第31話 ギガンデスの悪夢再び!?
3月22日、ジュピトリア共和国軍第4前線基地は再び基地としての機能を取り戻し、兵士達は既に新たな基地でパーティーを行っていた。
「第4前線基地完全復帰の記念だとして、今日はパーティーだ!」
「おお! トーラス司令官、いいんですか?」
ロバートは思わず口元が綻ぶ。
「良いぞ。ロジオン長官からも許可が出ているからな。今日ぐらい羽目を外しても神様にゃ怒られはしないさ」
「楽しみだな……」
いつになく上機嫌のロバート。彼は、憩いの時を楽しみにしていた。
そしてパーティーが始まり、彼らは様々なご馳走を味わったり、歌を歌ったりダンスをしたりするなどして大いに喜んだ。そんな中ヘレンがステージに立ち、フルートの演奏をするという事で、ロバート達は嬉しそうに彼女が演奏をする様子を見た。
その後、パーティーが終わりロバート達は自分たちの部屋に戻ろうとしていた。
「いい音色だったな。最近あまり吹いていないと言っていたのに、ここまで綺麗なメロディーを奏でるなんてな」
「はい……、いい曲……、ですねぇ……」
カイルは酒の飲み過ぎで酔っ払い、泣き上戸になっていた。
「カイル大尉、酒は程々にして下さいと言ったじゃないですか」
「済まねぇ、フランク……。でも、感動しちまったんだからしょうがねぇじゃねぇか……」
「感動したのは分かりましたから、早く部屋に戻りましょう」
フランクは冷淡な態度で、彼をあしらう。
その中で、ロバートとヘレンは二人で過ごしていた。
「いやぁ、こうしてヘレンの演奏を聴いていたら自然と癒されたよ。ありがとう」
「いえ、楽しんでもらえて何よりです……。あんまり練習時間が無かったので自分では納得しないところはいくつかありましたが……」
「まぁ、俺からしたら素晴らしい演奏だったことには何ら変わりはないさ」
ロバートが微笑む様子を見て、自然とヘレンも嬉しくなる。
「さぁ、もうすぐ寝る時間になるぞ。今日は楽しかったよ。また明日な」
「はい、また明日会いましょう、少佐」
二人は分かれ、自分らの部屋に戻った。
一方で、ドラギウス帝国軍はついにギガンデスの量産に成功し、これを何発も放ち、共和国軍および連合国軍の完全壊滅を行おうとしていたのだ。しかし、この情報は当然ながらまだ敵軍には知られておらず、秘密裏に行われていた。
「バルマーン長官、アルバレス皇帝陛下からお言葉が届いております……」
「そうか。皇帝陛下がどうされたんだろうか?」
「こちらの映像になります」
“バルマーンよ、前回のギガンデスの作戦はさすがだったぞ。とはいえ、油断してはならぬ。まだ敵軍も着実に進歩を続けている。だからこそ我が国もより反映させるため、戦争に打ち勝つのだ。お前にしか出来ない事もあるはずだ。是非とも頑張ってくれ”
「おぉ、直々に皇帝陛下がお言葉を下さるとは……」
バルマーンは思わず嬉しそうにしていた。
「私も嬉しく思います。陛下は今後も長官の事を支援なさるそうです」
「ならば、軍の強化に力を入れんとな」
腕を組みながら頷くバルマーン。今後彼はどう動くのか。
一方、レイダー隊は既に連合国軍第3前線基地に攻撃を仕掛け、壊滅状態にまで追い込んでいた。
彼らはこの作戦の成功を受け、翌日に昇進することが決まっている。
「サロア中尉、いよいよ我々も昇進ですね」
「そうだな、ミルドレッド。だが、やはりジャンの仇を取れていないのは悔しいというべきか……」
サロアはその悔しさを自らの拳に込めて強く握る。
「中尉、自分もこの事は少しも忘れてはいません」
「ロレント、お前もそう思うか。これからどうすべきか……、熟考すべきだな」
「えぇ、そうするしか無いでしょう」
「分かってくれて何よりだ。話はかなり変わるが、ロレントはギガンデスの量産化についてどう思う?」
サロアはロレントに対し軽く指をさす。
「はい……、自分はあまり快くは思っていないですね」
「何故だ?」
「自分は新型のメタルユニットの開発を急ぐべきかと思っていまして。同じような兵器ばかり作っていても、いずれは敵軍に穴を見透かされてしまうのでは?」
彼の意見を聞きながら、軽く頷くサロア。
「まぁ、分からなくはない。だが、安心しろ。以前耳にしたが、整備班から新型の機体が造られているという事だ。これを楽しみにしよう」
「そうでしたか……。なら、多少なりとも安心出来ますが」
「ロレント、そんなに気にすることじゃないさ」
そこへとミルドレッドが割って入る。
「ミルドレッド少尉。何故そんな事を仰るのです?」
「決まってるさ。兵器の性能がものを言う訳じゃない。兵士の技量や実力も関係してくるからな」
「確かにそうですが、実力だけではどうにもならない時もあります」
「どんな時だ?」
「圧倒的な数の敵が現れた時などです」
ロレントは真剣な眼差しでミルドレッドをじっと見つめる。
「だが、それすらも逆転できる戦法を考えられる頭脳さえあれば……、話は別だ」
ミルドレッドはふっと笑う。彼は戦力よりも戦法を重点に置いている。
彼の考えはロレントにしっかりと伝わった。
「なるほど……。そこまで言われたら、反論の余地もありませんね」
「今後は作戦の良し悪しがものを言う……。そう思いませんか、サロア中尉」
「ミルドレッド……、やはりお前はそう思うか。相変わらず理屈だけで物事を考えるのだな」
「それが悪いとでも……」
「いや、気に入ってはいるが、それが返って裏目に出るという事もある……」
それを聞いて、ミルドレッドは黙る。上司であるサロアにこのような事を言われたら、流石に何も言えないのだろう。
その翌日、昇進後に作戦会議を行う事となった。今回の作戦では、何とエルドラドと行動を共にすることとなったのだ。
「エルドラド少佐、お会いできて光栄です」
「俺もお前と作戦を共にできるのは嬉しいと思っているよ」
お互いに微笑み合う二人。その微笑みの裏に何が隠されているのか。
「今回は第4前線基地を襲撃することになっている。再建されたばかりの基地を狙う訳だが、油断はするな。また、今回はギガンデスを使うことになっている。つまり、再び基地を破壊するという訳だ」
その後、順調に作戦会議は進み、数時間後に終了した。
それから二日後、作戦はついに実行された。
この帝国軍の作戦には、並々ならぬ信念が籠っていた。
「今回の作戦……、しくじるなよ」
“分かっております、バルマーン長官。あの連中を黙らせて見せますよ”
「おぉ、流石は私の部下だ。確実にやってみせろ」
“了解”
そして、これを受け、共和国軍も動き出すこととなった。ロバート達は慌てて戦闘態勢を整えるものの、やはり不安はあった────────
もしかしたらまた水泡に帰してしまうのではないか。
「ロバート少佐、今回はどうします?」
若干焦り気味になりつつも、冷静に話すカイル。
“今回はアタッカー隊が援護するとのことだ。アモン少佐は笑顔で快諾してくれたよ。それと、俺達は空中で全方位射撃を行う訳だが……、これがただ撃っているだけでは駄目だ。今回も挟撃をしたり、それぞれの武装を生かした戦法を取るわけだ”
「分かりました」
カイルはゆっくりと頷く。
“ヘレンは遠方で索敵をして、敵が来たらなるべく間合いを広く取って攻撃をすること。フランクは俺と協力して、アモン大佐達と挟撃を仕掛ける。カイルはアモン大佐の別働隊と共に接近戦をするんだ。任せたぞ”
「ロバート少佐……」
“どうした? ヘレン……”
「私、少佐の力になって見せるので……」
“頼もしいことを言ってくれるな。期待してるぞ”
ロバートは、画面越しにサムズアップをして見せた。
“よし、皆行くぞ!”
「了解!」
こうして、彼らの戦いは幕を開けた。
帝国軍には、ギガンデスを撃ち込む前に機動部隊の攻撃で敵の戦力を弱体化させようという目論見があった。
「エルドラド少佐、今回は何としてもMk-Ⅱを……」
“撃墜するまでよ。我々が結束すれば勝てるさ、サロア”
「そうですね……」
こうして、クラッシャー隊とレイダー隊を筆頭とする機動部隊による攻撃が始まった。凄まじい火力により、共和国軍は苦戦を強いられる。
「クソォ、なんて破壊力なんだ……。このままではまずい……。マギー、ロバートと挟撃を仕掛けるぞ!」
“はい、分かりました!”
こうして、彼らは挟撃を仕掛けていく。
「よし……、行くぞフランク」
“少佐、分かりました”
ロバートとフランクは、アモン達とは別の方向から攻撃を仕掛けた。
「ミサイル発射!」
「しまったァ! ウワァァッ!!」
ロバートはショルダーミサイルを発射。この攻撃で敵を一機仕留める事に成功する。
「こっちも……、これで!」
「何だとッ!? そんな!」
フランクはビームキャノンで掃射し、敵機を撃墜していく。
素早い動作に、帝国軍の敵部隊は錯乱し始める。
「アモン大佐、行きましょう……」
“分かった、マギー!”
こうして、ロバートとフランク、アモンとマギー達の挟撃が行われ、帝国軍の機動部隊は四面楚歌になりかける。ここで、エルドラド達は攻撃のチャンスと言わんばかりに攻撃を仕掛けていく。
「三人共、集中砲火だ! ロバートを倒す絶好のチャンスだぞ」
“はい、何としても倒しましょう!”
セルバードは気合の籠った表情で叫ぶ。
「俺達だってェッ!」
サロア達三人も攻撃を仕掛けていく。突如として現れたエース部隊によって、目まぐるしく戦況は変わり、再び帝国軍が優勢となる。
圧倒的なまでの火力には、流石のロバートでさえも苦戦する一方であり、ついに彼は最終手段に出た。
「よし、パワードキャノンだ……! これで敵を一掃する!」
周りに味方機がいないか確認した直後、すぐさま稲光に似た光線を発射した。
「セルバード、危ない!」
“ヴィラーガ! まさか……”
「クソォ! 俺もここまでか……」
ヴィラーガは、セルバードを庇って自らその光線をまともに喰らってしまった。
「ヴィラーガ……、おい、嘘だろ……、夢だよな……。嘘だって言ってくれよォ!」
自分のせいでヴィラーガが目の前で戦死したという事実を彼は拒絶しようとしたが、受け入れざるを得なかった。
「どうしたんです、セルバード大尉?」
メルダは戸惑った表情で彼と通信を取る。
“ヴィラーガが……、死んだ……。俺のせいで、俺のせいで死んじまった!”
「そんな……。確かにヴィラーガ大尉のシグナルが消えてる……。本当に死んでしまったんですね……」
“メルダ、済まない。これじゃあ、少佐に顔向けできない……”
セルバードは感情が昂ったあまり、泣きそうになる。
「だったら仇を討つのが先です! このことは少佐にも伝えておかないと……」
“わ、分かった……”
そして、エルドラドもこの事実を知り、ロバートに対しての怒りを燃やした。
彼はロバートを倒すべく、サロア達も合流させて集中砲火を浴びせる事となった。
「ロバートめ……。殺してやる!」
エルドラドは二門のビームキャノンから光線を乱れ撃つ。さらに、彼は戦闘機形態に変形して急接近。
ロバートにとっては予断を許さない状況下となる。
「来たか……。エルドラド!」
ロバートは反撃を開始し、カイル達を呼び集めて攻撃を続ける。
“少佐、ここは俺が牽制をします”
「分かった。やれる限りの事はやってみてくれ」
“はい”
カイルはビームブレードを展開し、一気に接近する。
「こなくそォ!!」
素早く剣を振りかざすものの、エルドラドはすぐさま回避するが、これは計算の内であった。
回避した先にフランクとヘレンが砲撃を行う。
「行きましょう、フランク中尉!」
“分かった、これで決めよう”
隙を突いて光線を浴びせ、どうにかエルドラドの勢いを止めようとするが、そこへとセルバードとメルダが近づいてくる。
「よくもヴィラーガを!」
“大尉、後ろから敵が!”
「まずい! ならばソードで……」
後方から近寄って来たガントレックを、すぐさま真っ二つにするメルダ。
彼らの闘志はさらに燃え上がる。
「来たな! 奴らは俺が殲滅してやる」
セルバードは、ビームバズーカでフランクに光線を一発放つ。
「何とッ! これでは泥仕合になる一方だ……。ヘレン、奴の隙を突くぞ」
“はい、フランク中尉”
二人は二段構えの攻撃でセルバードに反撃を始める。
フランクはビームキャノンとミサイルポッドを併用し、攻撃を行う。
「しまったァ! 腕が……。撤収せざるを得ないな……」
セルバードは仇討ちをやむなく諦める事となった。
しかしその一方で、エルドラドとメルダは全方位から来る他の敵機を撃墜しつつ、プログレッサー隊との戦闘を継続する。
「メルダ、ここは接近戦で行くぞ」
“了解です”
二人はビームソードを取り出し、カイルを挟撃しようと試みる。
「これで終わりよ!」
「死ぬが良い!」
カイルは機体右腕部を切断され、さらに追加武装ユニットも損傷し、撤収せざるを得なくなった。
「これでロバートの撃墜に肉迫したぞ。取り巻きはあと二機か……」
しかし、そこへと唐突にバルマーンから通信が入る。
“諸君、これからこの第4前線基地にギガンデスを放つ”
「し、しかし……」
“撤収しないと死ぬぞ。それでもいいのか?”
「分かりました……」
そして、エルドラド達を筆頭とする帝国軍機動部隊は撤収し、ギガンデスを輸送する巨大爆撃機が接近。最早共和国軍には打つ手はない。そう思われた矢先であった。とある兵士からの鶴の一声がかかったのは。
「トーラス司令官、ギガンデスの弱点は電磁波です! これで上手く落下先をずらしましょう」
「なるほど。ならば実行する他にあるまい」
第4前線基地のレーダーから、突如として強力な電磁波が放出される。
それと同時に帝国軍はギガンデスを落下させるが、時すでに遅し。ギガンデスは強力な電磁波の影響で落下先が反重力装置が下方に敷かれた鉄板すらない所になっていた。
「しまった……。ギガンデスの投下先が……」
“どうしたんだ”
「第4前線基地とは全く異なる場所に落下してしまいました……」
“何ッ!? そんな馬鹿な……”
「いえ、本当です。しかも木星の地表です」
“何だと!? つまり共和国の連中にまんまとはめられたという訳か?”
「はい……。悔しいですがそうなりますね」
爆撃機内にいたオペレーターは、その悔しさが顔に出ていた。
こうして、第二次ギガンデス投下作戦は失敗に終わったのだ。
ひとまず今回の戦いは終わり、ロバート達はカイルに怪我が無いか確認をしに行った。
「カイル、大丈夫か?」
“いえ、大丈夫ですよ。ただ、機体がかなり損傷を負ってまして……。バンさんからは一日はかかると……”
「そうか……。でも、カイルが無事で何よりだ」
「自分も心配していましたが、良かったです。無事で……」
「フランク……」
「大尉、これからも無理し過ぎないでくださいね」
「分かったよ、ヘレン」
彼らは安堵するが、一方で帝国軍は新たなメタルユニットの開発に着手していた。
果たして、この新型機の全貌やいかに。




