第371話:「戦争の渦中の心臓」
皆さん、こんにちは!第371話をお届けします。今回は戦いの裏側で揺れ動く、ソルとダリアムの恋模様が急展開を迎えます。迫り来るトーナメント、そして禁断の愛の行方は……?彼らの心が決断するその瞬間を、ぜひ見届けてください!
K11に夜が訪れていた。
新しく建設された巨大なアリーナの明かりが、宇宙から隠されたその惑星の新たな象徴として輝いている。
中央の巨大スクリーンにはトーナメントの対戦カードが表示されていた。
誰もがその話題で持ちきりだった。
しかし、その時……
ソルは山頂で一人、座り込んでいた。
風に赤髪をなびかせ、眼下に広がるK11を見下ろしている。
静寂の中、三つの人影が彼女の後ろに現れた。
潜入していた「ブズ(Buz)」たち。
いや、実際は……変装した「ナリス(Nharith)」だ。
その一人が膝をつく。
「王女……さらなる情報をもたらしました」
ソルは水平線から目を逸らさない。
「言え」
「この惑星にはまだ未開拓のエリアが多く存在します……ですが、すべてに境界線が引かれています。まるで将来、巨大な都市が建設されるかのように」
もう一人が続ける。
「最も高い山々でさえ、戦略的なマーキングがなされている。そして、さらに奇妙なことが……」
彼は躊躇った。
「惑星全体が宇宙的な障壁で覆われている。これほど強力なものは見たことがない」
ソルはついに彼らを見た。
「正体はわかったのか?」
「ここの住人は……『創造主の神の力がこの場所を守っている』と言っています」
彼女の眼差しが一瞬、揺れた。
その言葉は、彼女が認めたくないほど心に深く突き刺さった。しかし、すぐにいつもの冷徹な表情に戻る。
「よくやった」
彼女は腕を組んだ。
「K11が成長を続けていることはわかった……だが、ヴァロンの研究所から持ち出した情報を送信しなければならない」
三番目の潜入者が尋ねる。
「では、誰にも気づかれずにここを出る方法を探す必要がありますか?」
ソルは沈黙した。
そして、真剣な面持ちで答えた。
「ああ。父上にすべてを知らせなければならない」
彼女は拳を握りしめる。
「そして、父上はあの『エクスプリア人(XPriana)』から遠ざかっておかなければならない」
最初の潜入者が首を傾げる。
「王女なら、ただ許可を求めればいいだけでは? あなたの帰還を拒む者などいません」
ソルは視線を外した。
「かもしれないな……」
だが、その声は必要以上に低かった。彼女は深呼吸をする。
「調査を続けろ。さらなる情報が必要だ」
「御意、王女」
三人は速度を上げて姿を消した。
ソルは再び一人残された。
しかし、今……
彼女の心にはダリアムの顔が浮かび上がり、消えなかった。
恥ずかしそうな笑顔。礼儀正しい振る舞い。そして、あの口づけ。
彼女は苛立ちとともに目を閉じた。
「くそっ……」
場面転換。
レオンはアリーナの近くで一人、訓練に励んでいた。
彼が金属の柱を打ち据えるたび、風と雷鳴が轟く。
背後にソルが現れた。
「訓練するわよ」
レオンは横目で見た。
「お前もな」
「トーナメントで負けるわけにはいかないから」
彼女は腕を組む。
「あんたの友達を呼びなさいよ」
レオンが眉をひそめる。
「『あんたの友達』、ねえ?」
「黙りなさい」
レオンは笑った。
「へいへい、不機嫌な王女様」
数分後。
ダリアムがやってきた。
「遅れてごめん」
ソルは即座に顔を背ける。ダリアムも居心地が悪そうだ。
レオンは二人を見比べた。
「なんてこった……何か悪いことでもした後のティーンエイジャーみたいだな」
「レオン!」二人が声を揃えた。
レオンは笑い出した。
「わかったよ!訓練開始だ!」
訓練は苛烈を極めた。
レオンは雷を纏って突き進み、ダリアムは巨大な緑の構築物を作り上げる。
そしてソルは……
いつもと違った。
はるかに攻撃的だ。彼女の炎は制御を失ったかのように爆発し、自分の中にある何かを破壊しようとするかのように暴れ回る。
ドォォォォォン!!
炎の爆発がフィールドを突き抜ける。
レオンは回避し、ダリアムは緑の壁で防いだ。
だが、ソルは瞬きの間にダリアムの目の前に現れた。
彼女の拳が狂気じみた力で構築物を打ち抜く。
バキィィィィィン!!
ダリアムは数メートル吹き飛ばされた。
レオンは目を見開いた。
「ソル!」
彼女は答えない。身体を囲む炎が肥大化し、赤い瞳が震えている。再びダリアムへ突進する彼女を、レオンは目の前に現れてその拳を掴み、光とともに二人で姿を消した。
ダリアムはその場に一人、立ち尽くした。
「……何が起きたんだ?」
場面転換。
レオンとソルは湖の近くに現れた。
沈黙が流れる。ソルは怒りに任せて腕を振り払った。
「何するのよ!」
「俺を見ろ」
「見たくない」
「ソル」
彼女は躊躇った。そして視線を向ける。
レオンは静かに彼女の顔を両手で包んだ。
「お前が何を感じているか、俺にはわかる」
彼女は即座に背を向けた。
「何もわかってないくせに」
レオンは溜息をつく。
「お前はクリザードの王女だ。宇宙の皇帝の娘だ」
彼女は拳を握りしめた。
「……なのにここにいる。はみ出し者の連中と一緒に」
彼女の瞳が見開かれる。
レオンは少し微笑んだ。
「それに、おそらく人生で初めてのキスをしたんだろ」
「黙りなさい!」
顔が真っ赤に染まる。
「ララってば、口が軽すぎる!」
レオンが笑い出す。
「いや、ララは俺のパートナーだ」
その言葉に、ソルは大人しくなった。レオンは彼女の手を握る。
「父親の王国のことなんて、一瞬忘れてろ」
彼女はうなだれた。
「あんたにはわからない……」
「わかるよ」
彼は近づいた。
「父親は愛する人と生きている。それなのに、お前は……ルールに従って、生きることを忘れているだけだ」
彼女が気づく前に涙が溢れ出した。隠そうとしたが、できなかった。
レオンは彼女を抱き寄せた。
「あんたたちといると、自分が脆弱になる……」
彼女の声が震える。
レオンは強く抱きしめた。
「それこそが、俺たちを人間らしくするんだ」
彼女は目を閉じた。
そして思い出す。アレスが炎の貴婦人に言った言葉を。
『私は強力な女性など求めていない……自分が人間であることを思い出させてくれる相手が必要なのだ』
次に、出かける支度をしながら笑うララの姿。二人で言い争ったこと。夕食。ダリアムとのキス。
すべてが一度に押し寄せてくる。
レオンが微笑んだ。
「宇宙の皇帝が幸せになれるなら、お前だってなれるさ」
ソルは涙を浮かべながら、ついに笑った。
「まったく……なんでこんな場所に来ちゃったのかしら」
彼女はレオンを強く抱きしめた。
場面転換。
その日の遅く、レオンが部屋にいるとノックの音がした。
「入れ」
ダリアムがゆっくりと入ってきた。緊張しているようだ。レオンはすぐに見抜いた。
「どうした?」
ダリアムは息を深く吸い込む。
「……トーナメントを辞退することにした」
レオンは目を見開いた。
「なんだって?!」
ダリアムは視線を逸らす。
「ソルとの間に起きたことについて、深く考えたんだ」
彼は拳を握った。
「彼女のことが好きなんだ」
レオンは沈黙を守る。
「頭から離れないんだ」
声がわずかに震えていた。
「これじゃチームの足手まといになる」
彼は深呼吸をした。
「ララの時も同じだった。二度と同じことは繰り返したくない」
レオンは真剣に聞き入る。
「それに……一年後、アレスが再び攻撃してくる。父の会社をK11に移譲しなきゃならない。それには時間がかかるんだ」
ダリアムは俯いた。
「アレスの娘との関わりがバレたら、俺はすべてを失う。エクスプリア人は決してそれを受け入れないだろうから」
彼は悲しげに微笑んだ。
レオンは立ち上がった。
「昔の俺と同じことを言ってるな」
ダリアムが彼を見る。レオンは続けた。
「俺とララの関係も、戦争を引き起こしかけた。それでも……俺たちは一緒にいる」
ダリアムは考え込んだ。そしてレオンを抱きしめた。
「すべてに感謝するよ」
彼は部屋を出ていった。
場面転換。
巨大な宇宙船の外で、ダリアムがXPへのポータルを開こうとした。
深呼吸をして――その時だ。
フゥゥゥゥォォッ!!
炎の壁が彼を囲んだ。
ダリアムは目を見開く。
「何だ?!」
振り返ると、ソルが立っていた。赤い瞳が輝いている。
「レオンから聞いたわ。あんた、チームを抜けるつもりなんですって?」
ダリアムは俯いた。
「ソル……あの時のことは謝る。私たちは住む世界が違うんだ。傷つけ合いたくない」
沈黙。
ソルが凄まじい速度で彼の目の前に現れた。
ドォォォォォン!!
彼女はダリアムを地面に組み伏せた。
「臆病者」
彼は目を見開く。
「何だって?!」
彼女は人差し指を突きつけた。
「あんたの父親は私の父親の愛する人と結婚しようとしたのよ。それなのに、たった一度のキスで逃げるの!?」
ダリアムは言葉を失う。
ソルは彼の服を掴み、再び強く唇を重ねた。
彼が驚愕に目を見開く。
彼女は唇を離すと、彼の頭の横の地面を拳で殴りつけた。
バキィィィィィン!!
「どこにも行かせないわよ!」
ダリアムは震えていた。
「か、神様……」
ソルは怒りで顔を真っ赤にしている。
「あんたは、私にキスをする栄誉を受けた初めての男なんだから!」
彼女は襟首を掴んだ。
「私がこんなに怒っているのに、コッソリ逃げ出せると思ってるの!?」
ダリアムは何も答えられない。
ソルは彼を放した。
背を向ける。
「部屋に戻りなさい」
歩き出しながら言う。
「……後悔させないでよね」
ダリアムは地面に横たわったまま、信じられない思いでいた。
「……一体、何に巻き込まれたんだ?」
ソルは一瞬だけ立ち止まった。振り返らずに言う。
「あんたの人生で、最悪の決断よ」
彼女はそのまま足早に去っていった。
ダリアムは自分の唇に手を当てる。
そして、一人で笑い出した。
「……とんでもない女だ」
だが、その表情には……久しぶりに、心からの笑みが浮かんでいた。
第371話 終わり。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ダリアムとソル、二人の関係がついに大きな転換点を迎えました。トーナメントを前に、彼らの想いはどこへ向かうのでしょうか?
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それでは、次回の第372話でお会いしましょう!




