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52.釈然としない記憶

今話は炎麗の過去になります。

(火神 炎麗視点)


あれは5年前の事でしたわね……


「……お兄様、本当にこのデビルダンジョンで特異個体が生まれていると思っておりますの?」


「う~ん……確信はないし、あくまでも可能性がある程度だけど……最近はきな臭い噂も多いし、あり得ない話でもないと私は思ってるよ?」


その日、私とお兄様は最近きな臭い噂が流れていた長崎のデビルダンジョンへとやって来ておりましたわ。


このダンジョンは一応S級ダンジョンに分類されていましたが、私はA級探検者でありながらS級探検者であるお兄様の同行者としてダンジョンへの入場が許可されておりましたの。


「……ここのダンジョンボスは名無しのアークデーモンで、雑魚敵もレッサーデーモンやデーモンナイトであったと記憶しておりますわ……」


「うん、基本的に名持ちの爵位持ち悪魔であるデーモンロード以上は特異個体としてしかこの世界に顕現出来ないからね。……ただ、その性質上どうしても他のモンスターよりも特異個体が誕生しやすくはある……何せ、最低でも72柱+α(アルファ)が現世への顕現を地獄とやらで虎視眈々と狙っているんだから……」


ええ、そうですわ。


普段ダンジョンに顕現している悪魔は基本的に最上位でも名無しのアークデーモンまで……


ですが、今も地獄とやらでは72柱+α(アルファ)の名持ち悪魔が現世への顕現を虎視眈々と狙っていると伝説に残されておりますの。


実際、その言葉を裏付ける様にここ数千年で確認された悪魔の特異個体は並々ならぬ力を持っていた上に、倒しても数百年後に再び顕現したとか……


まあ、そんな話は置いておきまして。


「……その中のいずれかの悪魔が、ここに居るかもしれませんのね?」


「現状は居るかもしれない、でしかないけどね?……それに仮に居たとして、その悪魔がかつて存在したとされるソロモニエ王が支配下に置いたとされる72柱か、サタンやメフィストフェレスなんかを始めとした番外悪魔かすらも分からない訳だし……」


「………………そ、そうですわね」


名持ちの悪魔にも2通り居ますわ。


片や、古代に実在したソロモニエ王が支配下に置いたとされる72柱の悪魔達。


もう片方は、その中に含まれなかった番外悪魔と呼ばれる者達。


……どちらも一筋縄で行かない相手であり、マトモに戦えるのはS級探検者ぐらいだと言われておりますわ。


「じゃあ、私達も早速潜ろうかな?」


「ええ、私は準備万端ですわ!」


そうして、私とお兄様はデビルダンジョンへと潜りましたわ……



そして十数分が経過し、第19階層に到達した頃でしたわ。


「っ!……炎麗、静かに」


「っ!?……お兄様、どうしましたの?」


突然、お兄様が静かにする様に告げて来ましたの。


「……誰か居る、それも2人……」


「そ、そんな……受付の者は、今日の探検者は私達に居ないと言ってましたわよ?」


お兄様から告げられた人数は2人……


ですが、その日はデビルダンジョンに私達以外の入場者は居ない筈でしたの。


その上で……


「ハァ……そこに居るお二人、私達の前に姿を現したらどうですか?」


「「っ!?」」


謎の2人組の片方……黒いシスター服に身を包んだ女性が、そう語りかけて来ましたの。


「……やあ、バレてしまっていたみたいだね?」


「当然です。……メフィストフェレスも気付いていましたよね?」


「ククク……当然じゃあございませんか!」


「っ!?……メフィストフェレスって、あの番外悪魔の1人ですわよね!?」


シスター服の女性と共に居た、シルクハットと紳士服を着用した若い男性……


彼は、シスター服の女性からメフィストフェレスと呼ばれておりましたわ。


「ククク……ご名答、知識は充分なご様子で♪」


この時点の私は、状況に追い付けておりませんでしたわ。


シスター服の探検者?がメフィストフェレスと同行してる?


否、もしかしたらシスター服の女性も悪魔かも……


そんな考えを、私はどうにか拙い思考回路で張り巡らせておりましたの……


しかし……


「ふむ……メフィストフェレス、女性の方を引き離してください」


「ククク……かしこまり、■■■■■(ザザザザザ)の姐様!」


ーフッ……ダンッ!


「くっ!?」


突如としてメフィストフェレスが私へと蹴りをかまして来て、私はその場から距離を離されてしまいましたわ。


すると……


「っ!?……炎麗!」


「おっと、貴方の相手は私ですよ」


「なっ……君達はいったい何者だ!」


「何者か?……メフィストフェレスの方は言うに及ばず、私の方は……迷宮至上教ダンジョンしじょうきょうが七天美が1人、"慈悲"のミランダと申します。……まあ、要するにカルト宗教の幹部格ですよ」


「何だと?……そんな組織、聞いた事も……」


……お兄様の何者かという問いに、シスター服の女性ことミランダはそう飄々と答えましたわ。


加えて……


「ああ、それと……貴殿方がこの階層に下りて来てからの一部始終は、魔力電波妨害で秘密とさせていただきましたので悪しからず」


「ハァ!?……そんな真似が……」


……私達が第19階層に到達してからの一部始終は、配信に乗っておりませんでしたの。


そのせいで、この後に起こった事件は私の証言とお兄様の亡骸から得られた情報しか判断材料が残っていなかったんですの……


その私ですらも……


「ククク……後ろへの引き離しもこの辺が限界か?……なら、()だな」


ーパチン!ブゥン……


「……………は?……え、ここ何処ですの?」


……直後にメフィストフェレスによって、何処か見覚えのない階層へ飛ばされてしまったんですわ。


「ククク……ここは第22階層、さっきの第19階層の少し下さぁ」


「下ですって?……メフィストフェレス、いったい何のつもりですの!」


「ククク……んなの、時間稼ぎに決まってんだろ?」


「時間稼ぎって……付き合ってられませんわ!」


「ククク……ならどうする?」


「そんなの、今すぐ貴方を倒してお兄様の支援に駆け参じさせていただきますわ!」


メフィストフェレスの伝承には、空間跳躍の類いを扱うという記述もありましたわ。


だからこそ、私も瞬時に下の階層へ転送されたのだと判断出来ましたの。


「ククク……ま、■■(ザザ)……いや、ミランダの姐様からは引き離す様にとだけ言われちゃいたが……別に、殺しちまっても構わねぇよな?」


「チッ……そうなる前に、()()()()()()()()()()()()()()()わ!」


「ククク……そんなに(・・・・)殺してぇか?(・・・・・・)


ええ(・・)当然ですわ!(・・・・・・)


こうして、私とメフィストフェレスの戦いは幕を開けましたわ。


……ただ、どうい(・・・)う訳か(・・・)この先(・・・)()()()()()()()()()()()()()()の。


実際、気付いた頃(・・・・・)には(・・)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()わ。


……で、メフィストフェレスらしき消し炭がきちんと死んでいるのを数秒かけて確認した後、急いで第19階層まで登ったのですが……


「お兄様、大丈夫で……お兄様?」


「……………………」


「ど、どうして地面に寝そべっていますの?……どうして、辺りに血が広がっておりますの?」


「……………………」


……そこに残っていたのは、地に伏せ血だまりに沈んだお兄様………の亡骸だけでしたの。


「お兄様、何とか言ってくださいませ!」


「……………………」


「お兄様!お兄様!お兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


結局のところ、私は何が起きたのか分からずにお兄様を喪いましたわ。


ミランダが何をしたのか、お兄様は何故死んだのか、本当にメフィストフェレスは死んだのか……


何も分からないままに、このデビルダンジョンへの挑戦は幕を閉じたんですの……


そうしてそれ以降の私に残ったのは、お兄様の仇であるミランダへの怒り……


いつか彼女を地獄へ送るという願いを胸に、これまで生き続けて来ましたわ……


……お兄様、待っていてくださいませ……必ず、仇は討ちますから……






「……お兄様、待っていてくださいませ……必ず、仇は討ちますから……」


「あ~……俺は何も聞いてない俺は何も聞いてない俺は何も聞いてない俺は何も……」


「………あ、申し訳ないですわ……」


新幹線で揺られながら、かつての事を思い出していた私は、ふと5年来の覚悟が口から出ている事に気付いて急いで謝罪の言葉をしましたわ。


……いやはや、やらかしてしまいましたわ……

ご読了ありがとうございます。


なお、メフィストフェレスは同じ悪魔系モンスターの特異個体って関係を理由にミランダへ協力しただけであり、迷宮至上教の幹部格になるつもりは毛頭ありませんでした。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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