第38話 悪魔の翼
6月1日、ドラギウス帝国軍はさらにもう一機の決戦用MUを完成させた。その名も《メフィサー》である。
この機体の最大の特徴は、巨大な可変翼部分であり、この可変翼を広げる事によって可変機並みの機動性を確保することが出来るのだという。そして、この機体はサロアに行き渡ることとなった。
「サロアよ、我が軍が総力を挙げて開発したこのメフィサーで共和国軍や連合国軍の連中を敗北への道へと陥れるのだ。任せたぞ。お前ならこの機体は使いこなせるはずだ」
「分かりました、バルマーン長官」
サロアはバルマーンに対し敬礼を行った後、機体の運用テストを行うことにした。
この運用テストの段階で、彼はすんなりとメフィサーを使いこなすことが出来ていたのだ。
そして、これを見たミルドレッドとロレントは彼の技能に感服していた。
「流石はサロア大尉……。やはり我々とでは実力が違う。自分も大尉のように強くなれれば……」
「ミルドレッド中尉なら必ず強くなれますよ」
ロレントはミルドレッドの事を励ます。
それから数十分後、サロアは基地の中へと戻って来た。
「大尉、流石でしたよ」
「ありがとう、ロレント。俺は必ず共和国だけでなく、連合国の連中も殲滅して見せる……。必ずな」
サロアは、自らの拳を強く握りしめた。仇を取るという目標を目指す自身の意思を込めて。
そして、四日後の事。帝国軍は連合国軍第2補給基地に攻撃を仕掛ける。
筆頭部隊はサロア率いるレイダー隊であった。
「よし、このまま突撃だ!」
“了解!”
サロア達はすぐさま敵部隊に銃口を向け、一斉掃射を行った。
この凄まじい光線の嵐に、敵軍はあっという間に飲み込まれていく。
「敵部隊の大半を撃退! 残りは接近戦で殲滅するぞ!」
“分かりました、大尉”
サロアは右腕部のビームソードを展開し、空中にいる敵機を睨む。
「そこかッ!!」
「何て早さなんだ! このままでは……、ウワアァァァァッ!!」
素早い動作で彼は敵機を一刀両断した。
しかし、サロアを追い詰めようとする敵は少なくなかった。
「来たか……。多勢に無勢という言葉を知らんようだな!」
サロアはアームウェポンシステムの出力を変え、ビームクローにして残る敵機を一瞬にして片付けてしまった。これにより、連合国軍は大きく不利な状況に陥れられた。
そして、この件についてはファルスト連合国内でもニュースとなり、帝国軍壊滅作戦も考えられる事が決まる。
一方、共和国軍もまた新型量産機、《ガントレイザー》の配備やロードブレイダーMk-Ⅱを大幅改修した改良型、《ロードブレイダーMk-Ⅱ改》も開発が完了し、敵軍への攻撃はいつ来ても安心と言えるであろうというほどに万全な状態であった。
「ロバート少佐、ついに完成しましたね……」
「そうだな、カイル。まさかまた亮さん達が来てくれるなんて思ってもいませんでしたね」
新たな装いのロードブレイダーMk-Ⅱを見て、亮の顔を思い浮かべるロバート。
彼は開発中に再会し、他のプログレッサー隊のメンバーと共に機体調整を手伝っていたのだ。
開発チームたちは、スラスターの推力やジェネレーターの出力の限界にギリギリまで挑んだ末にこの機体を完成させた。さらにより汎用性を高くしたガントレイザーの本格導入で、戦争終結まであと一歩という所まで来ていると、ロバートは確信する。
「これからお前たちが乗るガントレイザーも、ガントレックのウェポンユニットの互換性が一部あるみたいだな」
「そうですけど、腕部や脚部ユニットの方に関してはパーツの取り換えを行わないと使えませんよ」
カイルは眉をひそめた。
「そうか。でも使えるのならいいじゃないか。ひとまず、今後もどうにかやっていけそうだな」
その一方、レイダー隊は共和国軍第2補給基地へと進軍を開始。そこにいた部隊と一戦交える事となる。
「クローティス、エリナ、リオ、このまま一気に攻めるぞ!」
“了解!”
彼らは一斉掃射を開始するが、レイダー隊のいつにない猛攻に苦戦していた。
ここでルーガンは、クローティス達三名を後方支援に就くように指示を出し、単独で立ち向かうことにする。
「来い! 新型機め!」
「へへっ、来たな……。このォ!!」
サロアはすぐさまビームソードを展開し、ルーガンの機体右腕部を切断する。
「クソッ……。まだまだ……」
“隊長、ここは我々にお任せを”
「クローティス、任せたぞ」
三人はサロアに攻撃を仕掛けようとするが、ミルドレッドとロレントが妨害を行う。
彼らはビームを撃ちながら挟撃し、なし崩し的にクローティス達を撤収にまで追い込んでいく。
そして、残されたのはルーガンのみとなる。
「クソォ、来いッ!!」
ルーガンはビームライフルで攻撃を仕掛けるが、サロアはその攻撃をいとも容易く回避定していき、どんどん追い詰めていった。これにはルーガンも心が震える。
「俺がそう簡単に負けてたまるか!」
ビームソードを取り出して、自ら突撃を仕掛けるルーガン。
そして、互いの剣の刃は激しくぶつかり合う。
「何をォォッ!!」
圧倒的な出力でサロアはルーガンを押し出し、そこからもう一度斬撃を喰らわせて戦闘不能に追い込んだ。ルーガンは傷だらけの機体で撤収を余儀なくされた。
その後、ストライカー隊などの共和国軍の面々は再びロバート達のいる方へと援助要請を出す。
やがて第3前線基地へと合流後、ロバート達は作戦を練った。
再び訪れる敵襲に備えて。
それから二日後、彼らの思惑通りにレイダー隊を筆頭とする部隊は第3前線基地へと攻撃を仕掛けてきた。
ロバート達は戦闘態勢をすぐさま整えて、出撃を開始する。
「ひとまず一斉掃射しながら少しずつ前進だ!」
“了解!”
敵機を画面越しに睨むロバート。彼は二本のビームキャノンで素早く敵部隊を一掃していく。
軽やかな動きをしつつ、彼はひたすらこの戦いに熱中する。
「よし、フランク、ヘレン、援護頼むぞ」
“了解です”
“分かりました。私にお任せを”
彼らがそうする一方でカイルは接近戦に専念しており、後続部隊の進路を切り開いていた。
「俺は絶対に負けたりしない……。必ずなッ!」
カイルは大剣を素早く振り回しながら、次々に敵を斬っていく。
しかし、彼はその中でとある場面を目撃する。
「何だアイツは……、ウワアァァァッ!!」
それは、新型機のメフィサーが凄まじいスピードで敵を圧倒し、次々に共和国軍の部隊を襲っている所である。それを見て、カイルは直ちにロバートらに連絡を取り合流した。
「カイル、大丈夫か?」
“俺の方は気にしないで下さい。それより、あれを……”
「あれがルーガンの言っていた新型機か……。よし、総力を挙げて攻撃を仕掛けるぞ!」
“りょ、了解!”
プログレッサー隊の四人はレイダー隊に接近しようとするが、凄まじい速度故に、ロバートですら思わず圧倒されそうになる。だが、彼は諦めなかったのだ。
「このMk-Ⅱ改で挑むしかあるまい……。来い!」
「来たな……。ん? 姿が少し違うな? 強化されたのか……。まぁいい。俺に不足は無い!」
サロアは背面のビームキャノンを展開し、攻撃を仕掛けていく。
しかし、ロバートも負けじと応戦する。このスピードに応戦できるように機体を戦闘機形態に変形させ、激しいドッグファイトを繰り広げる。
「なんて速さだ……。変形もせずにここまでのスピードを出せるなんて……」
「フッ、やるな……。だが俺はこの程度では怯まんよ」
サロアはさらに光線を乱れ撃っていく。さらにビームライフルも併用し、火力はより確固たるものとなる。だが、ロバートはそこから切り返し、ミサイルを発射する。
「ふん、こんなものなど計算済みよ。甘いな……」
余裕に満ちた表情でビームライフルを撃つサロア。さらに彼が手向けたミルドレッドとロレントを、ロバートと戦わせる。二対一の戦いで苦戦しそうになるが、すぐさま隙を突いて斬撃を行い、彼らをあっさりと撤収にまで追い込んだ。
そして、再びサロアと激闘を繰り広げるロバート。性能もほぼ互角ということもあり、戦いは泥仕合にもつれ込むと思われていた。
「何をォッ!!」
ロバートは、ここで両腕に装備された二門のスマートブラスターでサロアを狙い撃つ。
「ん? 新しい武器か……。仕方あるまい。応戦せざるを得んな」
サロアもどうにかビームキャノンで応戦するが、火力面ではメフィサーの方が劣っていた。
その事を察したサロアは、ビームソードとビームシールドを展開し、大胆にも接近戦に挑む。
「さぁ来いッ!」
「そうか、ならばここは……」
ロバートもまた、彼に呼応するかのように接近戦に挑む。互いに剣の刃をぶつけ合い、どちらも負けじと攻撃を繰り返していく。しかし、サロアはこれ以上戦っても勝ち目は無いのではないかと判断し、一旦撤収を余儀なくされる。唐突に逃げていったサロアの事を不自然に思いながらも、ロバートはどうにか安堵した。
戦いは終わったものの、まだ完全に一安心できるような状況下でないことを悟ったロバート達は、今まで以上に訓練に励むことにした。この戦いがいずれ終息することを祈って。




