第356話「祭りの中の影」
を読んでいただきありがとうございます。
長い戦争と数々の犠牲を乗り越え、ついに失われた民との再会の時が訪れます。
しかし希望の裏には、新たな陰謀も動き始めています。
それでは第356話をお楽しみください。
クリザードの空は青白く輝いていた。
王城の前には無数の転移門が開かれ、解放された者たちが次々と姿を現していく。
片側にはアレスとクリザードの将軍たち。
そして反対側には組織のメンバーたちが並んでいた。
ナンドとリウは肩を並べて立っていた。
二人とも落ち着かない。
胸の鼓動が止まらない。
そんな時だった。
ソルが二人の前へ歩いてくる。
腕を組み、いつものように無表情を装っていた。
「あなたたちの種族をリストに入れておいたわ」
ナンドは目を見開いた。
「マジか!?」
ソルは視線を逸らした。
「父は解放したがらなかった」
リウも驚く。
「なぜだ?」
「能力が厄介だから」
短く答える。
そして彼女は解放された集団の方を指差した。
「ほら、行ってきなさい」
ナンドは一瞬で飛び出した。
「俺たちの仲間だああああ!!」
その姿を見て、リウは久しぶりに笑った。
しかし彼らは知らない。
解放された者たちの中には、すでにナーリス族が潜入していたことを。
彼らは接触の瞬間を待っていた。
ナンドは最初の男の手を握る。
その瞬間――
能力の複製が始まった。
だがナンドは気付かない。
仲間たちに囲まれ、涙を流しながら笑っていた。
「生きていたんだな!」
「俺たちもだ!」
一方、リウもヴァルダリアンたちの元へ向かう。
彼もまた歓迎を受けた。
抱擁。
涙。
再会。
失われたと思っていた故郷の欠片。
その光景をジュンは嬉しそうに見守っていた。
すると背後からジーラが現れる。
「気を付けなさいよ〜」
「何が?」
「ヴァルダリアンの女の子にリウを取られないようにね」
ジュンは真っ赤になった。
「ジーラ!!」
その場は笑いに包まれた。
少し離れた場所。
レオンはレンと共にアレスへ近付いていく。
「黒炎族はどこだ?」
レオンが尋ねる。
アレスは平然と答えた。
「ここにはいない」
レンの拳が震えた。
「どこにいる」
「牢獄だ」
黒い炎がレンの身体から噴き出す。
周囲の兵士たちが警戒態勢に入る。
しかしアレスは気にしない。
「欲しいなら連れて行け」
レオンの目が輝く。
「本当か!?」
だがアレスは続けた。
「ただし三百人は残せ」
沈黙。
重い条件だった。
その時――
ララが近付いてくる。
アレスは彼女を見る。
その目が少しだけ優しくなった。
「君は母親によく似ている」
空気が変わりかけた瞬間。
ソルが割って入った。
「調子に乗らないで、お父さん」
アレスは思わず笑った。
珍しい、本当に珍しい笑顔だった。
やがてソルはため息を吐く。
「黒炎族を解放してあげなさい」
アレスは数秒考えた。
そして頷く。
「好きにしろ」
レンの顔に希望が戻った。
ソルは彼の腕を掴む。
「行くわよ」
二人は牢獄へ向かった。
地下牢。
鎖に繋がれた黒炎族たち。
傷だらけの身体。
憎しみに満ちた瞳。
その中へレンが歩いていく。
同胞たちは彼を見る。
そして気付く。
自分たちと同じ炎を持つ者だと。
希望の光が宿る。
長い絶望の中で。
初めて。
その頃――
K11では盛大な宴が開かれていた。
解放された人々。
再会した家族。
笑い声。
音楽。
子供たちの笑顔。
長い戦争の果てに訪れた、束の間の平和。
その夜だけは――
誰もが「家族」だった。
第356話を読んでいただきありがとうございました。
今回は戦いではなく、戦後の平和と再建、そしてその裏で進む陰謀が描かれました。
ソルの葛藤、レンの決意、そしてナーリス族の潜入。
平和な祭りの裏側で、新たな嵐の種が少しずつ芽吹いています。
次回もよろしくお願いいたします。




