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ブラック・エンジェル・ユニバース  作者: Leon


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第365話「最後の守護者」

戦いとは、誰かを倒すためだけにあるのだろうか。

今回の物語では、レオンたちが一体の老いた守護竜を救うために旅立つ。

力とは何のために存在するのか。 守ることに価値はあるのか。

そんな問いが、ある少女の心を少しずつ変えていく。

それでは――

『黒き天使(Anjo Negro)』 第365話「最後の守護者」

お楽しみください。

惑星ニドールの空は黄金色に染まっていた。

巨大な山脈に囲まれた白い石造りの都市。

山々を流れる透き通った河川は、まるで惑星そのものを巡る生命の血流のようだった。

しかし、その日だけは違った。

平和な風景は恐怖に包まれていた。

警報が鳴り響く。

住民たちは子供を抱え、必死に避難している。

そして――

雲の上から、巨大な咆哮が世界を揺らした。

「ROOOOOOOOOOOOAAAAARRRRRRR!!」

空を覆うほどの巨大な影。

組織の宇宙船の中で、その光景を見つめていたソルは腕を組んだ。

「本気なの?」

呆れたように言う。

「私たち、老いたトカゲを助けるために来たの?」

隣に座るダリアムが苦笑した。

「訓練の一環だと思えばいいさ。」

ソルは大きくため息を吐く。

「レオンって、本当に何でもヒーローごっこにするのね。」

その時、船内の入口からレオンが現れた。

「大事なものには理由がある。」

その後ろからララも続く。

「そのドラゴンは、この星を何百年も守り続けてきた最後の守護者なの。」

ダリアムが補足する。

「今は老いてしまった。

だから密猟者たちが骨や血、鱗を売ろうとしている。」

ソルは顔をしかめた。

「この星の人たちは自分で戦えないの?」

レオンは窓の外を見ながら答えた。

「戦えるさ。

でも彼らは敵みたいな怪物になる道を選ばなかった。」

その言葉に、ソルは何も返さなかった。

やがて船は着陸する。

外へ出ると、多くの住民たちが駆け寄ってきた。

傷ついた者。

怯えた者。

そして――

一人の小さな少女がレオンの服を掴む。

「守護竜を助けてくれるの……?」

レオンは優しく微笑んだ。

「ああ。必ず。」

少女の瞳が輝く。

ソルはその様子を静かに見ていた。

やがて長い白髭を蓄えた老人が近づく。

「私はテロン。この星の長老だ。」

彼は空を見上げた。

「狩りはもう始まっている。」

ララが尋ねる。

「ドラゴンはどこに?」

「アウリオン洞窟だ。」

テロンは遠くの山脈を指差した。

「死期を悟り、最後の住処へ戻った。」

ダリアムが腕を組む。

「敵の数は?」

老人は重々しく答えた。

「数百。」

ソルが思わず叫んだ。

「数百!?」

「密猟者、傭兵、賞金稼ぎ……。

禁忌兵器を持つ者もいる。」

レオンは小さく笑った。

「面白くなってきた。」

「本当に頭おかしいわね。」

ソルの呟きを背に、レオンは歩き出した。

「急ぐぞ。」

山道を進んだ先で、巨大な爆発が空を染めた。

嫌な予感が全員を襲う。

「遅かったか――」

レオンが駆け出す。

最後の崖を越えた瞬間。

そこには地獄が広がっていた。

黄金の巨竜。

巨大な身体。

古代の王のような威厳。

しかし今は傷だらけだった。

無数のエネルギー鎖が首に絡みつき、その自由を奪っている。

周囲では百人以上の傭兵たちが攻撃を続けていた。

黒い装甲を纏った男が笑う。

「ようやくだ!

こいつの心臓は大金になるぞ!」

その瞬間。

レオンの瞳が黄金色に変わった。

「その手を離せ。」

男が鼻で笑う。

「お前は誰だ?」

ソルが不敵に笑った。

「今、一番聞いちゃいけないことを聞いたわね。」

次の瞬間。

レオンの姿が消える。

轟音。

最初の傭兵が吹き飛んだ。

戦闘が始まる。

ダリアムは青い光を纏い敵陣へ突撃。

ララは巨大な結晶を召喚し飛行兵器を撃墜する。

そしてソルは――

初めて違和感を覚えていた。

皆が戦う理由。

それは支配でも征服でもない。

誰かを守るためだった。

そんな時。

一人の傭兵が岩陰の子供へ銃口を向ける。

ソルの視線が鋭くなる。

赤い閃光。

次の瞬間には子供の前に立っていた。

武器を握り潰す。

「子供を撃つつもりだったの?」

傭兵は恐怖で震えた。

ソルは無言で男を投げ飛ばす。

山肌が砕け散った。

少女が震えながら言う。

「ありがとう……。」

ソルは固まった。

感謝された。

恐れられるのではなく。

感謝されたのだ。

レオンが横で笑う。

「わかったか?」

「何が?」

「守る方が気持ちいいってこと。」

ソルは何も言わなかった。

しかし心は確かに揺れていた。

戦いは続く。

雷。

炎。

風。

大地。

五つの元素が戦場を駆け巡る。

レオンの力が敵を圧倒する。

ソルもまた怪物たちを次々と撃破していった。

だが彼女の目は、以前とは違っていた。

救われて喜ぶ人々。

安堵する表情。

涙を流して感謝する住民たち。

それらが胸に刺さる。

やがて最後の強敵が現れる。

巨大な重装甲傭兵。

彼の放った砲撃が守護竜へ向かう。

レオンでも間に合わない。

その時。

ソルが飛び出した。

大爆発。

煙が晴れる。

そこには――

両手で砲撃を受け止めるソルの姿があった。

赤く燃える瞳。

「ありえない……」

傭兵が震える。

次の瞬間。

彼の装甲は粉々に砕け散った。

戦いが終わった。

傭兵たちは逃走。

怪物たちも洞窟へ引き返す。

静寂が戻る。

住民たちは歓声を上げた。

その中で、一人の少女がソルへ近づく。

小さな黄金の花を差し出す。

「これ、あなたに。」

ソルは目を見開いた。

「私に……?」

少女は笑顔で頷く。

「守護竜を助けてくれたから。」

ソルは花を受け取った。

何も言えなかった。

夕陽が空を染める。

老いた守護竜がゆっくりと立ち上がった。

黄金の鱗が光を反射する。

そして最後に天を見上げる。

「ROOOOOOOOOOOAAAAARRRRRR!!」

魂の咆哮。

身体は黄金の粒子となって空へ溶けていく。

住民たちは膝をついた。

涙を流しながら。

恐怖ではない。

義務でもない。

純粋な愛と感謝だった。

ソルは静かに見つめていた。

胸の奥が痛む。

だが嫌な痛みではない。

レオンが隣に立つ。

「大丈夫か?」

ソルはしばらく黙っていた。

そして小さく呟く。

「……変な気分。」

レオンは微笑む。

「それが、俺が守りたいものだ。」

ソルは黄金の花を見る。

人々を見る。

空を見る。

そして初めて――

それを馬鹿げているとは思えなかった。

夕陽の中。

四人は山道を歩いて帰っていく。

ソルは誰にも見られないように、そっと黄金の花をジャケットのポケットへしまった。

第365話を読んでいただきありがとうございました。

今回はソルにとって大きな転機となる物語でした。

これまで彼女は「力」と「支配」の世界で生きてきました。 しかし今回、誰かを守ることで生まれる感謝や絆に触れることになります。

小さな一輪の花。

それは戦いの報酬ではなく、 誰かの心から贈られた感謝の証でした。

果たしてソルはこれからどのように変わっていくのか。

そして迫り来るトーナメントと戦争の行方は――。

次回もよろしくお願いします!

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