第14話 ガルディス出撃命令
8月24日、ジュピトリア共和国軍第1前線基地にて、ついに新型可変メタルユニット“ガルディス”が完成し、この機体はストライカー隊のルーガン・ライジェスに譲られることとなる。
そして、第4前線基地に運ばれてルーガンもそれを初めて見るガルディスの姿に驚いていた。
「これが新型機の……」
「ガルディスだ! こいつはな、変形機構はロードブレイダーMk-Ⅱよりも簡略化されているから扱いやすくなっているんだ。初めてこいつを操縦するお前でも安心という訳さ」
バンは楽しそうにガルディスについての解説を終えると、ルーガンに一冊の本を渡す。
「これをお前にやろう。これはガルディスの操縦マニュアルだ。エースパイロットのお前なら、すぐに扱いに慣れるだろうな。期待してるぜ!」
「ありがとうございます」
ルーガンはバンに対して敬礼をした。彼は機体を上手く扱えるか不安な面もあったものの、自分ならきっと出来ると胸の中で言い聞かせる。
それから一時間ほど経ってから、ルーガンはにこやかな表情で部下たちのいるミーティングルームに向かう。しかし、そこにはエリナしかいなかった。
「あっ、エリナ。クローティスとリオはどうしたんだ?」
「二人なら、先程トイレに行きましたよ。すぐに帰ってくると思います」
「そうか……」
ルーガンはマニュアルをテーブルに置いてから、椅子に座る。
「あの、そのマニュアルはどうしたんですか…?」
エリナはルーガンの持ってきたマニュアルを不思議そうに見つめる。
「あぁ、これか。これはな、俺が新たに乗る可変機の説明書みたいなもんでな……。後でじっくり時間をかけて読むことにするよ」
「そうですか。もしかして、少尉が昨日言っていたのは……」
「そう、これのこと。俺が乗る可変機の名前はガルディスといってな……。扱いやすいらしいし、一安心したよ。ロバート大尉が乗っているMk-Ⅱみたいに特殊な機体じゃなくて……」
ルーガンは穏やかな表情で胸を撫でおろしている。
「なら良かったですね」
二人が話しているうちに、クローティスとリオがトイレから戻ってきた。
「ルーガン隊長……、遅れてすみません」
「まだ隊長がいないからトイレに行ってもいいかと思って…、申し訳ありません……」
「あぁ、いいんだ。気にしないでくれ。それと、今回お前達に話しておきたいことがある。
といっても、エリナにはもう話してしまったがな…」
「何ですか?」
二人はルーガンの顔をまじまじと見つめる。
「このたび俺は、新型可変機のガルディスという機体を譲り受けることになったんだ。扱うのにはすぐ慣れるとバンさんも言ってたし、その辺については大丈夫だと思うがな」
「あぁ、そうでしたか。慣れるまで頑張って下さい。自分も応援してます」
「私もです。ひとまず、このマニュアルをよく読んでから操縦する……、といった形なんですかね」
「そうだよ。まぁ、努力すればどうにかなるだろう」
ルーガンはその後、訓練の方針などについて話し、今後何をすべきか全員で考えたのだった。
一方、ロバート達は射撃訓練に打ち込んでいた。
彼らは今まで以上に腕を磨き、命中精度も90パーセント以上という凄まじい成績を誇っていた。
それを見ていた上司のアモン達は彼らの実力に驚いていた。
「おいロバート! 凄いじゃないか! 命中率92パーセントだなんて……。俺の全盛期でもここまでは出来なかったぜ」
「アモン大佐、お褒めの言葉をありがとうございます」
ロバートはアモンに対し敬礼をした。
「お前なら、この国家間戦争を終わらせられるかもしれないな。何があっても負けるなよ、ロバート!」
「はい」
アモンに激励され、心の内で感嘆するロバート。彼は必ず戦争を終わらせて平和な世を創っていく事を胸の内で誓った。
それから数時間後、帝国軍の機動部隊が共和国軍第3前線基地へと接近していることが発覚した。これにより、その基地にいる部隊だけでなく、第4前線基地の部隊も召集されることとなる。
ルーガンはまだ、ガルディスのテスト運用をしたばかりであった。その最中に巻き起こった戦いで、どちらが勝つのか。
「サロア中尉、今までの特訓の成果を今回の戦いで見せてやりましょう!」
“うむ……、だがロレントよ、あまり熱くなるなよ”
「はい……。確かに、一人で熱くなるより集団で冷静になって行動をした方がいいですからね」
ロレントは改まった表情で操縦桿に力を込め、ゆっくり握った。
“よく分かっているじゃないか。なら尚更だ”
サロアはすっかり満足げな表情である。彼らの思惑通りに事を運ぶ事は出来るのか。
一方、共和国軍第3前線基地の部隊は帝国軍が仲間同士での連絡を取れなくするために、電波障害発生装置を設置していた。突然の敵襲に驚きながらも、彼らは淡々とその作業を行っていた。
「さて……、大体こんなもんか……。さぁ、もうすぐ敵が接近してくるに違いない。攻撃準備はいいな?」
“もちろんですとも”
「ならよろしい! 行くぞ……」
こうして、戦いは幕を開けた。果たしてどうなるのか。
プログレッサー隊とストライカー隊は上空で、アタッカー隊は地上で敵部隊を待ち構えていた。
「アモン大佐、敵が来ました!」
“分かった、ラディム! では行くか……”
アタッカー隊は、真っ先に機銃を構えてすぐさま集中砲火を開始した。
「よし、このまま一気に……、ん!?」
帝国軍機動部隊間で、通信障害が発生。共和国軍の目論見通りである。
しかし、彼らはそんなことに挫ける事は無かった。
「行けェ! ガジェットが使えなくても関係ない! レーダーを頼りに使えば出来なくは無い!」
帝国軍は混乱しながらも攻撃を続ける。
「よし、チームワークが乱れてきた所で……、バズーカ発射だ!」
アモン達は敵に集中砲火を浴びせ、矢継ぎ早に撃墜していった。
機体は次々に爆発四散していき、紅い血のような炎の花を咲かせた。
時を同じくして、ロバート達は空中で敵に光線を浴びせて撃破していた。
「敵の隙につけこんで狙っていくぞ、皆!!」
“はい、ロバート大尉!”
「何としても、これ以上味方を死なせるわけにはいかない……! 行くぞ!」
彼らは上手く敵の死角を見極めた上で攻撃を仕掛けていく。彼らの作戦通りに順調に敵部隊は次々に敗れていった。
「さてと……、敵が増えてきたな。パワードキャノンを使うか……」
ロバートは味方が遠方にいないか確認してから、パワードキャノンから稲妻のような光線を放った。
「しまったッ、うわあァァァッ!!」
遠方にいた敵機動部隊はいとも容易く崩れ去っていった。
この攻撃に帝国軍の兵士達は恐れるものの、そう簡単に全滅という訳にはいかないと反抗する。
「早くしなければやられる……。気を付けろ!」
“了解!”
無数の光線が飛び交う中、共和国軍の空戦部隊は少しずつ撃墜されていく。これにロバートは見かねて、猛反撃を仕掛けた。
「こいつらァ! これでどうだッ!?」
ロバートはビームキャノンを連射し、敵機を的確に狙っては撃っていった。
しかし、そこにサロア率いるレイダー隊が接近してきた。
“ロバート大尉、ここは俺がフォローします”
「分かった、カイル」
カイルは機銃を使い、サロアに先制攻撃を仕掛けるものの回避されてしまう。
「避けられたか……。この機体のパイロットは今までよりも成長している。気を付けろよ」
“分かりました”
「俺も戦うしかないみたいだな……」
ロバートは真剣な表情で操縦桿を握る。冷や汗握るこの戦いに、ロバートも加わった。
「よし、こっちが接近戦なら俺も……!」
二本のビームソードを取り出し、接近して攻撃を仕掛けていくロバート。彼は自分の剣をサロアの方へと振りかざす。
「喰らえェェッ!!」
サロアは以前よりも俊敏な動きが可能になっていた。その上、彼は敵に対しての観察眼も鋭くなっているのだ。特訓によって強化された彼を相手に、ロバートはどう対処すべきか悩むが、そんな暇はないと察し、まずは行動に移すことを優先した。
「ふっ……、特訓を重ねに重ねた俺からすれば、Mk-Ⅱなど敵じゃない。死ねッ!」
「来たか……。ミサイル発射!」
「何をッ!」
ロバートはショルダーミサイルを発射するも、サロアはそれをビームクローで薙ぎ払う。
「しまった……!」
「よくもロバート大尉をッ!!」
カイルはビームライフルで攻撃を仕掛けるが、それすらも回避され、もはや成す術無しと思われた。その時であった。一筋の光線がサロアを襲う。
「何だッ!? 今のは……」
そこにいたのは、ガルディスを駆るルーガンである。
“ルーガン! 来てくれたのか”
「ロバート大尉! 今度は僕たちが大尉を助ける番ですよ。クローティス、エリナ、リオ、行くぞ!」
“了解!”
エリナたち三人は、サロアを包囲して光線を放つ。
「さーて、一発ドカンといきますか!」
“私たちの実力見せてやりましょうよ”
リオはすっかり自慢げな表情である。
“早いところ片付けましょう”
エリナは早々に切り上げようと思っていた。
そして、この三人の攻撃を喰らい、サロアは機体を戦闘機形態に変形させてその場から脱出した。
「逃げられるなんて……」
エリナの腕は震えた。これに対抗したのはルーガンである。
ルーガンはビームキャノンを両手に握って光線を撃っていった。
「何ィッ!? こいつめ……!」
サロアが苦戦している様子を見計らい、ミルドレッド、ジャン、ロレントの三人はクローティス達に攻撃を仕掛けていく。これに苦戦するクローティス達だったが、そこにヘレンとフランクが駆け付け、形勢は逆転し始める。
「三人共、ここは自分らが加勢する!」
“フランク少尉、ありがとうございます!”
クローティスはその嬉しさ故に笑みがこぼれた。
「接近攻撃で行くか……。よし、全員で斬りかかるぞ!」
“了解!”
フランク達五人は、サロア以外のレイダー隊のメンバーに向けて斬撃。
「喰らえェェッ!!」
この攻撃により、ミルドレッド達は反撃不能になる程の損傷を負い、撤収を余儀なくされた。
その一方で、ロバートとルーガンはサロアを相手に激しい戦いを繰り広げていた。
「何てしぶとい奴なんだ……。このままではやられる」
“大尉、ここは焦らず冷静に行きましょう…”
「あぁ……、分かった」
二人は遠距離戦でサロアを牽制していた。空中を飛び回りながら乱れ撃つ光線は流星に似ていた。
「おのれ……、どこまでも追ってくるとは! これでは埒が明かん! 接近戦でケジメを着けてやる」
サロアは再び人型形態に変形し、接近戦を仕掛けていく。
「落ちろ、落ちろォォッ!!」
ビームクローを展開し、素早い動作で二人に斬りかかっていく。
「このまま挟撃するぞ、ルーガン!」
“分かりました、では行きましょうか……”
そして、二人の猛反撃が始まった。前後に敵がいる状態でどちらに攻撃すべきか悩んだサロアは、ロバートに斬りかかった。
「死ねェ!!」
「させるかァ!!」
ロバートは、ビームソードでサロアの斬撃を防いだ。そして、その間にルーガンがビームキャノンで攻撃し、バドラスに大きな傷を負わせた。
“コンディションレッド、コンディションレッド、撤収シテクダサイ”
「くッ……、仕方ない、ここを抜けるか……」
そのままサロアは戦闘機形態に変形し、その場から去っていった。
それから暫く経たない内に戦闘は終わり、今回も共和国軍の勝利に終わる。
戦闘が終わり、ロバートとルーガンは談話室で話をしていた。
「しかし、今回の戦いはルーガンがいなかったら死んでいたかもしれない……。ありがとう、ルーガン」
「いやぁ、そう言われると嬉しいですね……」
ルーガンは微笑みながら話す。
「これからも何かあったらよろしく頼むぞ」
「はい」
初めてガルディスに乗り戦った初陣では勝利を収めたルーガン。果たして、これからどんな敵、どんな戦いが待ち受けているのか。




