第35話 連合国軍基地を奇襲せよ
5月2日、プログレッサー隊はその他の一部の部隊達と共に共同作戦を練ることになる。
その中には、以前の戦闘で会ったベネットもおり、ロバートは再会に喜ぶ。
また、この作戦では総指揮をアモンが執ることになっていたため、彼は早く全員揃わないか待っていた。
「アモン大佐、どうされました?」
エストルは、苛立ちを隠せずにいる上司を見て不思議に思う。
「どうしたもこうしたもよォ、今日は大事な作戦会議だというのになかなか来ないのがいるんじゃあな……」
「まぁ、お気持ちは分かりますが……」
すると、もうすぐ会議開始という所で部下数名が会議室に来た。
「大佐、遅れてしまって申し訳ありません」
「時間ギリギリだぞ。五分前行動と言わなかったか?」
「失礼致しました……」
「まぁいいさ。とにかく早い所席に座ろう」
「了解です」
こうしてこの直後、作戦会議は始まった。今回の作戦では、連合国軍に奇襲を仕掛けるということになっており、本会議は難航したがどうにか完成に至る。それは3時間半にも及んだという。
「しかし、何とか会議は終わったが……、ヘレン、眠たくないか?」
「大丈夫です。フランク中尉」
「そう言うフランクこそ、うつつを抜かして無かったか?」
「いえ、そんな事無いですよ、カイル大尉」
「カイル、お前も人のこと言えないだろ?」
ロバートにそういわれた瞬間、カイルは黙ってその場を去ろうとした。
「大尉、都合の悪い時に限っていなくなろうとしないで下さい」
「えっ?」
「図星だなこりゃ」
カイル以外の三人は思わず呆れた面持ちになる。
「すみません……。自分も疲れていたもんで……」
「もういいよ。終わったことだから仕方ないさ。今度からは気を付けろよ」
「了解です」
こうして、プログレッサー隊の四人は一旦それぞれの自室へと戻っていった。
一方、ファルスト連合国軍は新型メタルユニットの開発を完了していた。その機体の名は《ブラスレイ》。この機体は後々量産化も考えられている機体であり、接近戦に特化している。
「これは凄いな……。なかなかに良いじゃないか。ビームソードを腕部に取り付けてビームシールドと一体化させるとは。大したものだよ。私一人ではまず考えられなかっただろう」
「ライエル長官、お褒めの言葉をありがとうございます。こちらは可変機ではないものの、機動性に関しても十分と言ってもいいほどの性能を持っております。さらにビーム砲を胴部に内蔵しておりまして……。火力に関してもこれで補ったつもりです」
「流石だよ。これならこの国家間戦争の切り札となってくれるだろう」
「ありがとうございます」
開発チームのリーダーは微笑みつつ敬礼を行った。
その後、ライエルは長官室へと戻っていく。
それから二日後、とうとうジュピトリア共和国軍は作戦を実行することとなった。
連合国軍第3前線基地へと奇襲を仕掛ける事となった。就寝時間を狙い、殲滅するというものである。
ロバート達は眠気をどうにか消し飛ばしつつ、作戦に挑む。
「アモン大佐、いよいよですね」
“そうだな、ロバート。とはいえど、俺達人間はさすがに三大欲求には抗えんな。”
「ええ。確かにおっしゃる通りですね……」
ロバートはどこか緊張しているように見えた。
“顔色が悪いようだが、お前はプログレッサー隊の隊長として、今まで頑張って来ているじゃないか。”
「それは事実ですが……」
“不安になる必要は無いぞ”
「分かりました……」
軽く頷くロバート。そして彼は、遥か遠くの敵基地を見つめつつそこへと駆け抜ける。
こうして、戦いは幕を開けた。この漆黒の宇宙の静けさは、嵐の前ゆえなのか。
連合国軍機動部隊はどうにか対処するも、対応は遅れ、次々に格納庫や防衛システムは破壊されていく。その中でスプリンター隊の面々も出撃し、一斉掃射を仕掛けていく。鷲にも似たそのスピードで、敵部隊を丸め込もうとする。
「落ちなさい!」
ライナは凄まじいスピードで光線を連射して敵機を一機撃墜した。
“ライナ、そっちはどうかしら?”
「おかげさまでなかなかいい感じです。マリー少尉は?」
“まぁ、普通ね”
冷静な表情で受け答えをしつつも、マリーは何機もの敵機を一掃した。
“前言撤回、余裕ね”
「一瞬で四機の敵を撃墜するなんて……。驚きですね」
“まぁ、大したことないわよ、ガントレック四機ぐらい”
橙色の眼を輝かせつつ、ニヤリと大胆不敵に笑うマリー。彼女には他人以上の自信がある。
その自信は何処からともなく湧き出ている。
一方、ロバート達は機動部隊を圧倒的攻撃力で殲滅していた。追加武装パックは他の部隊にも採用され、最早敵なしの状態であった。とはいえ、この脅威もいつまで続くか分からない。そんな状況下にあった。
「ロバート少佐、このままどんどん進んでいきましょう!」
“焦るな、カイル。ひとまずここは少しずつ進むんだ”
「分かりました……」
すると、ヘレンが索敵している最中にとある事に気付く。
「少佐! 可変機が急接近しています!」
“何だって!? もしかしてガザードか? それとも……”
勘繰る暇もなく、彼女たちは攻撃を開始する。
凄まじい攻撃力故に五分五分の戦いを繰り広げた。
そして、マリーはその中で戦闘機形態で急降下と急上昇を繰り返す。
「何てスピードなんだ! 早く仕留めないと……」
兵士達は焦燥に駆られながらもただひたすら光線を放っていく。
しかし、その圧倒的な速さを前に彼らは無残にも散っていった。
それを見たロバートは、仲間を倒された事への憎しみを力に変え、攻撃を激化させていく。
「フランク! 何としてもガザードを落とすんだ!」
“了解! 上手く狙いを定めなければ……”
フランクは後方から奇襲を仕掛けようとするも、キャロル達三人が彼を妨害する。
「させないわ……。マリー少尉を倒させるなんて……」
キャロルは震える手で操縦桿を握る。さらに、敵が近づいてくるタイミングに合わせて機銃を撃っていく。
「何て強さなの……!」
“キャロル准尉、我々もお供します!”
「リノ、ライナ、頼んだわよ……。無茶はしないようにね」
“分かってますよ、それぐらい”
リノは微笑みながら頷く。そして彼女は、目の前に近づいて来た二機の敵をすぐさま撃墜する。
“やるじゃないリノ!”
ライナは仲間であるリノの活躍に驚く。
「アタシだってやる時はやるのよ! こういう時こそ……、やって見せなくちゃ!」
“気を付けてね、リノ……”
「分かってますってキャロル准尉! このままマリー少尉が驚くぐらいの活躍をしてやりますって!」
キャロルは保守的になりつつもどうにか少しずつ共和国軍を追い詰めていた。そこにマリーが再び合流する。
「キャロル、もっと果敢に攻めないと……」
“分かってはいますが……”
「じゃあ尚更よ! もっとガンガン攻撃しなくちゃあね!」
“はい!”
そして、マリー達はとうとうプログレッサー隊達と対峙することになる。
「来たな! ガザード……。何としても撃墜してやろう」
“そうですね、ロバート少佐”
カイルはビームクローを展開し、果敢にも接近攻撃を繰り出す。
彼の今までよりも激しい攻撃に、流石のスプリンター隊も苦戦を強いられることになる。
「シールドで防ぐにしても、限界があるわ……。なら、零距離射撃で……」
キャロルはビームライフルを素早く取り出し、カイルの機体頭部を破壊しようとするが、一瞬で避けられてしまい、結果的にはそのまま接近戦にもつれ込む。この様子を見たリノは、加勢することになる。
「キャロル准尉、ここはアタシに任せてください!」
“分かったわ……。頼んだわよ”
「はい、お任せを」
リノはビームソードを素早く振り回し、カイルを苦戦させる。
攻戦一防の状態の中、秘密裏に動いている者がいた。
「カイル大尉が危ない……。ここは私が……。大尉に当たらないようにしないと」
ヘレンは遠距離から上手く隠れながら狙いを付けていく。
「今ね!」
その瞬間、一筋の雷のような光線がリノに直撃した。カイルは突然の出来事に一瞬驚くも、すぐにこれがヘレンによるものだと分かった。
「キャアアアッ!!」
“リノ! これは私の責任だわ……”
「いいんです……、准尉を守ることが出来ただけでも……、それで……」
その後、リノは機体と運命を共にした。これを目撃したマリーは、自分の愚かさと無能さに後悔する。
そして彼女は涙する暇もなく、攻撃を続けた。
「ここにいたのね……。リノの仇!!」
ヘレンは、近づいて光線を撃ってきたマリーに驚きながらもどうにか対処する。
「このままじゃ……、やられる……!」
「させるか!」
その時、彼女に救いの手を差し伸べたのはロバートであった。
“ロバート少佐!”
「ヘレン、大丈夫か?」
「来たわね……、ロードブレイダーMk-Ⅱ!」
マリーはすぐさま標的をロバートに変える。
さらに、キャロルとライナを呼び出しヘレンを撃墜するように指示を出した。
「よくもリノを……、私がリノの分まで戦って見せるわ……」
その時のキャロルは、いつにないほど怒りに燃えていた。
彼女は自分自身の過ちを、自ら払拭するためにヘレンに斬りかかった。
「喰らいなさい!!」
“キャアアッ!! 右腕が……”
彼女はそのまま撤収しようとするが、ライナがそれを妨害しようとする。
「させないわよ……」
「囲まれた……。どうすれば……」
“ヘレン、ここは俺達がやる!”
その時、カイルとヘレンが援護を行い、その隙にヘレンはどうにか撤収に成功する。
カイルはビームブレードをしっかりと構えて振り下ろす。
「喰らえェ!!」
「危ないわね……。でもこっちの攻撃はどうかしら?」
ライナは動きを見切った上でビームソードで素早く斬りかかる。だが、カイルはそれをすぐに避けていく。彼はそこから反撃に出る。
「今だ! 隙あり!!」
「右腕を斬られた……。そんな……」
ライナは隙を突いてすぐさまこの場から去って行った。
一方、フランクとキャロルは光線の撃ち合いに必死になっていた。どちらにも簡単には負けないという強い意志があった。
「凄い強さね……。でも……!」
キャロルは光線を撃ち終えたかと思うと、突如としてフランクに斬りかかって来た。
「何て奴なんだ……。こっちだって!」
フランクはビームキャノンで零距離射撃し、機体頭部を破壊した。
「そんな……。これではまともに戦えないわ……」
仕方なくキャロルはこの戦場を後にする。
時を同じくして、ロバートはマリーと激しい戦いを繰り広げていた。
圧倒的火力によるぶつかり合いの末、とうとう凄まじい格闘戦となる。
「何て強さだ……。でも、このまま後ずさりする訳にはいかないんだ!」
「何よ……。私がこの程度でェッ!!」
マリーは、不利であったはずの格闘戦においてロバートとほぼ互角の戦いを行っていた。
そこでロバートは、ガザードに蹴りを入れた。
「そんなッ!」
「よし、今だ!」
「させるものですか!!」
だが、マリーはすぐさま態勢を立て直して切り返す。
そしてこの攻撃で、ロバートはシールドを切断された。
これには流石のロバートは黙っていられるはずもなく、ビームソードをもう一本取り出し、二刀流で立ち向かうことになる。
「かかって来い……!」
「私がこんなハッタリでやられるとお思いかしら? 死になさい!」
ロバートはマリーと激しい斬り合いになるが、やはり実力者同士の戦いだけあってか、なかなか戦いは終わらなかった。しかし、戦いの終止符を付けようとする者が現れた。
「ん? この大隊は……、アタッカー隊か?」
“ロバート、助けに来たぜ! ここは俺達が殲滅する”
アモン達が来るのを見て察したマリーは、仕方なくこの戦場から逃げざるを得なくなった。
そして、それから数分も経たずして連合国軍第3前線基地は事実上の壊滅状態となったのだ。
今回のジュピトリア共和国軍がファルスト連合国軍に壊滅的な被害を与えたというニュースを聞いたドラギウス帝国は、ついにグライズの後継機の最終調整を急ぐよう、バルマーンが指示を出した。この後継機は《グライズⅡ》と名付けられ、これで戦争終結を目指そうと目論んでいたのだ。また、皇帝のアルバレスは学徒出陣令を出し、さらに兵力拡大を試みた。果たして、帝国軍はこの戦いに勝利を見出すことは出来るのか。それとも、最悪の事態を引き起こすのか────────




