第20話 イアン再び!
11月10日、ファルスト連合国軍はガザードの開発ノウハウを生かして新たに開発した高火力可変メタルユニットである“ガルドール”の開発をついに終え、完成させた。この機体に乗るのは、バスター隊リーダーのイアン・ナスティーである。また、ガルドールは当初からイアンのようなエース級パイロットの能力をフルに生かした機体として開発されていたのだ。
「イアンよ……、このガルドールは、お前なら自由自在に扱えるはずだ。任せたぞ」
「了解です」
そして、その日は半日近くテスト運用を行うこととなった。
一方、ジュピトリア共和国軍のロバートはどうにか帝国軍の新型機であるギルファーを撃退出来ないか、対策を練っている最中である。彼はAIを用いてロードブレイダーMk-Ⅱの戦闘能力の強化、及び自身の能力向上を目指していた。
「そこかッ!」
ロバートはギルファーの戦闘データを基にプログラムされた戦闘用AIを相手に訓練を行っており、これで自分も強くなれる。そう思っていた。
そして、訓練を終えてロバートは部下たちと合流。
「ロバート少佐、訓練の方はどうでした?」
「今んとこはっきりエルドラドに勝てるとは断言は出来ないけど、前よりは成長できたと思っているよ」
「そうですか。でも、前よりスランプ気味では無くなっているようですね」
カイルは少し安堵した表情をしていた。
「まぁな。とりあえず今後はもっと自分の弱点とかを見つめなおせればな……、とは思っているよ」
「そうですか。それでこそロバート少佐って感じですよ」
それを聞いたロバートは、サムズアップをしてからカイルと一旦別れた。
その後、ロバートはアモンと久しぶりに直接会い、以前のエルドラドとの戦闘について話した。
「アモン大佐!」
「よぉ、ロバート。直接会うのはちょっと久々だな。前に帝国のエースにやられたって聞いたが」
心配そうな表情でアモンは話しかける。
「あぁ、あの時は気絶してしまっただけで、怪我はなかったんですがね」
「気絶した? そうか……。余程激しい戦いだったんだな」
「はい。そういえば、アモン大佐はあの時どこで……」
「俺か? 俺は地上でお前とは別のエリアで戦っていたな」
「そうでしたか」
「そうだ。ロバート、お前に言いたいことがある」
アモンは急に思い出したかのようにロバートの顔を見た。
「どうしたんです?」
ロバートは不思議そうな表情を見せる。
「お前には、守るべきものをしっかり守り抜いてほしい……」
「は、はい……」
少し焦りながらも、ロバートはその言葉に頷いた。
「俺にはな……、若い頃弟がいたんだ」
「まさか……」
「あぁ、そのまさかだよ。第三次大戦の時に亡くなったのさ。俺の弟は十七歳で、市街戦の戦火に巻き込
まれて死んだんだ。軍に所属してたのに身内を守れなかったと何度嘆いたことか……」
その事実を知り、驚きを隠せずにいるロバート。
そんな彼の脳内に仲間や家族、かつての友人の顔が浮かぶ。
もし、この中の誰かが戦火に巻き込まれて命を落としたら───
そうなったら永遠に会えなくなってしまい、一生守り切れなかった罪悪感に苛まれるだろうと確信した。
「いきなりそんなこと言われてもなんだよってなるよな……。ん?」
アモンはロバートの反応を見て違和感を抱いた。
「あ、いや……」
「どうしたんだ? 共感し過ぎて怖い気持ちになったのか? そうだったらすまんな……」
「いえ、いいんです。でも、万が一自分の身内や仲間とかが戦いに巻き込まれたらと思うとつい……」
ロバートは切なげな表情で俯いた。
「そうだよな……。俺も同じさ」
アモンは目を閉じながら頷く。
「俺は弟だけじゃなく、数々の仲間や部下を守れなかった……。いつも思うんだ。どうしてあの時守れなかったのか、そんな感じの無力感が俺をいつも襲うのさ。だからこそ、お前には守るべきものを最後まで徹底的に守り抜いてほしい」
「分かりました。必ずカイル達三人を守り抜いて見せます」
ロバートはアモンに敬礼をしてからその場から離れていった。
それから三日後のこと。バスター隊を筆頭とする連合国軍機動部隊が帝国軍第6前線基地に奇襲をかけた。これにより、第6前線基地は一瞬にして瓦礫や灰にまみれた焼野原と化す。この戦いにおいて数々の帝国軍兵士が戦死し、ごく一部の兵士は別の基地へと逃げたものの、被害は甚大なものであった。
このことから帝国軍は厳戒態勢を張り、共和国軍長官のロジオンは万が一の事を想定して、防衛網を強化すると宣言。今、三カ国の間で今までにない空気が張り詰めていた。
「ロジオン長官は防衛網を強化すると言っていますが、具体的にはどういった事をするんですかね」
ヘレンは不思議そうな表情でロバートに問いかけた。
「恐らく軍備費の増大だったり、宙域防衛部隊の数を増やすとかじゃないか?」
「そうですか……。それでも駄目だったら……」
「ヘレン、あまりネガティブな事を考えるのは良くない」
ロバートは彼女に対し、力強い眼差しで訴えかける。
「はい」
「ただ、俺達にも何かできる事があればの話だがな……」
しっかりと力を込めて拳を握るロバート。彼の眼はいつもの時と違うように見えた。
それからさらに一週間が過ぎ、ファルスト連合国軍はついに共和国軍第4前線基地へと奇襲をかけることとなった。ここからついに、激しい戦いが始まる。
「とうとう連合国軍が来るとは……。よし、何としても立ち向かおう」
ロバートは強い意志を抱いて機体に乗り込んだ。
“ロバート少佐、今回はどういった作戦で?”
「地上と空中の二段構えで行く! 俺とフランクは空中班、カイルとヘレンは地上班だ。任せたぞ」
“了解!”
そして、プログレッサー隊は二手に分かれて攻撃をすることとなった。
ロバートとフランクは、空中を飛び回って敵を討とうと試みる。
「フランク、とりあえず低空域から高空域へと移動するのを繰り返しながら敵を討っていくぞ」
“はい、分かりました。何としても成功させたいところですね”
「あぁ、そうだな……」
ロバートはどこか虚ろな目になる。
“どうされました?”
「いや、何でもないんだ、フランク。ひとまず行くぞ!」
“了解!”
二人はまず、標的を低空域を飛ぶ敵機に絞った。
「一発で……、仕留める!」
「何だ!? オワァァッ!!」
初めに敵を討ったのはロバートである。その後に続くかのように、フランクも機銃を巧みに使い敵機を矢継ぎ早に撃墜していった。
その一方、カイルとヘレンは地上でアタッカー隊と偶然合流し、共同戦線を張る。
「ヘレン、とりあえず今回は敵の死角を突いていくぞ」
“了解です”
二人が会話をしている最中に、アモンから通信が入る。
「カイル、ヘレン、地上部隊が接近しているぞ! 早く手を打たないと取り返しが付かん!」
“はい!”
こうして、敵部隊に挑むこととなった。激しい電撃戦が繰り広げられ、連合国軍側は少しずつ不利な状況になっていく。
その中でヘレンは、ビームライフルで上手く敵を牽制していた。一方でカイルは、接近攻撃を果敢にも繰り出していく。
全く隙の無い攻撃に苦戦を強いられる連合国軍。
その後も連合国軍は暫しの間苦汁を舐めさせられた。
一方、ストライカー隊は別の基地入口にて銃撃戦を繰り広げていた。ルーガンとエリナは、上手く敵の攻撃を回避しながらヒットアンドアウェイの戦法で敵機を着実に撃墜していく。
「エリナ、そっちはどうだ?」
“私も順調です。この勢いで行けば勝利は間違いないでしょう”
「そうだといいんだがな」
ルーガンは傍観しつつ遠方から光線を撃っていく。
しかし、そこへと怪しい影が急接近。
「何だ、あの機体は……、まさかアイツか? あれが新型か?」
突如として現れたのは、イアン率いるバスター隊である。
彼らは今まで以上に訓練を積み重ね、より強靭的な戦士に成長していたのだ。
そしてバスター隊は、圧倒的な火力でルーガンとエリナを苦しめる。
「さぁ、落ちるが良い!」
イアンは両腕に装備されたビームキャノンでエリナを狙い撃った。
「キャアアッ!!」
“コンディションイエロー、警戒シテ下サイ”
彼女の機体の中で警告メッセージが鳴り響く。
これにより、エリナはますます焦燥に駆られ、このままでは勝てないという考えが脳内に漂い、少し腕が震えてくる。
“大丈夫か!? エリナ! 早くしないと取り返しのつかないことになるぞ”
「クローティス、リオ、来てくれたのね」
二人は急遽ルーガンに呼び出され、ここに合流したのだ。
“エリナ、その機体の傷……、誰にやられたの?”
肩に大きな傷が付いたエリナの機体を見て、リオは驚く。
「例の新型機に撃たれたの。でも、これくらいの傷だったら……」
“ならいいんだけど、気を付けないと落とされるわよ”
「分かったわ。私は後方支援に回るから、リオとクローティスは隊長と同行してくれれば……」
“了解! 任せておきなさい”
そして、リオはクローティスと共に遠方から襲い掛かるベティやアッシュと一戦交えることになる。
「俺の訓練の成果をここで見せてやる!」
クローティスはビームライフルをしっかりと構え、アッシュに被弾させることに成功する。
“何しやがる! コイツめ……、ビームバズーカなら太刀打ちできまい! 死ねェ!”
アッシュは背面にマウントされていたビームバズーカでクローティスに目掛けて光線を撃つ。
しかし、その攻撃はあっさりとクローティスの手によって回避されてしまう。
「俺がそんな攻撃を避けられないとでも思ったか? もう一発!」
さらにクローティスは素早く切り返す。そしてさらに、もう一発の光線が被弾し、アッシュの機体右腕部は使い物にならなくなり、撤収を余儀なくされる。
「よし、残りは……、もう一機増えやがった!」
スティーブが密かにベティと合流し、遠距離からスナイパーライフルでクローティスを狙撃。
「僕だって……、力になれるはずだ!」
突然の攻撃だったこともあり、クローティスはその光線を避けられず、機体左腕部を破壊される。
「しまった! はめられたか……」
「もう一発……、発射!」
さらにもう一発光線を喰らったクローティス。運悪く機体胸部にその攻撃を喰らってしまい、あまりの衝撃で彼は気絶し、機体は地上に落下してしまった。
“クローティス、応答して! クローティス!”
「どうしたんだ、リオ……」
“ルーガン隊長、クローティスが……”
「おい、冗談はよせ」
“レーダーに機体のシグナルは映っているので死んではいないようですが、連絡が取れません”
「そうか……。リオ、お前はクローティスの機体を基地の格納庫に戻してくれ。
俺は新型機の連れと戦う。いいな?」
ルーガンは切羽詰まった表情で話す。
“でも、それだと隊長が……”
「早くしないとクローティスが危険に晒される……」
“はい、分かりました”
そして、リオはクローティスの機体を回収し、格納庫へと戻した。
その後、リオが戻ってくるまでは僅かな戦力で戦わざるを得なかったルーガンだったが、幸い遠距離戦で粘ったこともあり、どうにかリオが帰ってくるまで時間稼ぎをすることに成功し、バスター隊の三人と再び戦力が互角な状態で戦えるようになった。
「私も……、絶対に戦い抜いてみせる!」
エリナは遠方からビームライフルでスティーブに攻撃を仕掛け、どうにか一発被弾させることに成功する。だが、スティーブは諦めていなかった。彼は今まで以上に辛抱強くなっていたのだ。
「僕は、何としてもアイツを落とす!」
スティーブは上手く狙いを定めてエリナに一発の光線を放つ。
「キャアァァッ!! そんな……、右腕が動かない……」
エリナは思わず泣き叫びたくなるような心情に陥る。
その後、エリナは撤収せざるを得なくなり、ルーガンに承諾を得てからその場を去った。
一方、リオはエリナが撤収したのを見て、スティーブに接近することを試みる。
しかしながら、スティーブのスナイパーライフルの威力は凄まじく、簡単には近づけない状況にあった。
「どうすればいいの……」
“リオ、ここは俺がやってやる”
「ルーガン隊長、分かりました。後は任せます」
リオはベティを相手にすることになり、ルーガンはイアンを相手にすると同時に、スティーブとも戦わなくてはならなくなった。
「よくもエリナをやってくれたな! 許さん!」
ルーガンは機体を戦闘機形態に変形し、スティーブに急接近。これを見たスティーブは錯乱し、上手く狙いを定める事が出来なくなる。
「これを喰らえェェッ!!」
素早い動作でスティーブの攻撃を回避しながら、ルーガンはビームキャノンを連射。
これによりスティーブは激しい攻撃を一身に受けたため、戦闘不能になる。
時を同じくして、リオはベティと接近戦を繰り広げていた。
ベティは軽やかな身のこなしでリオの斬撃を回避していく。
だが、リオはこの戦いなら勝てると確信していた。
「何て素早いの……。でも、こんな所で私は……!」
リオは隙を見つけてベティに勢いよく斬りかかる。
「来た!? そんな……!!」
ベティは思わず驚嘆し、咄嗟にシールドで防ぐ。
あと一歩遅ければ撃墜されていただろうと、ベティは心の中で思った。
だが、安心する暇もなくリオはさらに攻撃を繰り出していく。
「まだ負けるわけにはいかないのよ!!」
リオは機体右肩部に自らの剣の刃を突き刺す。
この攻撃でベティは早く逃げないと死ぬと察知し、そのままこの場を後にした。
「どうにかやり過ごせたわ……」
冷や汗を垂らすリオ。その後、リオはルーガンと共にイアンに挑む。
そして、ただでさえ激しい戦いはますます激化する。
ルーガンとリオを相手にしているにも関わらず、イアンは余裕の笑みを浮かべながら無双状態にあった。彼は十字砲火を潜り抜けながら、リオに斬りかかり、彼女を戦闘不能に追い込んだ。
「そんな……! 早く基地に帰還しないと」
そして、ルーガンとイアンの一騎打ちとなった。ここに来てルーガンは、接近戦をすべくビームソードを取り出した。それに応えるかのようにイアンも剣を構える。
「落ちろ!! これでトドメを刺してやる!」
「新型機が相手だろうと、俺は……、勝ってみせる!」
ルーガンが先制攻撃を仕掛け、勢いよく斬りかかった。
だが、彼の攻撃は空回りに終わり、イアンはルーガンの機体右腕部を切断し、さらにビームライフルで砲撃。これにより、ルーガンの機体は墜落。彼は死なずに済んだものの、戦闘不能となり味方のトレーラーに運ばれていった。
そして、イアンは味方の兵士と共に進軍を続ける。
ついにプログレッサー隊とアタッカー隊のいる方向へと近づくイアン。
その事に真っ先に気が付いたロバートは、カイル、フランク、ヘレンと共に急接近する。
また、アモン達は彼らを援護することになった。
“ロバート少佐、どうします?”
ヘレンは震えながらもどうにか冷静さを保とうとする。
「とりあえず俺が中心でヘレン達は俺を囲うようにY陣形で戦うぞ」
“了解です”
「何としても倒してやろう」
“はい!”
そして、四人はイアンのいる空域へと駆ける。
「どこからでも不足は無い! 来い!!」
イアンはロバート達を見て早々にビームキャノンを乱射した。
凄まじい攻撃故に、立ち竦みたくなるくらい心を押し潰されそうになるが、彼らは負けるわけにはいかないと言わんばかりに集中砲火を浴びせた。周りにいた連合国軍の機体は次々にやられていき、イアンは顔をしかめる。
「何ィ? コイツらめ、なかなかやるな。だが、これくらいで怯むとでも?」
圧倒的火力でねじ伏せていくプログレッサー隊。アタッカー隊も合流し、火力は増す一方である。
“ロバート! ここは俺達にもやらせてくれ”
「はい、アモン大佐」
アモンはひたすら機銃を撃ち続けた。そして彼の両サイドではラディムとエストル、ジェノスとマギーが猛攻を仕掛けている。イアンはこの攻撃を喰らい、機体に損傷を負う。
さらにロバートが、パワードキャノンを取り出し、イアンを殲滅しようと試みる。
「落ちろォ!!」
イアンは間一髪で攻撃を回避するも、機体右腕部が焼失してしまった。
これを受け、イアンは味方と共にその場から敗走していく。
こうして、今回の戦いは共和国軍の勝利に終わった。
戦いが終わり、ロバートはルーガンが救護室に運ばれたと聞いて、すぐさま駆け付けた。
「ルーガン、大丈夫か?」
ロバートは焦った表情で彼の元に駆け寄る。
さらに遅れて、ルーガン、カイル、ヘレンもこの場に来た。
「自分は……、大丈夫ですよ。ちょっと頭を打ってしまっただけで。明日には復帰できそうです」
「そうか……、良かった」
ロバートは胸を撫でおろした。
「ルーガン、心配かけやがって……」
「すまない、フランク……」
同期であるルーガンとフランクは、そのような会話をしてから、笑い合うのだった。




