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ブラック・エンジェル・ユニバース  作者: Leon Black Angel


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第373話:王国を分かつ女王

第373話「王国を分かつ女王」を執筆しました。

ラウラの存在がクリザードの伝統を揺るがし、宮廷内に不穏な影が忍び寄ります。アレスの威光と、地下深くに眠るかつての女王の再臨……激動の展開をお楽しみください!

クリザードの朝は黄金色に染まっていた。

土の国の空はオレンジ色に輝き、元素鉱石で造られた巨大な山々に反射している。長年、この地では見られなかった光景が広がっていた。城の召使いたちが、笑みを浮かべていたのだ。

その理由は、一人の女性の名にあった。

ラウラ。

彼女が宮廷の廊下を歩けば、さまざまな種族の召使いたちがその周囲を囲む。中には、身分が低いクリザード人の姿もあった。誰もが、彼女に憧憬の眼差しを向けている。

小さな子供が、彼女のドレスの裾を掴んだ。

「ラウラ様……本当に皇帝と戦ったことがあるんですか?」

ラウラは屈み込み、微笑んだ。

「皇帝よりも恐ろしいものと戦ったことがあるわ」

子供が目を丸くする。

「本当?」

「ええ。人々の『傲慢さ』よ」

召使いたちが小さく笑った。廊下の反対側では、二人のクリザード人の女性がその様子を静かに見守っている。

「見てよ……」一人が腕を組んだ。「みんな、彼女に魅了されてる」

「まるで魔女ね」

ラウラは歩みを止めない。城の厨房を通りかかったとき、二人の衛兵がニャ族の召使いを壁に押し付けているのが目に入った。少女は震えている。

「お願い……」

一人の衛兵が、彼女の顔を無理やり掴み上げる。

「貴様は王国に仕える身だ。なら、ちゃんと仕えろ」

ラウラは即座に立ち止まった。その眼光が一変する。

「彼女を離しなさい」

衛兵たちが振り返る。一人が嘲笑った。

「今さら誰に命令された? XP人(エクスピア人)風情が」

ラウラは冷静に近づいた。恐怖など微塵もない。声を荒らげることもない。

「あなたたちに命令しているわけじゃない」

彼女は兵士の瞳を直視した。

「あなたたちが『怪物』になるのを止めているだけよ」

廊下全体が静まり返る。もう一人の衛兵が歯を食いしばった。

「クリザードの慣習は、貴様の知ったことではない」

ラウラは召使いの手を優しく引き、自分の背中へと隠した。

「なら、今ここで私を殺しなさい」

二人はたじろいだ。彼女の放つ霊圧スピリチュアル・プレッシャーが凄まじい。力ではなく、その『存在感』だけで圧倒しているのだ。

ラウラは続けた。

「アレス様ご自身が守護されている相手に、歯向かう覚悟はあるの?」

衛兵たちは互いに顔を見合わせ、後退した。

「……後で問題になるぞ」

彼らは苛立ちながらその場を去った。ニャ族の召使いが涙を流す。

「ありがとうございます……」

ラウラは彼女の手を握った。

「誰も、恐怖の中で生きる必要なんてないのよ」

そのニュースは瞬く間に城中に駆け巡った。その日の残りの時間、召使いたちは廊下ですれ違うたびに彼女に挨拶をした。ある者は敬意を表して頭を下げ、ある者は隠れて笑みを浮かべた。兵士たちまでが噂をする。

「彼女は召使いを『人』として扱っている」

「こんなの、ここでは見たことがない」

「昔の女王たちでさえ、そんなことはしなかった」

しかし、誰もが喜んでいるわけではなかった。高い塔の上から、何人ものクリザード人の女性が窓の外のラウラを見つめている。一人がグラスを机に叩きつけた。

「あの女、王国の慣習を破壊しているわ!」

別の女性が応じる。

「召使いたちが彼女を崇拝し始めてる!」

「アレスが弱くなっているのよ」

「最初は娘がXP人と交わり……」

「今度はこれよ」

黒い鎧に身を包んだクリザード人の将軍が、冷酷に告げた。

「あの女がこのまま居座れば……クリザードは変わってしまう」

静寂が訪れた。それは、彼らが心の中で『真実だ』と理解しているからこそ、恐ろしい沈黙だった。

その頃、土の国の玉座の間では。

アレスが静かに座し、数十人の高官たちが膝をついていた。全員が五十代を超えた将軍、政治家、指揮官たち。五つの元素国家における有力者たちだ。

アレスが手で頬を支える。

「一度しか言わぬ」

広間が静まり返る。

「クリザードには安定が必要だ。新たな助言者が必要である」

男たちが即座に顔を上げる。アレスは続けた。

「私の側仕えとなる者は、名声と影響力を持ち、そして『強い血筋を残せる娘を持つ者』でなければならぬ」

空気が一変した。高官たちが互いに緊張した眼差しを交わす。

アレスはゆっくりと玉座の階段を降りた。

「我が未来の妻たちは、五大国の大貴族から選ぶ」

広間が衝撃に包まれた。ある将軍が口を開く。

「陛下……では、噂は真実なのですか?」

アレスは立ち止まり、その瞳は冷たく凍りついていた。

「そうだ。王国には後継者が必要だ」

別の男が問いかける。

「では、あのXP人は……?」

広間が凍りついた。アレスがゆっくりと振り返る。

場を圧する霊圧が爆発した。

「ラウラは……王国の私事に干渉せぬ」

誰も答える勇気を持てなかった。だが、胸中の不快感は消えていない。

その夜のこと。

地下の隠し部屋で極秘の会合が開かれていた。数人のクリザード人貴族と将軍たちが集まっている。

一人が机を叩いた。

「アレスは盲目だ!」

「あの女は召使いたちを洗脳している!」

「兵士たちでさえ慣習を疑問視し始めているんだ!」

将軍が吐き捨てる。

「彼女は暴力を使わずに衛兵を退かせた。あれは力よりも恐ろしい」

一人の女性が憎悪を込めて言った。

「彼女はクリザードを毒しているわ」

別の男がテーブルに歩み寄る。

「解決策は一つしかない」

全員が彼を見る。男は低い声で言った。

「『火の女王』を解放するのだ」

その瞬間、部屋に重苦しい沈黙が落ちた。最も過激な者たちでさえ、その言葉に躊躇した。女性の一人が息を呑む。

「もし彼女が戻れば……」

「ラウラは死ぬ」

「そして、アレスが再び『覚醒』するわ」

将軍が続けた。

「火の女王は、XP人が玉座に座るなど決して許さないだろう」

賛同する声と、恐怖に震える声。だが、共通していたのは『憎悪』が膨れ上がっているという事実だった。

……その後、アレスはエリート将軍たちと私室で会合していた。

一人が切り出す。

「陛下……ラウラが本心を隠している保証はありません」

「スパイの可能性も」

アレスは静かに座ったまま、こう返した。

「ニャ族の感知能力者が彼女を鑑定した」

広間が静まる。

「彼女の感情は、真実だった」

将軍が反論する。

「それでも、彼女は慣習を変えている!」

アレスはゆっくりと視線を上げた。

「誰が貴様らに、私の決定を疑問視する権限を与えた?」

圧倒的な霊圧が環境を押し潰す。将軍たちは即座に頭を下げた。アレスは立ち上がった。

「ラウラは私の保護下にある」

その声は冷たく響き渡った。

「彼女に触れる者は……死ぬ」

絶対的な沈黙。しかし、アレスが部屋を去るのを見送る将軍たちの視線には、別のものが宿っていた。

恐怖。怒り。そして——反逆の火種。

クリザードの深淵。

王国の監獄よりも遥か下層。

巨大な鎖が闇の中で揺れている。黒い炎に包まれた祭壇の中心に、一人の女が縛り付けられていた。

閉ざされていた瞳が、赤く輝く。

『火の女王』。クリザードのかつての統治者。

足音が響く。何人もの将軍の妻たちが近づいてきた。

「彼女が来ました」

女の瞳がゆっくりと開かれる。熱気が一気に増した。

「……なるほど。本当のようね」

別の妻が応じる。「XP人が王の隣にいるのです」

火の女王は沈黙した。女たちは全てを語った。ラウラが召使いを庇うこと、兵士たちが彼女に従うこと、そしてアレスが伝統を無視していること。

話せば話すほど、監獄の鎖は激しく震え、炎は巨大化していった。

やがて、火の女王は微笑んだ。恐ろしいまでの微笑を。

「なるほど……」

彼女はゆっくりと顔を上げた。

「クリザードはついに、私が誰であるかを忘れたようね」

炎が監獄を爆発的に飲み込む。

「将軍たちに伝えなさい」

その声が監獄中に響き渡る。

「そのまま続けろと」

鎖が引きちぎれる音を轟かせながら、彼女は言った。

「私が戻り、玉座を奪い返すまでな」

第373話、いかがでしたでしょうか?

ラウラの優しさが、かえってクリザードの保守的な者たちの怒りを買い、地下に眠る強大な力「火の女王」を目覚めさせる引き金となってしまいました。アレスの保護と、迫りくるクーデターの影。物語はさらに大きく動き出します!

続きが気になる方は、ぜひブックマークと感想をお願いします!次回の展開もご期待ください!

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