第355話 「失われた民」
皆様、いつも『黒き天使(Anjo Negro)』を読んでいただきありがとうございます。
長い戦争と数々の犠牲を乗り越え、ついに失われた民との再会の時が訪れます。
しかし希望の裏には、新たな陰謀も動き始めています。
それでは第355話をお楽しみください。
クリザードの空は青白く輝いていた。
王城の前には無数の転移門が開かれ、解放された者たちが次々と姿を現していく。
片側にはアレスとクリザードの将軍たち。
そして反対側には組織のメンバーたちが並んでいた。
ナンドとリウは肩を並べて立っていた。
二人とも落ち着かない。
胸の鼓動が止まらない。
そんな時だった。
ソルが二人の前へ歩いてくる。
腕を組み、いつものように無表情を装っていた。
「あなたたちの種族をリストに入れておいたわ」
ナンドは目を見開いた。
「マジか!?」
ソルは視線を逸らした。
「父は解放したがらなかった」
リウも驚く。
「なぜだ?」
「能力が厄介だから」
短く答える。
そして彼女は解放された集団の方を指差した。
「ほら、行ってきなさい」
ナンドは一瞬で飛び出した。
「俺たちの仲間だああああ!!」
その姿を見て、リウは久しぶりに笑った。
しかし彼らは知らない。
解放された者たちの中には、すでにナーリス族が潜入していたことを。
彼らは接触の瞬間を待っていた。
ナンドは最初の男の手を握る。
その瞬間――
能力の複製が始まった。
だがナンドは気付かない。
仲間たちに囲まれ、涙を流しながら笑っていた。
「生きていたんだな!」
「俺たちもだ!」
一方、リウもヴァルダリアンたちの元へ向かう。
彼もまた歓迎を受けた。
抱擁。
涙。
再会。
失われたと思っていた故郷の欠片。
その光景をジュンは嬉しそうに見守っていた。
すると背後からジーラが現れる。
「気を付けなさいよ〜」
「何が?」
「ヴァルダリアンの女の子にリウを取られないようにね」
ジュンは真っ赤になった。
「ジーラ!!」
その場は笑いに包まれた。
少し離れた場所。
レオンはレンと共にアレスへ近付いていく。
「黒炎族はどこだ?」
レオンが尋ねる。
アレスは平然と答えた。
「ここにはいない」
レンの拳が震えた。
「どこにいる」
「牢獄だ」
黒い炎がレンの身体から噴き出す。
周囲の兵士たちが警戒態勢に入る。
しかしアレスは気にしない。
「欲しいなら連れて行け」
レオンの目が輝く。
「本当か!?」
だがアレスは続けた。
「ただし三百人は残せ」
沈黙。
重い条件だった。
その時――
ララが近付いてくる。
アレスは彼女を見る。
その目が少しだけ優しくなった。
「君は母親によく似ている」
空気が変わりかけた瞬間。
ソルが割って入った。
「調子に乗らないで、お父さん」
アレスは思わず笑った。
珍しい、本当に珍しい笑顔だった。
やがてソルはため息を吐く。
「黒炎族を解放してあげなさい」
アレスは数秒考えた。
そして頷く。
「好きにしろ」
レンの顔に希望が戻った。
ソルは彼の腕を掴む。
「行くわよ」
二人は牢獄へ向かった。
地下牢。
鎖に繋がれた黒炎族たち。
傷だらけの身体。
憎しみに満ちた瞳。
その中へレンが歩いていく。
同胞たちは彼を見る。
そして気付く。
自分たちと同じ炎を持つ者だと。
希望の光が宿る。
長い絶望の中で。
初めて。
その頃――
K11では盛大な宴が開かれていた。
解放された人々。
再会した家族。
笑い声。
音楽。
子供たちの笑顔。
長い戦争の果てに訪れた、束の間の平和。
その夜だけは――
誰もが「家族」だった。
第355話を読んでいただきありがとうございました。
今回は戦いではなく、「再会」と「希望」が中心の物語となりました。
しかしアレスの計画、ナーリス族の潜入、そして黒炎族の未来など、まだ多くの問題が残されています。
次回はいよいよレンと黒炎族の再会が本格的に描かれます。
次話もよろしくお願いいたします。




