第383話:血と希望の対峙
第11シーズン第383話「血と希望の対峙」。
新たな敵「血の軍団」との激突。彼らはソルに対し、忌まわしい過去の記憶を突きつけます。父アレスの影と、自分自身のアイデンティティの間で揺れるソル。レオンとダリアムとの絆が、彼女の闘志に再び火を点けます。
スタジアムは今なお震えていた。
時の双子とヴァーロンが残した衝撃は計り知れなかったが、観客の熱狂は冷めるどころか、次のカードに注がれていた。
巨大スクリーンに表示された名を目にし、会場が爆発する。
『レオン・ダリアム・ソル』 vs 『モドラク・タロス・ヴェクシア』
「いよいよだ!」ナンドが弾ける。
キラが腕を組み、「やっとね」と吐き捨てるが、その目は真剣だ。
ジュンが祈るように見守り、リウは厳粛な面持ちで戦況を見つめていた。ラーラは黙して拳を握りしめている。
ソルはスクリーンを見上げた。「……彼らなのね」
ダリアムが深く息を吸い込む。「『血の軍団』か」
レオンは戦場となるアリーナを見つめ、「行こう」と短く告げた。
「レディース・アンド・ジェントルマン!!」
ナレーターが叫ぶ。「次世代を担う英雄たちの登場だ! レオン! ダリアム! そしてソル!!」
スタジアムが揺れる。レオンは黒のコートを翻し、不動の決意をその目に宿して入場する。ダリアムは緑のエネルギーを纏い、最後に入場したのは、全身に赤い炎を噴き上げるソルだった。
「負けないでよ」キラが野次を飛ばす。
「黙りなさい」ソルが横目で返す。
「負けたら私が殺すから」
「やってみなさいよ、このバカ」
「相変わらずね」ラーラが苦笑した。
対するゲートからは、重苦しい空気が流れ出した。
巨人モドラク。肉の装甲を纏った三メートル近い巨躯。
タロス。痩躯に赤い刻印を纏い、自身の血液を刃に変える男。
そして、冷徹な瞳でソルだけを見つめるヴェクシア。
「……貴女が、彼の娘」ヴェクシアが呟く。
「何の話?」ソルが目を細める。
タロスが笑う。それは幸福とは程遠い、痛みを伴う笑みだった。
「かつてアイリスを知っていた。彼女はクリザードの帝国アリーナで、俺たちの兄弟を、笑いながらゴミのように殺した」
会場が静まり返る。タロスは空を見上げた。
「俺は、ある狂人がそのアリーナを壊してくれたおかげで生き残った。レオン……お前の暴走が、俺の命を救ったんだ」
タロスはソルを指差した。「お前には恨みはない。だが、その血筋は……俺が叩き潰す」
「開始!!」
BOOOOOOM!!
爆音と共にモドラクが地を砕いて突進した。
「速い!」ナンドが叫ぶ。レオンが間一髪でソルを突き飛ばし、攻撃を回避する。アリーナが衝撃でひび割れた。
タロスが自分の手を切り裂く。噴き出した血が空中で無数の槍へと変貌した。
「『狩人の血』!!」
ダリアムが即座に反応する。「ソル!!」
緑の構築物が展開され、防壁が槍を食い止める。しかし、血の槍は爆発しても即座に再生していた。
「再生能力か……厄介だな」ジュンが呟く。
ヴェクシアがソルの前に立ちはだかる。
「貴女が彼と違うと証明してみせろ」
拳と炎が激突し、火花が散る。その間も、レオンは五つの元素を操り、モドラクとの死闘を繰り広げていた。
「Quanto mais ferido… Mais forte fico.(傷つけばつくほど、俺は強くなる)」
モドラクの笑みに、レオンは応える。
「なら、たっぷり殴り合おうか」
ダリアムが次々と巨大なドラゴンや鎖の構築物を生み出し、タロスを圧倒する。
「言葉が多いぞ!」
「……お前が言うか」
ダリアムの放った巨大な槌がタロスを大地に叩きつけた。
戦況は混沌を極めた。
だが、ヴェクシアの言葉がソルの心に突き刺さる。
「なぜ彼は皆を殺したの! お前も同じよ!」
ソルは一瞬、硬直した。その隙を突かれ、ヴェクシアの強打がソルを壁へと叩きつける。
「ソル!!」ラーラが叫ぶ。
「立て……立てよ!」キラが祈るように見守る。
煙が晴れる。ソルは立ち上がっていた。だが、その瞳は震えていた。
レオンが背後で戦いながら叫ぶ。
「ソル! 他人の罪を背負うな! お前はお前だ!」
ダリアムも続く。「俺に誓っただろ! このトーナメントを壊すってな!」
ソルが深呼吸をする。紅蓮の炎が、より制御され、より美しく、そして猛烈な熱を帯びて体中から噴き上がった。
「……そうね」
彼女の瞳が赤く輝き、オーラが爆発した。
BOOOOOOOOOOM!!
ソルが姿を消した。ヴェクシアが驚く間もなく、炎の蹴り、炎の拳が彼女を打ちのめす。
「私は……兄とは違う!!」
クリザードの炎がアリーナを照らし尽くした。
レオンは翼を広げ、五大元素の力を一点に集中させた。
「『五大元素斬り――極』!!」
閃光が走り、モドラクの肉の装甲を切り裂く。
激しい爆発の末、煙の中に立っていたのは、勝ち誇った英雄たちだった。
「勝者、レオン、ダリアム、ソル!!」
スタジアムが崩れるほどの歓声に包まれる。
タロスがふらつきながら立ち上がり、ソルを見つめた。
「……貴女は、彼ではない」
彼はそのまま倒れ伏した。ソルは静かにその光景を見つめる。
初めて、彼女は涙を隠そうとはしなかった。
ヴァーロンは高見から冷徹にそれを見ていた。
「面白い。だが、真の恐怖はまだこれからだ」
次なる戦いの予兆。スクリーンが再び回転を始める。
レオンは拳を握りしめた。これが始まりに過ぎないことを、彼は誰よりも深く理解していた。
(第383話・完)
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
仲間との絆で過去の呪縛を断ち切ったソル。トーナメントはさらに過熱し、物語の核心へと近づいていきます。
次話以降も、キャラクターたちの熱い戦いを描いていきます。挿絵で彼らの勇姿を皆さんの心に深く刻んでいただけるよう準備中です。いつの日かこの『アンジョ・ネグロ』がアニメとして画面の中を動き回る日が来ることを信じて、これからも全力で執筆していきます!
次回もぜひお楽しみに!




