第15話 謎の決戦兵器
9月4日、帝国軍内では秘密裏にとある決戦用兵器が開発されていた。その名も“ギガンデス”という。この兵器の使用目的などは、国の上層部と開発チーム以外には知らされていなかった。その中で、共和国軍と連合国軍はこの謎の決戦用兵器についてリークしようとしていた者もいたが、名称を知ることのみしか出来ず、使用目的やその実態については考察せざるを得なくなった。ある者は巨大メタルユニットであると、またある者は人型ではない巨大殺戮兵器であるのではないかと議論した。この様子は、帝国軍上層部にとってはいかに滑稽に見えたことだろうか。
「他国の政治家どもは、間抜けな議論をしていればいいから楽だな。それに比べ我が国の財政に関しては、関税問題で苦しんでいる上に領土問題は解決せず……。これじゃあ我がドラギウス帝国に真の平和は訪れんだろう。だからこそ、この兵器を開発する訳だ」
「でも、他に方法はあるはずでは……?」
長官補佐のヴィアスは食い下がった。
「無いのだ。だからこそ、我々はこの手段に出たのだ。ここまでの事をしなければ我が国はみるみるうちに滅亡の一途を辿る事になる」
「はぁ……。分かりました、バルマーン長官」
ヴィアスは彼の作戦に驚きながらも納得するような素振りを見せた。
一方、ロバートとルーガンは隊長同士で話をしていた。ルーガンは先輩であるロバートに、今後もリーダーとして引っ張っていくにはどうしたらいいか聞いていたのだ。
「ロバート大尉、自分はまだどうしても不安な事があって……」
「そうか。なら、俺がしっかり教えてやるよ」
ロバートは微笑みながらルーガンの事を見る。
「まず、リーダーとしてまとめていくんだったら、チームワークを乱さない。これが大事なことだと思うぜ。とりあえずこの事はカイル達にも言い聞かせているし、最も重要な事だ。次に必要なのは、リーダーとして示しがつかないような事はやらないようにな。例えば、自分は訓練をサボっているのに部下には訓練をしろと言うとか、そんな感じだ」
「なるほど……。でも、この程度の事は分かっています」
ルーガンはもっと高度な情報を教えて欲しそうにしていた。
「そうか。じゃあ、もっとやるのが難しそうな事を教えよう。例えば、作戦内容はまず自分が決めて、それから部下たちの意見があったら折り合いを付けながら内容を少しずつ変えていく事。あとは…、なるべく部下の表情をよく見るんだ。どういう考えをしているか見極めて、困っていそうだったら極力早い段階で相談に乗る事。それと、あんまりジロジロ見ていると部下から鬱陶しいとか思われるから、なるべく気を付けるように」
「他には…?」
さらに探求しようとする意欲を見せるルーガン。
これにロバートは困り果てていた。
「他か? もう俺がやってることは考えつかないな。あとは自分で見つけ出すんだ。それも自分のためになるはずだよ」
「分かりました……。今日はアドバイスをいただきありがとうございました。自分は大尉のような立派な隊長になるのが夢で……、これからは自分に出来ることは何かを自力で見つけ出していきます」
「ルーガンも随分と立派になったな。面構えがこの基地に配属されたばかりの時と明らかに違う。さぁ、これからも頑張ろうな」
ロバートはルーガンの肩を軽く叩いた。
「はい」
ロバートに激励されたルーガンは笑顔で頷き、その場を後にした。
一方、カイルはジャネットとちょっとした小競り合いをしていた。
「よぉし、俺が先にこの回路を組み立ててやるぜ!」
「アタシだって負けてはいられないよ!」
二人はメタルユニットに取り付ける回路をいかに正確かつ素早く組み立てられるかを競っていたのだ。
「カイル中尉達は何を競ってるんです?」
ヘレンはフランクに対し、不思議そうに問いかけた。
「あれは、回路をどっちが先に組み立て作業を終えられるか競っているみたいだな。この前から、カイル中尉はジャネットさんをライバル視してるみたいで……、二人とも同い年だって言うくらいだから尚更燃えているんだろうなぁ」
「なるほど……。ちょっと羨ましいです」
彼女はほのかに微笑んだ。
「なんでだ?」
「一緒に同じことで熱中できる相手がいるなんて、楽しそうじゃないですか」
「まぁ、そうかもしれないな。中尉も楽しそうにしているみたいだし」
部下の二人はせっせと回路の組み立て作業で競う二人の様子を眺めた。
「ここを、ここに繋げて……」
素早い動作で配線を繋げるカイル。
「これを……、こうして、っと」
ジャネットも彼に負けないほどの手腕であった。
基盤のはんだ付けなどもかなり丁寧に行いつつも、作業スピードはカイルに勝るとも劣らない。
「さぁ、後はここだけだな……」
そして、そのままカイルは仕上げの作業に取り掛かり、この競争は彼の勝利に終わった。
「あっ……、終わったみたいね。私の負けね」
ジャネットは彼に遅れて最後の配線を接続し終えた。
「今日は俺の勝ちだね」
「そうね……。でもアタシだって次は負けないからね」
二人は握手を交わすが、そこにバンが来た。
「ん? 二人ともまた回路組み立ての競争してたのか? お前らよォ、腕の見せ合いはいいけどよ、回路はお前らの玩具じゃないんだぞ。全く……、呆れたぜ」
「す、すみません、バンさん……」
彼らは思わず立ち竦みそうになる。
「お前ら、気を付けろよ……」
「分かりました……」
その様子を見て、フランクとヘレンはクスクスと笑っていた。
「おい、何がおかしいんだ!」
カイルは二人の事を叱る。
「だって、まるで親に叱られる子供みたいで」
「だからって、笑う事はないでしょうが!」
ジャネットも彼らに対して反論した。
「二人の言う通りかもな。滑稽に見えたんだろう。カイル、特にお前は部下に笑われたんだから、今度から行動を改めるようにな」
「はい……」
カイルはどこか不満気な表情であったものの、すぐさま納得する。
それから暫く時間が経ち、ファルスト連合国軍の機動部隊が共和国軍第4補給基地へと進軍を始めていることが発覚し、他の基地に配属されている部隊にも召集命令がかかった。
「第4補給基地って、確か守りが脆弱な所でしたよね……。復旧作業も完全には終わってはいないと言うし……、尚更心配です……」
「あぁ、確かにあそこの基地は守りが弱い……。ヘレンの気持ちも分からなくはないな」
ロバートとヘレンは第4補給基地の脆弱性を危惧していた。そのような思いを抱きつつ、彼らは出撃した。
第4補給基地に到着したロバート達は、早速敵部隊のいる大型ゲート付近へと向かった。
「よし、早いところ敵部隊を殲滅するぞ! ひとまずV陣形で固めて戦おう」
“了解!”
プログレッサー隊の四人は、すぐさま陣形を整えて一斉掃射を開始。無数の光線が飛び交う、凄まじい攻防戦となった。
「何て攻撃だ……」
ロバートは激しい攻撃故に思わず顔に冷や汗を垂らす。
“ロバート! 大丈夫か!?”
そこに、アモン率いるアタッカー隊が駆けつける。
「アモン大佐、来てくれたんですね」
“仲間なんだから、当たり前だろ? さぁ、ここは俺たちが加勢するぞ。エストル、ラディム、お前たちは俺達とは別の方向から攻撃を仕掛けろ”
“分かりました”
そして、エストルとラディムがそれぞれ率いる別働隊は空中の方へと向かっていった。
「よし……、このまま連合の連中を殲滅させてやる!」
エストルは空中で光線を乱れ撃つ。
「まだまだ俺たちは負けちゃあいられないな!」
また、ラディムは電光石火の勢いで敵機を手当たり次第に斬っていく。
“ロバート大尉、まだ遠方から攻撃を続けるべきでしょうか……”
フランクは焦り気味な表情で尋ねた。
「そうした方がいいだろう……。その方が避けやすい」
“分かりました”
その後も彼らはゲート付近で敵を迎え撃つのだった。
一方で、別方向の入口から攻撃をしていたストライカー隊は、空中で敵機動部隊を次々に撃墜していっていた。ルーガンはガルディスを戦闘機形態にして飛び回りながら光線を乱射。この猛攻が奏して、敵は次第にみるみるうちに減っていった。もはや今の彼は大鷲のように獰猛に見えた。
「ルーガン少尉、このままの勢いで敵を撤収に追い込んでみては?」
エリナは必死になって戦うルーガンに提案をする。
“分かった、でも、殲滅させた方が手っ取り早いぞ”
「そうですか。分かりました」
そして、エリナは一旦通信を切った。
「こいつら、どれだけ倒せばいいんだ?」
クローティスは緊迫しながらも、機銃を撃ち続ける。
“大丈夫よ、クローティス。私たちが圧倒的に有利なんだから”
「でもよぉ……、リオ」
“弱音は吐かないの”
「分かったよ、リオに言われちゃあ仕方ないな」
薄ら笑いを浮かべるクローティス。この言葉に勇気づけられたのか、彼の攻撃の勢いはさらに増していった。
“ルーガン隊長、自分が隊長の死角をフォローします”
「分かった。任せたぞ」
そして、ルーガンは機体を人型形態に変形させ、クローティスの乗る機体と背中合わせになる。
「さぁ、行くぞ! クローティス」
“はい”
二人はゆっくりと回りながら光線を撃ち放っていく。
雨のように降り注ぐ光線を喰らい、ここを襲っていた敵機はあっという間に全滅した。
「もうここには敵はいないみたいだな」
ルーガンは辺り一面を見渡す。そこはすっかり静まり返っていた。
しかし、そんな余韻に浸る間もなく、突如として通信が入る。
“ルーガン、援護頼む! 今、こっちはかなり危険な状態になっている。至急来てくれ!”
「分かりました! ロバート大尉」
そして、ストライカー隊はロバートのいるセンターゲートへと向かっていった。
一方、ところ変わってロバート達は今なお激戦を繰り広げていた。
「なんて激しい攻撃なんだ……。このままじゃ俺たちの命がいくらあっても足りねぇよ」
カイルは心が揺れ動く中、敵に攻撃を仕掛けていた。
「これだけの数の敵を倒すには、これしかない……」
ロバートはパワードキャノンを構える。遠方のターゲット付近に味方機はいないか確かめ、その後すぐに引き金を引いた。
「これで決める! 喰らえェェッ!!」
巨大な稲妻にも似た光線によって、敵機の半分近くが消し飛んだ。
しかし、それでもまだ残った敵部隊は怯むことなく攻撃を続けていく。
その中で、イアン率いるバスター隊が到着。彼らの逆襲が始まった。
「我々がどうにかして、この軍勢を倒さなくてはならないみたいだな……。行くぞ!」
“了解!”
バスター隊は、集まってきた敵部隊を次々と撃ち落としていった。
「ここは自分が……」
スティーブはイアンを守るかのように、イアンの方へと突撃してくる敵機を遠方から撃墜。
「何て奴だ……。このォ!」
フランクはレーダーでスティーブのいる位置座標を確認し、狙い撃つ。
「無駄だよ……。射撃で僕にかなうとでも?」
しかし、攻撃は避けられ、すぐさまスティーブは反撃に出る。
「何!? ウワァァッ!」
咄嗟にシールドで攻撃を防ぐフランクだったが、攻撃の威力故に後方に吹き飛ぶ。
そしてフランクは倒れ込み、隙だらけとなる。
「何という事だ……」
「これで終わりみたいだね……」
スティーブがフランクにトドメを刺そうとしたその時であった。一機の銀色のメタルユニットがスティーブに攻撃を仕掛けたのだ。
“ルーガン! お前……”
「大丈夫か、フランク。ここは俺に任せてくれ」
“わ、分かった……”
ルーガンはそのまま二門のビームキャノンから白銀色の光線を放った。
この攻撃により、スティーブは反撃不能となったため、撤収を余儀なくされた。
「ありがとう、ルーガン……。助かったよ」
“礼はいらないよ。さぁ、早くロバート大尉を助けよう”
「分かった」
二人は、イアンと戦うロバート達の方へと向かった。
ロバートとイアンは、壮絶な戦いを繰り広げていた。ロバートが今までより苦戦しているのには理由があった。それは、イアンののるアゾムが大幅にチューンアップされており、出力、機動性ともに約二倍となっていたことがその最大の理由である。
「こいつ、連合のエースパイロットか……?」
そして、余裕に満ちていたイアンは通信チューナーの周波数を共和国軍のものに合わせ、目の前にいたロバートの顔を見ようとした。
“お前がロードブレイダーMk-Ⅱのパイロットか……。俺はイアン・ナスティーだ”
「何だ急に!?」
“お前の名を名乗れ”
「わ、分かった。俺はロバート・ライアンだ」
ロバートは僅かに身震いしながら話す。
“ロバートよ、お前は何のために戦う?”
イアンは、ロバートに対して戦いながらこの問いに答えるよう強いる。
「俺は、平和な世界を取り戻して、誰もが安心して暮らせる……、そんな世界を創るために戦っている」
“ふん……、そんな子供じみた理由で戦うとは愚かな”
「何をッ!!」
“俺は、木星全土をファルストの領土にするために戦っているのさ”
「何だって……。そんなこと、させてたまるか!!」
ロバートはビームソードでイアンに斬りかかった。
“フッ……、結局は自分のためか”
「違う! そんなことは無い!」
“何!?”
「お前は国に騙されている! いや、洗脳されているといった方が正しいかな。これ以上自分の意思を潰すような行為をしたら、お前はお前で無くなる……!」
それを聞き、イアンは思わず立ち止まり、その間にロバートはイアンの機体右腕部を切断した。これに目を覚ましたイアンは、自信が不利になっていると察し、そのまま部下と共にその場を去る。
そして、それから間もなく連合国軍は撤収し、共和国軍の勝利となった。
戦いが終わり、連合国軍では可変メタルユニットの開発が行われていたが、この新型機が作られている様子をイアン達はただ眺める。
「この機体が、我が国の命運を握っていると思うと感慨深いな……」
「そうですね、イアン少佐」
ベティは戦いに疲れ果てた顔でその様子を見ていた。果たして、この新型機はこの木星国家間戦争をどう動かすのだろうか。




