第11話 突然の敵襲 スプリンター隊再び!
8月1日、ファルスト連合国軍の兵士達は、ドラギウス帝国軍が可変MUを完成させたことに焦りを感じていた。
この状況に誰よりも焦りを感じていたのは、長官のライエル・ボルディーである。
彼は他の二か国に遅れを取ってしまったことに後悔しており、MU開発チームに早急に試作型可変MU用フレームを造るように命じた。
「ライエル長官、汗を掻いておりますが……。やはり例の件について……」
「そうに決まっておるだろう。まさかジュピトリアどころか、ドラギウスにまで先を越されるとは思ってもいなかった。静観しすぎていたのかもしれんな」
ライエルは目を閉じた状態で悩んでいたのだ。
「このままでは、我が軍は……」
「分かっている! それぐらいの事など……」
強く拳を握り、悔しさをこらえたライエル。
彼は国のさらなる繫栄のため、いや、戦争終結を迎えて平和な世を創るためにより努力する事を決意した。
一方、共和国軍では総合演習が行われていた。
実際に兵器を用いた本格的なものであり、ロバート達はそれに汗を流しながら励む。
「さぁ、敵襲だ! ヘレンとフランクは後方から援護射撃を、俺とカイルは最前線で近距離戦を仕掛けていくつもりでいる。このまま一気に行くぞ」
“了解です”
「たかが演習といえど、油断するなよ」
“もちろんですとも”
フランクは冷静な表情で頷いた。彼は冷淡な表情で機銃をゆっくりと構える。
「もうすぐ第一防衛ラインに入る。陣形用意!」
“了解!”
プログレッサー隊の四人は自らの定められたポジションに就く。
「クローティス、エリナ、リオ、お前たちは俺の後に続くんだ! 集中砲火を仕掛けてAI部隊を殲滅するぞ。陣形は横一文字だ。分かったら、至急スタンバイだ!」
“分かりました”
ストライカー隊も同様に、演習に熱中していた。
彼らは特に、プログレッサー隊のような大きな手柄を挙げられるようにすべく、以前から今まで以上に訓練に必死になって取り組んでいたのだ。
誰よりも強い意志を持ちながら敵に立ち向かっていく。
「あれは、プログレッサー隊だ……。俺たちも負けちゃあいられないな! ルーガン隊長、何としても敵を殲滅しましょう!」
“オーケーだ”
クローティスは群がる敵を機銃で次々に殲滅していく。
その時の爆発四散した敵機は血のように真っ赤な花を咲かせていた。
「おぉ、派手にやってるなぁ」
ロバートはクローティスの活躍を見つつ、自らの剣で敵機を真っ二つに斬り裂く。
“大尉、この調子で敵機を片付けていきましょう”
「あぁ、そうなれば本望だがな」
ヘレンの言葉を聞きつつ、敵陣の中で剣を振り回すロバート。
彼は単に無我夢中になって戦っている訳ではないという事が見て取れる。
「カイル、そっちはどうだ?」
“こっちは順調ですよ! 今倒したやつで10機目です”
元気そうに微笑むカイル。かなり余裕があるように見える。
「フランク、お前は今どこだ?」
“今はヘレンとエネルギータンク地帯を真っ直ぐ突き抜けた先の所にいます。ひとまず今回の演習は十分な結果を残せますね”
「そうか。つまりもうすぐ合流できる訳か。俺たちはお前たちがいる目と鼻の先にいるぞ」
“なるほど。なら安心ですね”
フランクは少しではあるものの安堵した。
「今は残り少ない敵をストライカー隊と共に片付けている最中だ。来れるなら手伝ってくれよ」
“はい!”
そのようなやり取りをした後、フランクとヘレンはすぐに合流。
これにより、戦況はますます良くなる。
「そこだッ!」
フランクは鋭い目つきをして、ビームライフルで敵を狙い撃ち、撃墜した。
「これでラストだな!」
ロバートは敵を横一文字に斬り裂いて撃破。
これにより、総合演習は終了となった。
総合演習を終えて、ロバート達はすっかり余裕な顔つきになっている。
とはいっても、彼らは調子に乗り過ぎないように気を付けており、今回の結果を誰にも自慢することなどは無かった。
そんなロバート達に若き兵士達は憧憬していた。
「ロバート大尉、今回も前線で活躍していたようですが……」
ルーガンはロバートと目を合わせる。
「あぁ、そうだよ」
「はい…」
「これからの活躍に期待してるぞ。一緒に戦争終結まで戦い抜いていこう」
ロバートは手を差し出し、彼と握手をした。
「これからもよろしく」
「はい!」
その後、ルーガンは嬉しそうにその場から去っていった。
ロバートは満足げな気分で彼に対して微笑んだ。
「隊長は人気者ですなぁ」
「カイル、からかうのはやめてくれ……」
「だって本当の事じゃないですか。まぁ、問題は演習の時のように、実戦でも上手くいくかどうか……。それが問題ですよ」
「確かにそうだな」
ロバートは興味深そうに俯く。
その後、二人は昼食を食べに食堂に向かったという。
一方で、ファルスト連合国軍のスプリンター隊達は秘密裏に共和国軍第4前線基地へと進軍を開始していた。
彼女たちは既に綿密な計画を練っており、最早完璧ではないかと自分で鼻高々に言えるほどであった。
「いよいよね……。何としても成功させるわよ!」
マリーは不敵に笑みを浮かべている。
「ここには憎きロードブレイダーMk-Ⅱがいますからね。何としても撃墜して共和国の軍勢を弱体化させてみせましょう……」
キャロルはすっかり覚悟が出来ているようであった。
彼女は以前よりも自信が身に付いているように見える。
そして、敵襲を察知した共和国軍第4前線基地の部隊は、戦闘態勢に入る。
「さて、ここが腕の見せ所か……」
ルーガンは機銃を構えて、前方から撃って来る部隊と対峙する。
「クローティス、リオ、エリナ、早いところあいつらを仕留めるぞ!」
“了解!”
四人は半月状の陣形で掃射を開始した。
放たれる無数の光線は、連合国軍のMUを次々に沈めていった。
破竹の勢いで敵を破っていく様子はまるで鬼神のようである。
一方で、ロバート達は他の空戦部隊と共に空中戦を行っており、群がっていた敵を次々に斬り裂いく。
しかしその様子を、地上からスプリンター隊が窺っていた。
「アイツは私に任せて下さい」
“分かったわ、ライナ”
ライナは対空ビーム砲を構えて稲妻のような光線を撃った。
「何事だ? まさか地上から撃って来てる奴がいるのか?」
“そうみたいですね、カイル中尉”
カイルとフランクはロバートの了承を受けてから低空飛行を開始し、スプリンター隊に攻撃を仕掛ける。
「チッ、来たわね……」
マリーは苛立ちながらも力強く操縦桿を握りしめた。
「このォ! 落ちやがれ!」
カイルは機銃を撃ちながら、地上近くを滑空する。
「何さ……。これ以上私たちの邪魔をしないで!」
リノはビームライフルで狙い撃とうとするも、カイルはひらりとその攻撃を回避する。
「これがさっき使ってた奴か……。コイツゥ!」
カイルの手により、対空ビーム砲はあっという間に破壊された。
これにライナは黙っているはずがなく、彼女は反撃に出た。
「やらせないわ!」
ライナはビームソードで勢いよく斬りかかった。
カイルは咄嗟に盾で攻撃を防ぐ。
そして彼はどうにか再び間合いを取って中距離戦を行うことにした。
「何て奴だ! なかなか勇猛果敢な敵じゃないか……。でも、俺は負けたりはしない!」
彼の渾身の一撃がライナに直撃し、彼女は戦闘が困難となった。
これにより、ライナは撤収せざるを得ない状況となる。
その一方でフランクはリノと対峙し、どちらも一歩も譲らない状態となっていた。
「クッ、しぶとい……。このままやられたら……、いけない!」
フランクは二本のビームソードを握りしめてリノに急接近した。
「来たね……。でも私がここで怯むとでも!?」
リノは果敢にも激しい接近戦を行う。
互いの剣の刃が幾度となくぶつかり合うが、戦いの終わりは見えない。
「ならば格闘戦で!」
フランクは隙を突いてリノの機体に蹴りを入れた。
この攻撃でリノは思わず剣を手放してしまった。
「しまったッ!!」
「よし、そこだ!」
フランクは機体を斬り裂いたものの、リノはその前に脱出ポッドを使って機体から出ていき、彼女は難を逃れた。
時を同じくして、ロバートとヘレンは地上から来たマリーとキャロルを相手に一戦交えていた。
さらにそこへとストライカー隊が加勢し、戦況は好転するかに見えた。
しかし、マリー達も負けじと援軍要請を行い、凄まじい戦いを繰り広げた。
「やはりMk-Ⅱは私の思うようにさせてはくれないようね……。なら、このビームキャノンで!」
マリーは肩に装備されたビームキャノンを使って光線を撃ち放っていった。
「隊長機が動き始めたみたいね……。ルーガン隊長、早いところあの隊長機を撃墜しないと…」
“もちろんわかってるさ。これぐらいの事……”
ルーガンとリオは真っ先にマリーに目掛けて光線を放っていった。
しかし、それを庇うかのようにキャロルが前に出て攻撃を防いだ。
「マリー隊長を倒させはしませんよ……」
“キャロル……、無理はしないようにね”
「えぇ、分かりました」
キャロルはビームライフルを連射しながらルーガンとリオを牽制し、挟み撃ちにしようと試みる。
「私達を追い込むの気なのでしょうか……? なら……」
“よし、こいつで仕留めるか”
二人はビームライフルを構えて、光線を放った。
「ウゥッ、何て強さなの……。このままでは持たない……」
マリーとキャロルは盾が破壊されたため、長期戦は困難になったと察する。
さらにそこへとロバートやヘレンも敵を片付け終わって、マリー達を援護し始める。
「よし……、パワードキャノンだ!」
これに危機を察したマリーとキャロルは紙一重で回避するものの、残りの連合国軍側の機体は撃破された。
そこにキャロルが動き出した。
「私はまだ……、諦めません!」
キャロルはビームライフルの弾が切れたのを確認し、近距離戦を行うことを余儀なくされた。
しかし彼女は負けじとビームソードで素早く斬りかかる。
「来た! 私は負けたりなんかしないわ……。必ずな!」
ヘレンはビームソードを取り出す。
そこから彼女は鬼神の如き攻撃を繰り広げる。
「てやあぁぁぁッ!!」
「なんてこと……」
キャロルは右腕を切断されてから、そのまま敗走した。
一方、ロバートはマリーと一戦交えていた。マリーはこの戦場で自身の闘志を燃やしている。
彼女の攻撃はいつになく凄まじく、流石のロバートもこれには苦戦していた。
「喰らいなさい!」
マリーは果敢にも機銃で光線を連射した。
「うわぁぁッ!!」
ロバートは何とか防ぐも、その攻撃の反動で後方に倒れる。
「まだ逃げないつもり? 馬鹿ね。死になさい!」
彼女がビームライフルで狙い撃とうとした矢先である。彼の反撃が始まったのは。
「ミサイル発射!」
ロバートは咄嗟にショルダーミサイルを放つ。
これを喰らったマリーは、大きな痛手を負う。
「まだまだァ! 喰らえ!」
さらに、彼はビームソードで彼女の機体右腕部を切断する。
「そんな……。くッ……、ここまでのようね」
そして、マリーはそのまま撤収した。
数分後に連合国軍は完全撤収し、共和国軍の勝利に終わった。
戦闘が終わり、共和国軍の兵士達は安堵していたものの、まだ油断は許されない状況下にある。
今後、いかなる戦いが起こるのか。
それは、神のみぞ知る。




