ用意するって言ってたぞ」
ソルがぱっと起き上がる。
「何をぐずぐずしてるの! 早く行きなさいよ!」
ダラムが声を上げて笑う。
「本当、単純だな」
「うるさい!」
――場面転換。ダラムの家。夜。
テーブルは食べ物でいっぱいになっている。
ナンドが夢中で食べ続けている。
「ナンド……もう八枚目だぞ」
「負けたんだ。取り返さないと」
「そういう問題じゃないでしょ!」ララが突っ込む。
レオンは楽しそうに笑い、ジュンは呆れたように首を振り、リュウはコーヒーをすすり、レニはその様子を眺め、ケルは笑い、ヴィニは部屋を走り回っている。
ソルは静かに座り、
ただその輪を見つめ、
その瞬間を心に刻みつけていた。
まるで、
この時間がかけがえのないものだと、
知っているかのように。
レオンが立ち上がる。
「よし、戦術の話だ」
全員が真剣な顔になる。
ホログラムが浮かび上がり、第二ステージの組み合わせと、残ったチーム名が表示される。
「もはや相手になめられる相手はいない。
これからは、ほんのわずかな差が勝負を分ける。
チームワーク、
心の制御、
それが何より大事だ」
キラが腕を組む。
「手短に言って」
「情報によると、
能力を無効化するチームもいるし、
持久戦で追い詰めてくるチームもある。
だから、
どんな相手にも対応できるように備えないといけない」
――場面転換。ララの部屋。
キラ、ズィラ、ララの三人。
地図を広げ、メモを取り、作戦を練っている。
「キラ、もしレオンたちと当たったら……
冷静になること。
特にソルとは、絶対に感情的にならないで」
キラが目を閉じる。
「わかってる。
台無しにしたりしない」
「約束して?」
「約束する」
ズィラが微笑む。
「だってキラが暴走したら、
ララもつられちゃうでしょ。
そうなったら終わりだもん」
「ちょっと!」
三人は声を上げて笑った。
――場面転換。レニの部屋。
カム、カミ老人と共に。
「やっぱりヴァロンが本命だな。
時の双子も強敵だ」
レニが腕を組む。
「関係ない。
誰が相手だろうと、
倒すだけだ」
カムがにっこり笑う。
「自信満々だな」
「そうじゃない。
無駄な時間はもう嫌なだけだ」
――場面転換。翌朝。スタジアム。
満員の観客で埋め尽くされ、
先日よりもさらに熱気が高まり、
張り詰めた空気が会場を包んでいる。
「皆様! こんにちは!
ようこそ、第二ステージ開幕戦へ!」
歓声が轟音となって湧き上がる。
ナンドが興奮して叫ぶ。
「いけー!」
レオンは深呼吸をし、ソルは真剣な面持ちで、ララは腕を組んで見つめる。
巨大スクリーンが輝き、
抽選が始まる。
チーム名がぐるぐると回り続ける。
回る、回る、回る――
そして止まった。
スタジアム全体が、一瞬で静まり返る。
レオンが見つめ、ダラムが見つめ、ソルが見つめ、ララが目を見開き、キラが立ち上がり、ズィラが動きを止める。
スクリーンに表示された文字は――
レオン・ダラム・ソル
VS
ララ・ズィラ・キラ
静けさが会場を支配する。
「嘘だろ……!」ナンドが叫ぶ。
「このタイミングでかよ!」
ジュンも驚きを隠せない。
「これはすごいことになるぞ……」
リュウが真剣な顔で言う。
「胸が痛むな……」
キラがゆっくりと、
まっすぐソルを見つめる。
ソルも見返す。
二人の脳裏に、
共に過ごした訓練、
言い争い、
からかい合い、
競い合った日々がよぎる。
ララが深呼吸をする。
「キラ、
さっき話した通りだからね。
感情的になったら、
チーム全体が危ない」
「わかってる」
「でもソルは私に任せて。
倒すのは、
私だから」
ソルが腕を組み直す。
「やっとだね」
ダラムが唾を飲み込む。
「さあ、行こうか」
レオンが歩き出し、
二つのチームがアリーナ中央に進み、
向かい合う。
ララがレオンを見て、にっこり笑う。
「手加減しないでよ」
レオンも笑い返す。
「いつもしてないだろ」
「嘘つき」
「そうだな。少しだけなら」
「レオン」
「ん?」
「全力でやって。
あなたもね」
ズィラが楽しそうに言う。
「これは面白くなりそうだわ」
キラが拳を握りしめ、ソルも同じように握りしめる。
ダラムがララを見つめる。
「恨みっこなしだぞ」
「もちろん」
「試合が終わったら……
ピザだ」
「ピザね、約束よ」
観客席からナンドが叫ぶ。
「レオーン!
彼女に負けるなよー!」
「うるさい、ナンド!」レオンが返し、
スタジアム中が笑いに包まれる。
ヴァンダーが見つめ、ヴァロンも見つめる。
「いい試合になるな……」
ヴァロンが腕を組む。
「いや、
歴史的な試合になる」
実況者が腕を高く掲げる。
「さあ、選手の皆さん、準備はよろしいですか!
第二ステージ、
いよいよ――
開始!!」
六つのオーラが一斉に噴き上がる。
青、
黄、
紅、
緑、
影、
炎。
スタジアムの観客全員が立ち上がり、
そして初めて、
友が、
仲間が、
敵として向かい合う時が来た。
(第396話・完)
次回予告:「友よ… 最初の一撃が鳴る時」
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
いよいよ始まった第二ステージですが、まさかの展開に驚かれた方も多いのではないでしょうか。仲間同士が戦うことになった時、彼らは何を想い、どんな戦いを見せてくれるのか。今後の展開にぜひご期待ください。
もしこの物語を気に入っていただけましたら、ブックマークやお気に入り登録をお願いいたします。また、「最近どのキャラクターが一番気になる?」「これからどんな活躍を見てみたい?」など、どんなことでもコメントで教えていただけますと、作者として大変嬉しく、執筆の励みになります。
次回はいよいよ試合開始です。どんな一撃が飛び出すのか、どうぞお楽しみに!




