53.茜の襲来
この炎麗編では、何人かの敵を相手にする事になります。
(早水 勇雄視点)
「んん~!……ふぁ~、よく寝た……」
「そうですわね……朝の6時に出発して、もう昼の1時半とは……時間をかけ過ぎましたわね……」
朝の6時に出発してから約7時間半……
それだけの時間をかけて新幹線で長崎までやって来た俺と炎麗さんは、駅前で少し話をしていた。
ちなみに、暇過ぎて俺は移動時間の大半を寝て過ごす羽目になったが。
「一応、恋人や友人にはメールで長崎行きを報告したは良いが……返事が怖くて見れないな……」
「……重ね重ね、今回の件はお詫び申し上げますわ……」
「そうか……とはいっても、それでどうして欲しいってのもないからさっさと目的果たそうぜ?」
「わ、分かりましたわ……」
難しい事は脇に置いて、俺は仕事に撤するだけだ。
……たとえ、相手がS級探検者でマッドフラワーの友人にあたる炎麗さんであろうとな。
んじゃ、そういう訳でさっさと行くか。
「で、目的地へは徒歩で行くのか?」
「そうですわよ?……もしや、タクシーなんかが良かったですの?」
「いや、問題はない。……言ってもデビルダンジョンまで駅から3kmらしいしな……」
とまあ、こうして俺と炎麗さんはきっかり3km歩く羽目になった。
……加えて、この間には特に何もなかったのでカットする。
その後、3km歩いた後……
「んで……ここがデビルダンジョンか……」
「何処にでもある普通のS級ダンジョンっぽい見た目をしておりますわよね?」
「まず、その何処にでもある普通のS級ダンジョンってのが分からないんだが?」
「お、おほほ……ささ、配信用カメラの電源をつけて行きますわよ……」
とまあ、俺達はデビルダンジョンへと到着し、これまた特に何も問題が起きる事なくカメラの電源をつけてダンジョンへと入った。
すると、案の定……
「ケヒャヒャヒャヒャ!」
「ケヒャァァァァァ!」
「ケヒャッヒャァァァ!」
道の先から3体のレッサーデーモンが現れたのだ。
なお、レッサーデーモンはよくイメージされるヤギ頭の悪魔って感じの見た目をしており、3体纏めてこちらへ飛んで来ていた。
が、そんなレッサーデーモンが恐怖感を示せたのもここまでだった。
「ふぅ……雑魚は燃え尽きるのですわ!」
ーブンッ……ボォォォォォォォォォォォォォォ!
「「「ケヒャ……」」」
ーゴォォォォォ!
炎麗さんがレッサーデーモン向けて剣を振るうと、現れた業火が3体のレッサーデーモン呑み込み、燃やし尽くしてしまったのだった。
「……炎麗さんにかかれば、この程度のモンスターは一撃であの世行きか……」
「S級探検者なら出来て当たり前ですわよ!」
……うん、分かっちゃいたが凄過ぎる。
やっぱマッドフラワーや宝実と並ぶ実力者なだけはあるな……
んで、だ。
それから十数分が経過するまで、お互いに微妙な距離感で話すらせずに歩み続けて第19階層直前まで進行した。
え?
雑魚敵のレッサーデーモンやデーモンナイト?
全部炎麗さんに10秒とかからず消し炭にされたが?
ほんと、俺達の常識が欠片も通用しないってこういう事を言うんだろうな……
レッサーデーモンもデーモンナイトも、俺達を捕捉した直後には業火の中に消えてやがったもん。
「……炎麗さん、ここ一応S級ダンジョンだよな?」
「そうですわよ?」
「……の割には、S級探検者相手に歯応え無さ過ぎじゃないか?」
「こんなものですわよ?」
「こんなものなのか……」
そりゃ確かに、ドラゴンダンジョンでもマッドフラワーや宝実は苦戦してなかったけど……
……これでS級ダンジョンと言われても、ドラゴンダンジョン程の威厳もないから分かりにくいんだよ。
とかダンジョン相手に失礼な事を考えていると……
「……そう、本来ならS級探検者がそこまで苦戦する様なダンジョンでもなく、あの日だって当時まだA級探検者だった私が己の未熟さを自覚する良い機会になるだけだった筈なんですの……」
「あっ……地雷、踏んじまったか……」
まさか、S級探検者の実力があればたいして危険でもないダンジョンだったってのが地雷になるとは……
分からんて、そんなん……
「……いいえ、そこまで気にはしておりませんわ」
「いいや、その感じだとどう見ても滅茶苦茶気にしてるだろ。……俺には分かるぞ?」
「……分かって、しまいますのね?」
「当然だろ」
炎麗さんの表情は、どう見ても悲しげだった。
だからって、それに触れない訳にも行かなかった。
「まさか、私まで口説き落とすつもりですの?」
「ふぁっ!?……俺、現時点ではそんなつもりは毛頭ないぞ!?」
「えっ……そ、そうですの……そこまで食い気味に反応されなくても……」
「いやいや、配信中なんだから反応するわ!」
炎麗さんもその辺は気にしないタイプか……
或いは、復讐に囚われ過ぎてそこまで気が回ってない感じか?
「配信って……そんなの気にしなくたって良いではありませんの……」
「気にするが?……ってか、コメント見てないがこんな感じで話してて大丈夫なのか?」
「知りませんわよ。……そもそも私が配信してる理由なんて、安否確認と証拠保全のためですし……」
「そうだろうとは思ってたが、マジで配信に興味ないんだな……」
実際、改めてスマホで炎麗さんの配信を見てみると大雑把極まりない出来だった。
本当に、ただカメラで撮って垂れ流してるだけっていうか……
……って、よく見りゃS級探検者のネームバリューもあってなお登録者6万人だと!?
明らかに色々足りてなさ過ぎる!
「配信なんて他の用途では要りませんわ!」
「ハァ……炎麗さん、自暴自棄のヤケクソにも程があるだろうよ……」
「うっ……いえ、これに関してはお兄様がご存命の時からこんな感じですわ……」
「……だとしたら別の意味で終わってんな……」
てっきり復讐に囚われた末のヤケクソなのかと思ったら、お兄さんが存命の時から配信に対して大雑把だったのかよ!
……もうツッコミするのも疲れて来た。
と、そんな時だった。
「ふぅ……雑談の途中で申し訳ありませんが、目的地に到着しましたわ」
「ん?……あ、もう目的地か……」
俺達は目的地……炎麗さんのお兄さんが亡くなったとされる第19階層へと到着した。
……もっとも、俺も最終目的地は全く聞いていなかったのだが、それでも何となく察していた。
お兄さんが亡くなった場所に行きたいんだろうなという事ぐらいは。
「……お兄様、戻って来ましたわよ……ようやく、お兄様の仇が討てそうですわ……」
……俺は、もう黙って付き添うに留めていた。
ここで何を言っても、野暮になる気がしたからだ。
……が、そんなタイミングで野暮にする者が現れる事になる。
「仇を討てる、ね~♥️。……今の炎麗ちゃんの実力じゃ厳しいと思うけどな~♥️!」
「「っ!?」」
突然、背後から聞こえた猫撫で声。
……全く聞き覚えのない声を背に、俺達がとれる選択肢は決まっていた。
「何者ですの!」
ーブンッ!……ボォォォォォォォォォォォォォォ!
「ちょっと俺の事も考えてくれないか!?」
ーダンッ……
炎麗さんは振り向き様に剣を振って炎を出し、俺は前へと走り出した。
え、これでもし相手が一般人だったら?
……もし相手が一般人ならこんな所まで来れてないし、炎麗さんが反応した時点でS級探検者じゃない。
つまり、相手は普通の人間じゃない……
「うわひっど~い!……私が無実の一般人だったらどうするつもりだったの!?」
「一般人はこんな所に居ませんわ!……それに私の炎に呑まれて話せるなんて、貴女は何者ですの!」
声の主は、炎麗さんの業火に包まれてもなお平気で話していた。
もしかして、七天美の1人か?
「私~♥️?……私の名前は浅山 茜♥️!」
「アサヤマ……」
「……アカネ?」
「そ~そ~♥️!……あ、七天美じゃないよ♥️?……分かりやすく言うと風斗ちゃんの両親と親友にして盟友って関係で、誰が呼んだか"愛欲の勇者"とも呼ばれてるよ♥️!」
「何の何の何だって!?」
「一気に畳み掛けないで欲しいですわ!」
えっと、七天美じゃなくて、風斗の両親の親友にして盟友で、"愛欲の勇者"って呼ばれてる……
頭が痛くなるわ!
「う~ん、そう言われてもね~……」
「……とにかく、七天美でない第3勢力だろうと容赦はしませんわよ!」
「あ、バトっちゃう感じ?……炎麗ちゃん、私に勝てる気で居るんだね?」
「……何なんですの、貴女のその余裕は!」
炎麗さんから殺意を向けられてなお、アカネ……多分、茜は余裕な口調を崩してなかった。
そしてこの後、俺達はその余裕が本物なのだと確信する羽目になるのだった……
ご読了ありがとうございます。
ネタバレするとS級探検者と茜の実力差は、S級探検者<<<< (こえられない壁) <<<<茜ぐらいの差があります。
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