57.茜が去ってまた一難
重ね重ね言いますが、今の茜は『妹の勇者召喚に~』から20年以上経っているため、その作品内で使ってない能力もバンバン使えます。
(早水 勇雄視点)
「……んん……はっ!?」
「あ、炎麗さんナイスタイミング……丁度今、あの茜とかいう変なのが立ち去ったところだ」
茜が立ち去って数秒後。
まるで茜はこれすら察して立ち去ったかの様に、炎麗さんが目を覚ました。
「なっ……というか、私に憑依していた筈のメフィストフェレスはどうなったんですの!?」
「綺麗さっぱり消滅したぞ。……世界すら焼き尽くすスルトの炎とかいうので燃やされてな」
「……ふざけないでくれませんこと?」
「茜が言った事だ。……俺に言われたって真偽すら分からないしな……」
正直に言って、本当にメフィストフェレスが死んだかも分からない。
……が、茜の言葉を信じるなら魂ごと消滅したという事になる。
うん、訳が分からない。
「そ、そうですの……茜、いったい何者だったんですの?」
「さぁな。……茜が自分について語ったアレコレは炎麗さんの配信に映ってるから、後で見てくれ」
「わ、分かりましたわ……」
もう説明するのもダルいので、炎麗さんが気絶してた間の事は配信を見てくれ……
……まあ、仮に見たところで分からない事がより増えるだけなんだが。
「……じゃ、帰るか?」
「えっ……ええ、そうですわね……ああ、私は覚悟を決めに戻って来た筈だったのに……結局、ずっと自分がメフィストフェレスの掌で踊っていた事を突き付けられるだけに終わりましたわ……」
「……大丈夫か?」
「ご心配には及びませんわ。……この程度の些事でへこたれる程、私は弱くありませんもの……」
「な、なら良いんだが……」
……些事な訳、ないだろうに……
そう心の中では思いつつも、俺は炎麗さんへ何も言ってあげられなかった。
慰めも、発破も、忠告すら……
今の炎麗さんは、このいずれかが必要だった筈なのに……
「さて、それでは帰りますわね!」
「……一応、気をつけて行くか……」
とまあ、そんな感じで俺達は釈然としない気持ちを胸に帰路へついた。
ちなみに余談だが、帰りの道中ではレッサーデーモンやデーモンナイトが泡を吹いて倒れてやがった。
それを見た俺達はというと……
「……これ、一応倒して行きますわよ?」
「まあ、見逃すのもな……」
という気持ちから、1体1体剣で刺したりして殺しながら帰ったのだった……
で、そんなこんなでダンジョンから出た頃には夕方になっていた。
「……夕方ですわね……」
「だな。……どうする?ギリギリ新幹線だって間に合うかもしれないぞ?」
「ハァ……元々1泊2日の予定でホテルも予約しておりますわ」
「聞いてないが!?」
え、1泊2日!?
俺はそんな話、欠片も聞いてないが!?
「寧ろ、長崎まで来て日帰りな訳がないと普通なら思いませんこと?」
「あっ……ごもっともです……はい……」
……そりゃそうだ。
よくよく考えりゃ、日帰りツアーで長崎行きとか普通にあり得ないよな……
……ただ、俺は全く考えてなかった。
「……勇雄さん、何だかやけに思い詰めた様な顔をしてますわね?」
「あ~……着替え、持って来てないの思い出してな……」
「別に1日ぐらいなら使い回したって良いのではありませんこと?」
「そ、そうか?……確かに1日ぐらいなら何とかなるかもしれない……か?」
丸1日着た服を使い回すのって少し汚い様な気もするんだが、別に1日ぐらいなら使い回したって大丈夫……だと良いな……
とはいえ、他に手がない以上使い回すしかないんだが。
「それじゃあ、今日泊まるホテルへ行きますわよ」
「わ、分かった……部屋、別だよな?」
「当然ですわ!……ちゃんと2部屋、予約しておりますわよ!」
「……よし、これでお約束的な展開にはならないな!」
魅惑的な女性と2人っきりの旅行で、泊まるホテルが相部屋になるってのは物語としてありがちなテンプレだ。
勿論、現実はそうならないが……用心しておくに越した事はない。
……そんな事を考えながら、俺達は意気揚々と目的地のホテルへと向かい……
「大変申し訳ございません!……確かに本日の朝、新たに1部屋分の追加予約を承ってきちんと予約状況へ反映させた筈なのですが……どういう訳か、1部屋しか予約されておらず……」
「「…………………は?」」
「大変心苦しいのですが、お二人で相部屋していただくか予約をキャンセルしていただくかの2択に……しかし、今の時間から空き部屋のあるホテルや旅館をお探しになられるのは厳しいかと……」
「「…………………ハァ!?」」
……テンプレ通りトラブルで予約が出来てないルートに突入、見事に相部屋確定となるのだった……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(同時刻、ミランダ視点)
「……ど、どうしましょう……こんなの、七天美総出でも相手に出来ませんよ……」
ーガタガタガタ……
「ん?……ミランダお姉ちゃん、そんなに震えてどうしたの?」
「ひゃぁっ!?……あ、レマですか……」
び、びっくりしてしまいました……
てっきり、さっきの配信に出て来たアレが来たのかと思って一瞬身構えてしまいました……
「え、ほんとにどおしたの!?」
「ぶつぶつ……しかしメフィストフェレスが生きていた事は驚きでしたが、まさか瞬殺で消滅させられてしまうだなんて……アレはいったい何なんです?……というより、あのフウトとかいう女があんな私達以上の化物と繋がってたとか思いませんよ……」
あのメフィストフェレスが瞬殺で消滅……
少し前まではあっさり殺された能無しだと思っていたとはいえ、メフィストフェレスも七天美に匹敵する、或いは七天美を軽く凌駕する程の実力者……
それ故にあっさりと殺された事はずっと腑に落ちていませんでしたが……まさかあの復讐鬼に憑依していて生き残っていたとは……
……ただし、そんなメフィストフェレスも埒外の化物には敵わず今度こそ死にましたが……
「み、ミランダお姉ちゃん?」
「ぶつぶつ……こればかりは神頼みですかね……あんな化物、人類に有利なデウス・エクス・マキナそのものじゃないですか……」
伏線も予兆もなく、いきなり登場して暴れ散らかしてくれたアカネという化物……
これをデウス・エクス・マキナと呼ばずして何と呼べば良いのですか!
「ミランダお姉ちゃん、返事して~?」
「……ようやく、作戦の終わりが見えて来たタイミングでこれとは……私はずっと、自分が5年前に殺した相手の幻影に苦しめられ続けるとばかり思っていたのに……どうして脈絡なく現れた化物を警戒する羽目に……ぶつぶつ」
私はただ、自分を狙う復讐鬼をより深く知るために配信を覗いていただけなのに……
……それで知れたのが私達以上に強い化物とか、いくら何でもあんまり過ぎませんか?
「ミランダお姉ちゃ~ん!?」
「はっ!?……あ、ごめんなさい、レマ……」
「も~、ミランダお姉ちゃん……不安になる気持ちも分かるけど、荊鬼お姉ちゃんが今のミランダお姉ちゃんの姿を見たら悲しむと思うな……」
……そうですね……
あまり不安になったところで良い事なんて微塵もありません。
……逆に、今こそ当たって砕けろの精神で行くのが望ましい程です。
「ふふ、レマの言う通りですね。……そういえば、そろそろレマ用に作った新しい肉体が出来る頃合いです……」
「ほんと~!?……わぁ~、レマ嬉しい~!」
「ゴーレムの特異個体を改造して、ゴーストの特異個体であるレマ専用の鎧……もとい肉体を作り上げる計画の完遂までは後僅か!……もうなる様になれの精神で突き進みましょう!」
「お~!」
……アカネとかいう化物を見て、私は破れかぶれになっていたのかもしれません。
……だとしても、後悔はありませんでした。
何せ、荊鬼に顔向け出来なくなるのに比べれば玉砕なんて欠片も怖くなかったのですから……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(俯瞰視点)
そうして各々が茜への警戒を強めていた頃、当の本人はというと……
「ふぅ~……いや~、【神の奇跡】でホテルの部屋を1つ確保したは良いけど、本来ここに泊まる筈だった勇雄君には悪い事しちゃったな~……ま、炎麗ちゃんみたいな美女と同じ部屋で泊まれるんだから役得だと思って我慢してちょうだいね♪」
……そう呟きながら、1人ホテルのベッドに寝転んでいた。
「……それにしても炎麗ちゃん、復讐止める気はなさそうだよね……別に私だって法に触れさえしなければ復讐推奨派だけど、今の炎麗ちゃんが1人で挑んだところで無駄死にするのは目に見えてるし……」
茜は、炎麗を復讐に走らせたままで居るべきか悩んでいた。
今のままでは、確実に返り討ちにされると分かっていたからだ。
……が、
「ふぁ~……眠たくなって来たし、これ以上考えるのは辞めよっと。……私がこの世界の人達に干渉し過ぎるのも考えものだしね……zzz……」
眠気を感じ始めた茜は最終的に問題を先送りにし、そのままベッドで眠りについた。
……それでも自分は最後まで見捨てられないんだろうな、と内心では察しながら……
ご読了ありがとうございます。
ミランダから見た茜は突然現れた謎の強者でしかないため、対策のしようがありません。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




