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第13機動部隊 プログレッサー  作者: 藤沢マサト
第一章 終わりの見えぬ戦い
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第9話 死の空中戦 バドラス奇襲

 7月14日、ドラギウス帝国軍にて開発されていた可変メタルユニットが、予定よりも遅れたもののついに完成した。その名も“バドラス”。

 この機体は、両腕に格闘戦用のビームクローや遠距離戦用のビームキャノンを二門搭載している。

 また、機動性に関してもロードブレイダーMk-Ⅱと負けず劣らずの性能である。

 そして、この機体を授かったのはレイダー隊のサロアである。


「サロア中尉、こちらが新型機のバドラスです。性能に関しては我が軍のグライズはおろか、スケイラス以上の性能を誇っています。これさえあれば、我が軍の勝利への道は確固たるものとなるでしょう」


 ボギーは、自慢げな表情で話す。


「そうか……。ところで、ボギー」

「何でありますか?」

「この機体は可変機だと言っていたな。当然ながらあの共和国軍のロードブレイダーMk-Ⅱより性能は上だろうな?」

「勿論でございます。何しろこの機体はあの憎きMk-Ⅱのデータを分析した上で開発したのですからね……」

「ほう……、ならば尚更勝てる気がして来たな」


 ついに完成したドラギウス帝国軍の可変機・バドラス。

 この機体がどれほどの戦果を挙げるのか。

 それはサロアの手腕にかかっている。



 一方、ロバートとフランクはフェンシング訓練に汗を流していた。


「大尉の動きが……、目に見えて早くなっている……。これは勝てるのか……?」


 フランクは訓練の最中、思わず焦燥に駆られる。


「よしッ、そこだッ!!」


 その時、ロバートの素早い攻撃がフランクの胴体に当たる。


「ロバートに1ポイント与えよう。なかなかやるな」


 訓練官は彼の実力に驚いていた。

 何しろ、今までこれほどの技量の持ち主は彼以外にいなかったからである。

 しかし、フランクも負けてはいなかった。


「俺だって、大尉に負けちゃいられない……! ここだッ、たァッ!!」


 フランクの突いた剣の刃が、ロバートの頭に当たった。


「ウワァッ! 凄い勢いだったぜ、フランク……」


 ロバートはその攻撃の勢い故に倒れ込むも、すぐさま立ち上がった。


「フランクに1ポイント。お前もかなり成長したな。この隊に入った頃は攻撃を当てられなかったというのに……。大したもんだよ」

「ありがとうございます、バロン教官……」


 その後も訓練は続き、結果はロバートが5ポイント、フランクが4ポイントと、かなりの接戦であったもののロバートの勝利に終わった。


「訓練は終了だ。よく頑張った」

「どうもありがとうございました。バロン教官」


 二人は、そのまま談話室へと向かった。



 談話室で二人は、これからの戦いに向けてどうすべきかお互いに語り合った。


「これから……、自分はどうすれば……」

「大丈夫さ、フランク。今のお前なら戦争終結まで戦い抜けるさ」


 ロバートは穏やかな表情で彼を安堵させようとする。


「でも……、まだ自分は詰めの甘い所もありますし……」

「確かにそうかもしれないが、そういう風にしっかり自分と向き合えるのは良いと思うぞ。まぁ、まだ伸びしろはある。頑張って行こうじゃあないか」


 微笑みながら頷くロバート。

 彼はフランクの良い所を見つけて、不安にさせないように心がけていた。


「はい……、やれることはやってみます」


 フランクは少しではあるものの、熱意を取り戻したのであった。


「その意気だ! 一緒に頑張ろうな」

「分かりました」


 そして、彼らはヘレンやカイルのいるミーティングルームへと向かった。



 二人がミーティングルームへ来ると、そこにはヘレンやカイルがいた。


「よぉ、カイル、それにロバート大尉!」


 カイルは明るい表情で手を振った。


「ロバート大尉、フランク少尉、お疲れ様です……」


 ヘレンは静かに微笑む。


「こちらこそお疲れ。それにしても、今日は疲れたよ」

「大尉、眠たそうな顔をしていますね……。あまり無理しない方がいいのでは?」

「大丈夫、心配は無用さ」


 ロバートは全くかったるそうな表情を見せていなかった。


「フランク、さっきの訓練の時は見てて驚いたぜ! お前、とんでもない速さで大尉に攻撃してたよな。入隊した頃より遥かに成長したんじゃないか?」

「そうですかね……」

「おいおい、謙虚になるなって! 本当の事言ってるんだからよぉ」


 カイルは、フランクを無邪気な表情でからかう。


「カイルの言う通りだ。お前も立派になったよな。ついこの前までは俺たちについていくのがやっとだったのにさ。ヘレンもそうだけど……」


 ロバートは過去の二人の事を回顧しながら優しく笑う。


「このプログレッサー隊が編成されたのは、2年前だったかな……。俺は最初、隊長として部下に上手く指示できるか心配だったな……。それで、初めてカイルと会ったときは気軽に話しかけてくれてたっけ。フランクとヘレンは、俺と初めて会ったときは緊張してたよな」

「えぇ、そうでしたか? 私はそんなことなかったような……」


 ヘレンは不満そうに顔をしかめる。


「忘れているだけさ。緊張してて頭が真っ白になってたんじゃないか? 俺も入隊したての頃はそうだったよ」

「自分は、初めて大尉と会ったときは心が熱くなってしまったあまりにそのような事になったのだと思います……」


 フランクは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてハンカチで汗を拭く。


「まぁ、最初は誰だって初めて会った人にはドキドキするもんよ。実際俺だって、大尉と会った時はこの人がロバート・ライアン大尉か……、なんて思いつつ話したしな。あぁ、あの時はまだ中尉でしたか」


 カイルは飄々とした顔つきで初めて会った時の事を話した。


「ともかく、人間誰しも初心忘るべからず。この言葉を大事にして今後も頑張ろう」

「了解」


 四人は楽しそうに会話をするが、ロバートはふとあることを思い出した。


「あっ、そういえばこの前ロジオン長官からある命令が出ていたな……。そのためにミーティングルームにお前たちを集めたんだった……。もっと早く話すべきだったな」

「ある命令……、といいますと?」


 フランクは、不思議そうな表情でロバートを見つめる。


「ドラギウス帝国軍第4前線基地への襲撃作戦を行うように命令が出たんだ。以前、同国の第5前線基地を襲撃した際に、そこでは新型機が開発されていたと言ってただろう。その新型機の開発が今回のターゲットとなる基地に移行したようでな……。それで、ロジオン長官がそこへと攻撃を仕掛けて貰いたいと指示を出したんだ」

「なるほど……。それと、今回は我々だけで作戦を行うのですか?」


 フランクは不安そうな表情で尋ねる。


「大丈夫だ。今回はアタッカー隊やストライカー隊も作戦に同行する」

「そうですか。アモン大佐がいるとなると、安心ですね」


 先程とは一転、フランクは安心して口元が綻ぶ。


「フランク、いくらアモン大佐達がいるからといって油断はするなよ」

「はい」

「作戦会議についてだが……、今回俺達はストライカー隊と空中戦主体で作戦を行うんでな……。とりあえず陣形とかについても考えておくか。ひとまず横一文字の状態で一斉掃射しながら接近して状況次第で接近戦に移行するか中距離戦のままでいくか判断する」

「あの、ロバート大尉、一つよろしいですか」

「何だ? カイル……。考えがあるなら是非言ってくれ」


 ロバートは興味深そうな表情を見せる。


「今回の作戦ではビームバズーカも使いたいのですが…、いいでしょうか?」

「まぁいいだろう。とりあえずドックの方にビームバズーカがあるかどうか後で確認しておく。

他に意見のある者はいるか?」


 彼は周りを確認するが、他に意見を言うものは現れなかったため、作戦会議は終了した。


「とりあえず、作戦実行は三日後だ。任せたぞ」

「了解!」


 彼らはその後、出来る限り作戦の準備をしてから就寝した。



 三日後、ついに帝国軍第4前線基地への攻撃が開始される。

 共和国軍内では緊迫した空気が流れていた。


「この作戦では新型機のデータ奪取が目的だ。行くぞ……」


 アモンはロバートに早く出撃するよう促す。


「分かりました、アモン大佐」


 彼らはドラギウス帝国軍第4前線基地へと駆けた。

 この攻撃を察知した敵部隊は即座に出撃を始める。



 戦闘がついに始まり、ロバート達は横一文字で集中砲火を行い、接近してきた敵を寄せ付けなかった。


「さぁ、早いところ進軍を続けて基地中枢部に向かうぞ!」

“そうですね……”


 また、アモンたちは地上でひたすら前進しながら機銃を撃ち続けて、帝国軍の機動部隊を次々に撃退していく。

 彼らは順調に侵攻を続けた。


「何だ!! まさか上空にいるのは……、共和国のMk-Ⅱか!?」

“何としても撃破してやる……”


 これに動いたのは、サロア率いるレイダー隊であった。

 サロアは自らの新しい機体・バドラスを戦闘機形態に変形させて出撃。

 この未曽有の事態を始めに察知したのはフランクであった。


「ロバート大尉! あのメタルユニット……」

“まさか……、新型機は完成していたのか!? くそッ……、見誤ったか”


 ロバートはそれでも勝つことを諦めはしなかった。


「フランク、ヘレン、カイル! この新型を追うぞ!」

“分かりました! では、至急動かなくては……”


 彼らはある程度敵を殲滅した後、レイダー隊への攻撃を始める。


「パワードキャノンで……、仕留める!!」


 ロバートは早速戦闘機形態に変形し、サロアを追いながらパワードキャノンから稲妻のような光線を放つ。


「どこを狙っているんだ? 馬鹿な奴め……」


 サロアは機体を宙返りさせて、ロバートの攻撃を回避した。


「くそッ、ならばミサイルとビームキャノンで……」


 必死に集中砲火を続けるロバートだったが、どの攻撃も容易く避けられてしまった。


“ロバート大尉、我々もお供します!”

「ルーガン、この機体はお前たちがかなうような相手じゃない……。早いところ逃げるんだ!」

“でも……、僕たちが介入するだけでも何か変わるはずです!”


 必死に訴えかけるルーガン。

 彼の眼は何としても敵に真っ向から立ち向かおうとしている。


「なら……、頼むぞ」

“了解! エリナ、リオ、クローティス、行くぞ!”

「分かりました」


 こうして、計8人がかりでレイダー隊に空中戦を挑む。


“数が多いな。ミルドレッド、ジャン、ロレント、奴らを集中砲火で撃墜しろ!”

「では、行きますか……」


 ここで本領を発揮したのはロレントであった。

 ロレントは目を鷹のように尖らせてビームライフルで敵機を狙撃する。


「落ちろッ!」

「きゃあァァッ!! このままでは……、やられる……」

“ヘレン、無理をするな。ここは俺がやる!”


 ヘレンを後方に下がらせてから、フランクは遠距離攻撃を行う。


「馬鹿め……。そんな精度の甘い射撃が当たるものか! この程度でやられる俺ではない!」


 なかなか当たらず、苦悶するフランク。


「当たれェッ!!」


 ロレントの放った光線はフランクに直撃した。

 これにより、フランクは撤収を余儀なくされ、カイルが代わりにその持ち場に就く。


「よくもフランクに痛い目を遭わせてくれたな! 許さねぇ!」


 彼の渾身の一撃は、ロレントの機体に被弾する。


「くッ……、機体に直撃か。だが負けんぞ!」


 しかし、ロレントの攻撃はカイルの手により容易く回避されていく。

 そして、距離を詰めたカイルはビームソードでロレントの機体腕部を斬り落とした。


“コンディションレッド、撤収シテ下サイ”

「仕方あるまい。右腕を斬られちゃあ戦えないからな……」


 そのままロレントは格納庫のあるエリアへと敗走。

 しかしながら、戦いはまだ続く。

 ルーガン達は残ったレイダー隊の兵士やその他の帝国軍の部隊と砲撃戦を行っていた。


「私だって負けてなんかいないわッ!」


 エリナはビームソードで矢継ぎ早に敵を斬り裂いていく。

 しかし、彼女をジャンが狙う。


「奴め! のうのうと前方に出てくるとは迂闊な……」


 ジャンはグレネードで彼女を攪乱し、そこからさらに接近攻撃をする。

 これにより、エリナは大ダメージを負ったために戦闘が困難となったため撤収。

 それを見たクローティス達はレイダー隊以外の敵を撃墜してから、ジャンに挑む。


「エリナをよくも……、許さん!」

“クローティス、無理しない方がいいわ……。敵は思っていたより強いわ……”

「分かってる! そんなこと……。このッ!」


 焦燥に駆られながらも、クローティスはビームライフルを連射する。


「何をッ!!」


 クローティスは上手くジャンを牽制して、そこからリオに攻撃させる契機を作らせた。


「今だ! リオ、アイツを撃て!」

“了解ッ!”


 リオは素早い動きで空中を移動し、隙を突いたところで光線を放った。


「これでも喰らいなさい!」

「ヌオォォッ!!」


 ジャンは撃墜され、やむなく機体から脱出し難を逃れた。



 一方でミルドレッドは、ルーガンと激しい撃ち合いをしながらお互いにひらりと攻撃をかわすだけの泥仕合を行っていた。

 機銃のエネルギーが尽きれば、接近戦は必至である。

 そして、二人はビームソードを取り出して斬撃戦を行う。

 俊敏な動きで敵の攻撃を回避するルーガンは、何度も自らの剣を振りかざすがなかなか当たらない。

 もはやこの戦いに終わりは無いのか。

 そう思った矢先にカイルが駆け付ける。


「おいおい、見てられねぇぜ……。確か、ルーガンだったよな。俺が援護する!」

“あなたは、カイル中尉! ありがとうございます! あっ、まだ来るか!”


 ルーガンは嬉しさを噛み締める暇もなく接近攻撃をひたすら行う。


「俺が奴の右腕を封じる! そのうちに奴を撃て!」

“了解”


 カイルは機銃を構えて光線を放ち、上手く狙い撃つことに成功。

 これにより、ミルドレッドは攻撃が困難になる。


「くそォ、動かないとは……」


 そして、ルーガンは斬りかかるがその寸前にミルドレッドは命の危機を察して機体から脱出した。


「何とかやり過ごしましたね……。隊長なのに、他の隊から助けられるとは…、情けないです」

“まぁ、卑屈になるなよ……”


 カイルは優しく微笑んだ。



 一方、ロバートはサロアとドッグファイトを繰り広げていた。


「ビームキャノンの残りのエネルギー、もうゼロだと……!?」


 ロバートは必死になってサロアの駆るバドラスを追跡するが、遠距離戦が不可能となったために悔しい表情を見せた。

 しかし彼はまだ諦めず、今度は変形して接近戦で敵に近づこうとする。


「しつこい奴め……、Mk-Ⅱなんざ倒してやる!」


 サロアはそれに応じてメタルユニット形態に変形。そこで近距離戦を行う。


「ビームソードを二本使う! これで決めてやる!」


 ロバートは素早い動きでサロアの元へ駆ける。

 しかし、サロアは怯むことなく両腕部に装備されたビームクローを展開し、ロバートに挑んだ。


「何をしている! お前は必ず倒してやる!」


 サロアはビームクローでロバートの機体胴部に斬りかかり、傷を付けた。

 このことを受け、これでは自分が死ぬと悟ったロバートは悔しい面貌で去った。

 こうして、彼らの戦いはほろ苦い結果に終わる。



 戦闘が終わり、基地に戻ったロバートはバドラスと戦った際のデータを記録したメモリを使って対策を練っていた。

 どこをどうすればサロアに勝てるのか。これを見つけようとしていたが、なかなか見つからず、彼はそのまま疲れて眠る。

 気が付いたら起床時間になっていたという。

 果たして、ロバートは新たな敵機を相手に打ち勝てるのか。

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