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第13機動部隊 プログレッサー  作者: 藤沢マサト
第三章 迫る危機
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第33話 10分間の死闘

 4月20日のこと、とある事件が起こった。共和国軍第3補給基地が何者かの手によって爆破されたのだ。

ジュピトリア共和国軍調査部隊は直ちに向かい、早速原因を究明することにした。


「なるほど……。これが爆弾の破片と思われるものか……。連合国軍がやったのか、帝国軍がやったのか、気になるとこだが……」

「そうですね。早く基地に戻って調査を行いましょう。でないと再び同じ事件が起きるでしょう」

「うむ、気を付けないとな」


その後、調査部隊は基地へと戻り、回収したいくつかの破片を徹底的に調べた。

AIセンサーを用いて現場の破片を調べ上げた結果や、僅かな証拠から、帝国軍による事件であることが数日後に発覚した。その直後、共和国軍全体が厳戒態勢を敷くこととなった。



 一方でロバート達もこの事件を受けて作戦を計画するが、詳細な原因に関してはまだ完全に明らかにはなっていなかった。帝国軍がやったことは確かであるものの、どのように防衛網を突破されたかは不明であったのだ。とはいえどその中で調査部隊は、今もなお根気強くデータベースを参考に事件当時の状況も整理していた。その結果、事件当時に周辺を移動していたと思しき輸送部隊にスパイがいるのではないかという結論に至った。


「よし、どうにか事件当日の映像データを入手した訳だが、ここからスパイを割り出すというのは至難の業だぞ。何としても暴き出すんだ。また、爆発したエリアも特定できている。A-39-Bだとのことだ。ここにいった輸送部隊に調査を行おう」

「はい」



 その翌日、事件の真相は意外にもあっさりと分かった。

基地が爆発する約1時間前の事。この時に無理矢理警備兵の防衛網を突破した兵士たちがいたことが判明したのだ。やはりスパイがいたというのは間違いではなかった。この事を受け、警備兵たちにはより厳正なチェックを行うように指示が出される。また、人員の増強も行われることとなった。


「ロバート少佐、この前の事件の犯人が分かったみたいですよ。スパイが出入りしていたみたいで……」

「そうだったんだな。でも、油断するなよ。スパイはまだこの軍にいるかもしれないからな」

「了解です」


ロバートとカイルもまた、これからは怪しいものがいないか注意することにしたのだ。

彼らは以前、スパイ兵がいたのに気づけたにも関わらず取り逃してしまったため、その後悔も相まってそのような決断に出た。



 一方、ドラギウス帝国軍はスパイ部隊による作戦成功に喜んでいたものの、その反面敵が防止策が行われるのではないかと危惧していた。


「諸君、よくやってくれた。だが、今回の作戦を受けて共和国軍は警備網をより厳重なものにするはずだ。だからこそ、今後はさらに創意工夫を凝らした作戦で奴らを欺け」

「了解です」


バルマーンと目を合わせる黒髪の恰幅のいい兵士の名は、コンラート・バルテンである。彼は第1隠密部隊のリーダーであり、今までにも功績を上げてきた縁の下の力持ちとも言うべき存在。


 

 その後、彼らは早くも次の作戦会議を行うことにした。今回と同様に警備網を突破すべく、精巧な通行証を作り、これで上手く侵入するというものである。


「コンラート中佐、今回の作戦も上手く行きそうですね」

「だが、油断は禁物だ。敵はより目を鋭くして見張っているはずだ。いくら簡単な作戦でも、決して手は抜くなよ」

「は、はい……」


コンラートは、呆れた目で部下を嘲るように見つめた。


「今回の作戦は二日後の起床時間直後に行う。何としてもやってやろう」

「分かりました……。何しろあの基地にはロードブレイダーMk-Ⅱのパイロットがいるそうですからね」

「あぁ、その通りだ。俺はそいつを倒せずにいるエルドラド達を見ていじらしい気持ちになっていた……。故に今回の作戦の依頼は俺にとって、この上なく嬉しいものだったんだ」


ニヤリと大胆不敵に笑みを浮かべるコンラート。

そして、彼の黒色の瞳は微かに輝く。


「さぁ、二日後の作戦に向けて準備をするぞ」

「はい、中佐」


彼らは、そのまま整備ドックへと向かって行った。何と第1隠密部隊は共和国軍から強奪して来たガントレックを何機か用意していたのだ。隠密部隊の名が泣くものの、万が一作戦が上手くいかなかった場合の保険とも言うべき存在である。

こうして、準備の方は順調に進んでいき、いよいよ作戦当日となった。



 帝国軍の作戦実行日も、共和国軍は何事もなく一日を過ごそうとしていた。しかし、その日常は一瞬にして崩れ去ろうとしていた。コンラートはトラックを走らせ、共和国軍第1ゲートへと向かう。


「おい、通行証を出してくれ」

「了解です」


コンラートは何も悪びれることなく偽の通行証を出した。これは本物と全く違いが分からないように作られており、確認した警備兵もこれが偽物であると気付く事無く、彼らを通してしまった。


「よし、通っていいぞ」

「はい」


そして第2ゲートへ向かうが、そこではプログレッサー隊が警備を行っていた。彼らは鋭く目を光らせており、万が一の攻撃に備えていつでも攻撃できるようにしていたのだ。


「ロバート少佐、トラックが通ってきましたよ」


フランクは隠密部隊の乗るトラックに目を付けた。


“おっ、そうか。よく確認しておかないとな。もしかしたらスパイが潜り込んでいるかもしれないし”


ロバートは早速トラックの窓をビジョン越しに確認すると、あることに気付く。彼は運転席に乗っている輸送兵が以前の事件当日に映っていた兵士と顔が同じだったことに気付く。そもそも事件当日に第3補給基地に行った輸送兵は、この事件に巻き込まれ全員死亡したと調査部隊から聞いていた。それなのにこの場にいるという事は彼こそがスパイではないかとロバートは察した。


「三人共、あの輸送部隊が怪しい。後を追ってあの車両に乗っている運転手に聞いてみるぞ」

“分かりました。形式番号は?”


フランクは緊迫しつつも冷静さを保とうとする。


「J-2117の奴だ。行こう」

“了解”


プログレッサー隊は他の一部の部隊も呼び、コンラート達を追跡。

すると、突如としてコンテナが開き、ガントレックが何機か姿を現したのだ。


「ガントレックが出てきたぞ! しかも認識コードは帝国軍だ。やはり奴らがスパイだったんだな」


ロバートはすぐさまビームキャノンを構えて敵機を狙い撃つ。


「少佐、ここは私たちが機動部隊を撃墜します」

“分かった、ヘレン。後は任せたぞ”

「了解」


三人に後を任せてロバートは、コンラート達の乗るトラックを追い続けた。



 一方、機動部隊と交戦状態にあったカイル達三人や他の部隊は、未曽有の事態に思わず驚いていた。


「それにしても第1ゲートの段階で誰か気付いても良かったんじゃないか?」

“あそこの警備兵たちは油断しきっていたんでしょう。とはいえこれは免職ものでしょうね”


カイルとフランクは愚痴をこぼしつつも敵部隊に攻撃を仕掛け、次々に撃墜していった。


「カイル大尉、ここは私が遠距離から仕留めます」

「分かったぜ。頼むぞ」


ヘレンはスナイパーライフルを構え、空中から光線を一発放った。

この攻撃により、敵機は残り一機となる。


「残り一機でも油断するなよ」

“分かっています。ここは自分にお任せを”


フランクは背面に備わったビームキャノンを展開し、残りの一機もあっさりと片付けて見せた。


「そんなァ! ギャアアアアアッ!!」


機体は爆発四散し、残すところは輸送トラック部隊のみとなった。



 時を同じくして、ロバートはトラック追いつき、機体から降りて格納庫内に入っていくコンラートを止めようとした。


「これで爆弾設置完了だ。ん?」

「お前の悪事もここまでだな」


振り返るとそこにはロバートが立っており、コンラートは思わずニヤリと笑みを浮かべた。


「ロバート・ライアン。お前もあと10分で終わりだ」

「何だと?」

「この爆弾はそう簡単には解除できない仕組みになっている。まぁ、あがいたところで無駄な時間をろうひするだけだがな」


コンラートに対し、ロバートは怒りを覚えた。


「絶対にお前たちの思い通りにはさせない!」

「おっと、残り9分だ……。どうする?」

「ならば、こうするまでだ!」


その時、ロバートは拳銃を取り出してコンラートを射殺したのだ。これ以上被害が拡大しないためにも、何としても爆弾を解除しようと試みる事にした。


「無駄だ……。しかも時限爆弾解除のためのパスワードを知っている俺を殺すとは……。愚か、だな……」


そして、コンラートは息絶えた。


「これが時限爆弾か……。これはどうやら暗号形式になっているようだな……」


ロバートはパスワードをローラー作戦形式で打ち込んでいくが、なかなか正しいパスワードにはたどり着けない。ロバートは必死に思いつく限りの数字の羅列を思い浮かべるも、決定打となる番号は分からない。そこで彼は、工具箱からハッキング用の装置を取り出す。これはハッカー達がパスワード強制解除用に使う電気信号を転送する装置である。その時のロバートはもっと早くこれを使うべきだと後悔していたものの、その悔やみを行動力に変えた。


「残り1分……、上手くいってくれ……」


電気信号が転送された後、時限爆弾のカウンターは停止し、見事爆弾解除に成功した。


「よし、やったぞ!」


ロバートはどうにか作戦に成功し、ハンカチで汗を拭う。

そして、彼はこの時限爆弾を安全な所へと持っていき、カイル達と廃棄した。



 そして、戦いが終わり彼らは爆破事件の根源を断絶したことにより、一階級進級となった。

その一方で、第1ゲートにいた警備兵たちは更迭されるという事となり、一部の国民からは非難の声が上がった。そして、長官のロジオンは今回の件を重く受け止め、警備体制を抜本的に見直すこととなった。


「諸君、済まない……。私がしっかりしていなかったが故にこのような事態を招いてしまって……」

「いえ、いいんです……。長官は何も悪くはありません。悪いのは確認を怠った警備兵たちです」


ロバートは真剣な表情で頷く。


「いや、これは私の責任だ。今後もこのような事態が起きないよう留意していく」

「分かりました」


まだ見えぬ戦いの終止符。それを打つ事は出来るのか。だがそれはまだ誰にも分からない。

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