56.茜は煙に巻く
メフィストフェレス、色々と多彩な能力はあったんですが……使う暇もなく一蹴されました。
後、スルトの炎が入ってたガラス瓶と栓も特別製です。
(早水 勇雄視点)
前回までのあらすじ。
炎麗さんとデビルダンジョンへ潜ったら、何故か茜とかいう勇者を名乗る不審者と出会い、それから炎麗さんが茜に完敗し、かと思えば炎麗さんにメフィストフェレスって悪魔が取り憑いてるのが分かって、更にメフィストフェレスまでもが茜に瞬殺されて……
……うん、現実逃避もここまでにするか。
「ささ、座って座って♪」
「あ、どうも……」
「すぅ……はぁ……すぅ……」
え、今どういう状況か?
……俺が気絶している炎麗さんを運びつつ、茜から座るのを勧められてたところだ。
訳が分からないよな?
俺も分からん。
……なんて、1人で実況ごっこやってる場合でもないのは分かってるんだが……
「さ~て、それじゃあちょいと質問良いかな?」
「は、はい!」
「も~、そんなに畏まらないで良いから肩の力抜いて抜いて~」
「あ、ああ……」
いや、力抜くとか無理だろ……
またあんな殺気ぶつけられるんじゃないかってヒヤヒヤするわ……
「う~ん、始めの想定よりも怖がらせ過ぎちゃったかな~?……それはそうと勇雄君、さっき私がメフィストフェレスを倒した姿はやり過ぎに見えた?……それとも妥当な処分?」
「え?……そ、その……」
何だよ、その質問!
そりゃ魂ごと焼き尽くすのは多少やり過ぎだったかもしれないが、他に倒す方法なんてないし……
……まあ、呆気なさ過ぎたとは思うが……
「……一応言っとくと、あのメフィストフェレスとかいう悪魔だいぶヤバかったからね?……それこそこの5年間大人しかったのは、まだその時じゃないって判断してただけっぽいし……」
「ああ、何かしでかすつもりだったらしいしな……何するつもりだったんだろうな?」
「そんなの、口に出すのもおぞましい程に最悪な事に決まってるじゃん。……最低でも、炎麗ちゃんの体を操るのは確定事項だし……」
「そ、そうか……」
メフィストフェレスが消滅した今、あいつが何を企んでいたのかを知る術はない。
……だけど、碌でもない事だったのだけは分かる。
じゃなきゃ、わざわざ消滅までさせないだろ。
……いやまあ、俺は茜の事なんて何1つ分からないが……
「……ま、見てる感じだと私に嫌悪感は抱いてないみたいで良かったよ」
「嫌悪感?……やり過ぎかどうかってそれを知るために聞いてたのか……」
……嫌悪感はないな。
恐怖なら感じてるけど。
と、そんな事を考えていると……
「……ふふ、本当に見れば見る程に勇雄君って私のお兄ちゃんにそっくりだね♪」
「え?……茜の兄って、それどんな怪物だよ……」
俺が、茜の兄にそっくりだと言われてしまった。
……しかし、こんな埒外な茜の兄が俺みたいってのは何の冗談だ?
「いやいや、私のお兄ちゃんって別に強くないからね?」
「本当か?……仮に本当だとして、強さの基準がバグってるタイプじゃないか?」
「そうなら良かったんだけど、現実は違うよ……お兄ちゃんは攻撃系のスキルじゃないから、下手しなくてもその辺の不良にも負けちゃう雑魚なの」
「そ、そうなのか……」
訂正。
茜の兄は一般人レベルらしい。
「そもそも、私のお兄ちゃんは本当に肝心な時しか役に立たな……いいや、肝心な時にすら役に立たない事だってザラなレベルの無能だからね!?」
「あ~……そりゃ俺っぽいな……」
「加えて、勇雄君みたく何故か魅力もないのにハーレム築いてる始末!……本っ当に妬ましいったらありゃしないんだから!」
「お、おう……」
うぐっ!
……なるほど、聞けば聞く程に俺みたいだな……
「ただまあ、お陰で可愛い姪や将来有望な甥が沢山居るからそこだけは感謝かな?……けど可愛がり過ぎて姪の1人からはハリセンでぶっ叩かゲフンゲフン!」
「……ん?」
「な、何でもない何でもない……とにかく、私のお兄ちゃんは勇雄君と同じで魅力ゼロなクセに意味不明なモテ方する人だったって話だよ」
「……うん、だから何だ?」
そこそこの尺を割いてまで、俺はいったい何の話を聞かされてたんだ?
茜の兄が俺に似てる話とか、ぶっちゃけどうでも良いとしかならないんだが……
「だから何、か……単刀直入に言うけど、勇雄君は炎麗ちゃんと付き合うつもりある?」
「ぶふぉっ!?」
……って、何聞いて来てんだ!?
「ネリルちゃん、マッドフラワーちゃん、それから宝実ちゃん……既に彼女にしてる3人については今更聞きはしないけど、炎麗ちゃんをそのハーレムに加えるつもりがあるなら言っておきたい事が……」
「勝手に話を進めんな!……炎麗さんについては、現時点じゃ何とも言えないんだ……」
本当なら思いっきり否定したいところだが、これまでの事を振り返るとハーレムへ加える未来もあり得なくはない。
現に、俺自身は炎麗さんを好ましいとすら思っちまってるし……
「ふ~ん……んま、それならそれで良いけどさ……勇雄君、これだけは約束して欲しいの」
「……何を約束して欲しいんだ?」
「炎麗ちゃんを、1人で復讐に走らせないで。……ミランダは今の炎麗ちゃんが1人で勝てる相手じゃないし、十中八九返り討ちに遭って無駄死にする羽目になる……」
「……言いたい事は分かるが、それを俺に頼まれてもな……」
茜の言いたい事も分かる。
炎麗じゃミランダに勝てないかどうかはともかく、危険ではあるだろう。
……しかも、5年前の事件が痛み分けじゃなかったと知って炎麗さんが動揺するのは容易に想像出来る。
ただ、俺に頼んだところでどうしようもないぞ……
「でも、頼まないよりはマシ。……実際、私のお兄ちゃんって手の届く範囲の人や知り合いの死は見逃せないクセに、少しでも自分と関係がない相手なら割とドライな反応しちゃうから……そんなお兄ちゃんにそっくりな勇雄君にも、念押しはしとかないとって思ったんだよ」
「……流石に俺でももう少し情はあるぞ?」
「そう?……ならまあ、それで良いかな!」
俺に似てるとかいう茜の兄が割とドライだからって、俺に念押しする必要性が分からない……
ってか、そのくくりだと炎麗さんは確実に"関係のある人"に入るだろ!
……もう辞めだ、付き合ってられない……
「……茜、本当にお前は何がしたいんだ?」
「ん?」
「さっきから話がふわふわし過ぎだ……まるで、わざとあやふやな言い回しをして俺の反応を引き出しているみたいに……」
「エ~、ナンノコトカナ~?」
やっぱり、わざとらしい……
前提として正体すら明かしてない奴を信じられないのは当たり前だってのに、よくこれで話す気になったな……
「……俺は、今すぐお前を撃つ事だって出来るんだからな?……ちゃんと受け答えには気を……」
「いやいやいや、出来ないよね?……嘘つくにしてもバレバレ過ぎるよ」
「……正体を言え、出来ないなら話はそれま……」
「私は浅山 茜。……かつてゴリゴリにファンタジーな異世界へ勇者として召喚された、こことは別の世界出身のアラフォーだよ?……後、ここにはラビリンスって存在の調査をしに来た……のは風斗ちゃんで、私は痴話喧嘩の末に別世界流しの刑に処されちゃって来た……こんなところかな?」
「……荒唐無稽にも程があるだろ……」
阿保らしい。
こんな調子だと、茜から聞ける有意義な話はなさそうだ。
「信じるも信じないも君達次第だよ。……けど、これだけは言わせて?……私と風斗ちゃんは、この世界を生きる君達の味方だからね!」
「君達?……まさか、炎麗さんの配信見てる奴等にも向けて喋ってたのか?」
「そ~そ~、だから勇雄君に言えない事も山程あったんだけど、どうせ信じて貰えなさそうだし何より勇雄君はもう幸せそうだしで言わなくても良いかなって♪」
ん?
この口振りだと、俺だけに伝えたかった事がありそうな感じだな?
「俺だけに聞かせたい事で、幸せかどうかが関係して来る話……まさか……」
「はいスト~ップ!……今更その話はしないし、私もそろそろドロンさせていただくからね~♥️」
「ドロンって今時使う奴居るのか……」
「はいそこ~、絶対に親父臭いとか内心思ってるよね?ぶっ殺されたい?」
「なっ……そこまでは思ってないが!?」
……って、またペースを崩されてる……
絶対、茜をドロンもとい逃走させたら駄目だって分かって……
「てな訳で、ドロンするね!」
ードロン!
「あ、しまった!」
「すぅ……はぁ……んんんっ……」
……結局、俺が引き留める間もなく茜は俺の目の前から綺麗さっぱり消え失せちまった。
そこに、呆然と立ち尽くす俺とようやく目覚めそうになった炎麗さんだけを残して……
ご読了ありがとうございます。
ちなみに、雑談してるのにモンスターが寄って来ない理由は、茜が勇雄と炎麗を除いた周囲の生命体全てに強めの殺気を放っているからです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




