第36話 激闘の果てに
5月10日、ドラギウス帝国軍は総合演習を行っていた。それはすべての部隊が参加する大規模なものとなっており、AI戦闘部隊との訓練などといったように本格的なものだった。
「エルドラド少佐、この敵部隊はどう攻め落としますか?」
“圧倒的火力でねじ伏せて落とす!”
「了解!」
エルドラド達三人は、遠距離からの攻撃で模擬戦に勝利。
彼らの強さは、ヴィラーガを殺された事をきっかけによりさらに高まっていた。
「ヴィラーガ、お前が死んでから寂しいよ……」
セルバードは演習を終えてから、窓越しから宇宙を見つめる。
死んだ彼がもう二度とからかってくれない事に対し、切なそうな目をしていた。
「あら、セルバード大尉……。やはりヴィラーガ大尉の事を思い出しているようで……」
「あの突然の死はショックだった。お前もそう思うだろ?」
「はい……。あの日の夜は泣く事しかできない自分を情けなく思いました……」
メルダも悲し気な顔つきで、あの日の事を思い出す。
「二人共、これからヴィラーガの仇を討つためにもしっかり強く生きていこう……」
「はっ、はい、エルドラド少佐!」
二人はエルドラドの姿を見て、慌てながらも敬礼をした。
彼らは心の中の涙を拭いながら、今後の戦いに挑むことを決意する。
一方、既に帝国軍開発チームはグライズⅡをついに完成させ、量産を急いでいた。
現段階では少数生産された機体で構成された部隊によって、共和国軍第2補給基地を襲撃することに成功していたため、後は各部隊に普及するのを待つのみである。
「さてと、俺達でどうにかあの共和国軍を叩きのめしてやった訳だが……。メヴィック、ボルグ、これからはこのグライズⅡで戦いにおいて有利に駒を運べるって訳だ。楽しみだぜ」
ゾルヴィンはウイスキーを味わいつつ、作戦指示用ディスプレイを眺める。
「ゾルヴィン大佐、自分にいい考えがありますぜ」
「そりゃあいい。早速作戦会議を始めるとするか……」
こうして、キラー隊の三人は酒などを片付けて作戦会議を始めた。
たった2時間で作戦会議は終了し、彼らはすぐさま作戦実行に向けて準備を行う。
一方、ジュピトリア共和国軍は第2補給基地を壊滅状態にまで陥れられたことを受け、当基地の再建及び防衛システムのさらなる強化をすべく、対策を練っていた。その中で、国民達はいつ戦争が終わるのか不安視する声も見られ、大統領であるアドレアはその不満への対処に追われる。
「アドレア大統領、このままでは国民の不平不満が爆発し、デモが起こる可能性もあります。そうなる前に、早くそういった過激派の国民への対処をしなくては……」
「ならば、国民が安心できるように学徒出陣令は何があっても出さない事を誓おう。そして、現在我が国の軍で開発中の新型メタルユニットである《ガントレイザー》の量産化を急がねばな」
「了解です。とはいえ、これで十割が納得できるかどうか……」
「それも覚悟の上でやるつもりだ」
アドレアは拳を力強く握り、頷く。彼の判断でどう動くのだろうか。
それから一週間後、ドラギウス帝国軍は新戦力を携えてジュピトリア共和国軍第4前線基地を襲撃。
これを受け、各部隊は出撃することを強いられた。そして、プログレッサー隊は空中防衛任務に就く。
“ロバート少佐、今回の作戦も必ずや成功させて見せましょう”
フランクはやる気に満ちた面持ちで話す。
「あぁ、俺たちの手でこの基地を守ろう」
そして、彼らはV陣形で一斉掃射を開始したが、新型量産機であるグライズⅡで構成された機動部隊と対決し、思わず驚く。
「あれは……、新型!?」
ヘレンは真っ先に新型機が来るのを捕捉し、直ちに攻撃を開始した。
共和国軍側には早い段階で援軍が来たものの、なかなか撃墜出来ずに苦戦する。
「このままだと泥仕合になりますよ! 早く打開策を……」
“分かっているさ、カイル。ここは俺が囮になる。奴らの目的は俺の機体だ”
ロバートは機体を戦闘機形態に変形させ、自ら囮となって戦う。素早い動きで敵を翻弄させるが、やはり新型機が相手であれば、話は違う。
「ミサイルで牽制するか……」
ロバートはミサイルランチャーで上手く敵を牽制する。そこからビームキャノンでようやく敵機を何機か撃墜した。
「おのれMk-Ⅱめ……。ならば……、これだ!」
兵士の一人はシールドの裏からグレネードを取り出し、ロバートに目掛けて投げる。
「ウワッ! 視界が……。ならばもう一発!」
ロバートはビームキャノンで反撃し、その敵機を撃墜した。
しかし、敵機が群がっている状況に変わりはない。
“ロバート少佐! ここは我々ストライカー隊にお任せを!”
「ルーガン! 助かったよ」
“少佐たちは先に行ってください”
「分かった。第1防衛ラインだな?」
“はい。お願いします”
そして、プログレッサー隊は第1防衛ラインへと急いで向かった。
プログレッサー隊が目的のエリアへと向かうと、当然ながら既に帝国軍と交戦状態にあった。
そこではアタッカー隊を筆頭に攻撃を仕掛けていたが苦戦しており、キラー隊が急降下と急上昇を繰り返しながら爆撃を行っていたのだ。
「アモン大佐、大丈夫ですか?」
“ロバート、助かったぜ。ここは援護頼むぞ”
「了解です」
ロバートはすぐさまパワードキャノンを用意し、キラー隊を筆頭とした部隊を相手に攻撃を仕掛け、グライズⅡの編隊をある程度一掃した。しかし、ここで諦めないのがキラー隊の真骨頂である。彼らは一機ずつに分かれて攻撃を開始した。凄まじいスピードでの攻撃に、流石のロバート達も苦しまざるを得なくなる。
「たった数機でこの強さとは……」
“ロバート少佐、俺が接近戦を仕掛けて囮になります……”
「カイル、いいのか?」
突然の発言にロバートは戸惑う。
しかしカイルは
“少佐のために死ねるのなら、俺も本望です”
「そんな事を容易く言うな! 必ず生きて戻って来い」
“分かりました……。必ず生きて戻って参ります”
カイルは大剣を構えて、すぐさま敵機に接近していく。
「これで決める!」
「何をォォッ!!」
カイルとメヴィックは激しく剣で斬り合い、互いの心は熱くなる。その中でメヴィックはここですぐさま強い蹴りを入れ、カイルを吹き飛ばすが、すぐさま態勢を立て直す。
「今だァァッ!!」
「何ッ!?」
メヴィックは袈裟斬りにされ、機体共々散っていった。
「メヴィック!! この野郎……、よくもメヴィックを殺してくれたなァ!」
ボルグはすぐさまビームライフルで乱れ撃ち、カイルを牽制しようとする。
そこに割って入ったのがフランクとヘレンであった。
“大尉! ここは私たちに任せてください!”
“自分も援護いたします”
「ヘレン、フランク、頼んだぞ」
ヘレンとフランクは、遠距離攻撃でボルグに反撃を仕掛けていった。
「ま、まずい……」
隙を突いて、フランクは大型粒子砲とミサイルポッドで集中砲火を仕掛けていく。
これにより、ボルグの機体はかなりの損傷を負った。
「これでどうだ!」
「まずい、シールドはおろか右腕までやられるとは……」
それでもボルグはまだ諦めずに光線を撃つが、不利な状況は変わらない。
さらに彼に追い打ちをかけたのは、ヘレンの遠距離射撃であった。
「もう一発!」
その時、ヘレンの放った彗星の様な光線がボルグの機体を貫き、機体は爆発四散した。
「こんな所で……、この俺がァァッ!!」
「後は隊長機だけだな」
“今はその隊長機がロバート少佐と交戦中のようです。早く援護しないと……”
「分かった。早く向かおう」
そして、ヘレンとフランクはカイルと共にロバートとの合流を試みた。
時を同じくしてロバートは、ゾルヴィンと死闘を繰り広げていた。
彼は爆撃用のボムやビームライフルのエネルギーを全て使い果たし、満身創痍の状態である。
「まだやられないのか……」
ロバートは彼のあまりの粘り強さに驚いていた。
しかし、彼はそう簡単に倒すことを諦めたりはしない。
「既にメヴィックやボルグがやられた今、俺がやるしかないんだ! スフィーノを殺した共和国の連中を許しておけるかよォ!!」
鋭い目つきで睨みつつ、ロバートに斬りかかるゾルヴィン。
彼は全てを失い、怒りに燃えていた。その怒りの炎は彼の体を突き破らんばかりに熱くなっているといっても過言ではない。
「奴からただならぬ殺気を感じる……。何故だろう……」
ロバートは思わず焦りを感じていたせいか、攻撃を防ぐことしか出来なかった。
しかし、その瞬間にロバートは切り返す。
「これでも……、喰らえッ!」
鍔迫り合いの状態になった二人。互いに違うベクトルから来る闘志と言う名の炎を燃やしていく。
「ここで死んでたまるかよォ!!」
ロバートは素早く蹴り上げてゾルヴィンの握っていたビームソードを弾き飛ばした。
ここからさらに彼は、勢いよく斬りかかった。
「何ィッ! この俺を……、この俺を倒すだなんてェ!」
ゾルヴィンはさらにそこから咄嗟に拳を振るうが、当然かなうはずもなく機体右腕部は焼失した。
そして、ロバートは隙を突いて二本のビームソードで素早く斬る。
「もう……、駄目か……。スフィーノ? スフィーノなのか……」
ゾルヴィンは一瞬死んだはずのスフィーノの声を微かに聞き取った後、機体と運命を共にした。
こうして、キラー隊は完全に殲滅。今回の戦いは終わった。
戦いが終わり、ロバート達は達成感を味わった一方で、何の因果かは分からないが罪悪感を感じていた。
「なぁ、なんだかよく分からないんだが……、今回あの黒い敵機を倒した直後に僅かな罪悪感を感じたんだが……」
「罪悪感?」
「あと、あの黒い機体と戦っている最中にもただならぬ殺気を感じたんだ。積年の恨みつらみを感じたというか……。何て言うか」
「少佐の第六感がそう感じたのでしょうね」
フランクはロバートをじっと見つめつつ話す。
「第六感か……。そういうオカルトな話は信じない方だけど、あるもんなんだな」
ロバートは広い漆黒の宇宙が見える窓越しに考え込む。
一方で、ファルスト連合国軍はとうとう帝国軍の新型決戦用MUについての情報を知った。
その新型MUは、二機存在することが発覚した。とはいえ存在のみが明らかになっただけであり、細かな情報に関しては、厳重にコピーガードがされていたため閲覧することが出来なかった。しかし、この情報は軍の中でも大きなニュースとなる。今後、この新型機がどのようにこの戦争の歯車を動かすのか。




