51.雨中の出発
茜に対して誰?って読者の方は、何かもうチート的なキャラクターだとでも思っててくれると助かります。
(前話から少し後の6月下旬、早水 勇雄視点)
もう梅雨も真っ只中な6月下旬……
ーブ~!……ブ~!……ブ~!……ガチャ!
『新人君、しご……』
「はい、仕事ですね?」
『……ああ、いつも通り突然で悪いが仕事だな』
……まだ朝も早い午前5時、俺のもとへ理穂さんから仕事を伝える電話がかかって来た。
対する俺もこの手の電話にはもう慣れっこであり、仕事である事を真っ先に問い直す程だった。
まあ、それはさておき……
「それで、今回の仕事は?」
『うむ……実は数日前からS級探検者の火神 炎麗君が長崎のデビルダンジョンに行くと言っていて、その日付が今日なんだ……』
「はぁ……」
だから何だ?
それだけじゃ、俺の仕事にはならない筈だろ?
『勿論、デビルダンジョンは過去に問題が起こりつつも現在は特に問題らしい問題が起こっていないダンジョンなのでこちらの仕事はなかった筈なのだが……つい先程、炎麗君が突如として新人君を同行者に指名してな……』
「…………………はい?」
炎麗さん、何がしたいんだ?
俺を同行者に……って、役立たずの足手まといを増やして何になると?
『という訳で新人君、行ってくれるかい?』
「あの、今回は理穂さんやネリル達は……」
『先方は新人君のみを指名している……他の同行者については諦める事だ』
「………………分かりました」
この時、俺と炎麗さんの2人による長崎遠征?が確定した。
……なお、ここのところ天気は雨ばかりであり、例に漏れず今日も雨……
天気予報、一応見てみるか……
ーピッ!
『現在、勢いを増した台風8号が北上中……明日の未明には沖縄県に上陸する見込みで……』
「……あの、本当に今日なんですか?」
ニュースを見れば、台風が北上しているとの報道。
……この状況下で長崎行きとか、どう考えても正気の沙汰じゃない。
そう考えた俺は、日付を間違えてる可能性に賭けたが……
『ニュースで台風が来てると言っている最中で信じられないかもしれないが、間違いなく今日だ』
「電車は?」
『行きはまだ止まっていないだろうが、帰りは絶望的な状況だな……』
「すぅ~……俺に死ねと?」
賭けに負け、遠回しな死刑宣告をされた気分になった俺は、
『すまない、この件は私の力でどうにもならなくてだな。……申し訳ないが新人君、私からは幸運を祈る事しか出来ない……ひとまず、行く気になったら○○駅に向かってくれ……』
「……了解しました」
こうして、俺は無茶過ぎる仕事を引き受ける羽目になった。
……それにしても、どうしてこの時期なんだ……
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(数十分後、浅山 茜視点)
とある駅前アーケード街にある飲み屋の店先にて……
「う~……ひっく……ってな訳で、この姉ちゃんがまた強くてな~!」
「お~、やっぱ強い人って凄いんだね~!」
「おうおう!……ところで嬢ちゃん、見たところ高校生っぽいけど親御さんは……」
「あ、ここ等で失礼ドロンするね♥️!」
ードロン!
「ふぁっ、消えた!?……酔い過ぎたか?」
……あ~、いくら不老にあやかってセーラー服を着てるとはいえ、私ってうわキツじゃなくてマジで高校生ぐらいの年齢に見えちゃうのか~。
下手こいて補導なんてされたら目も当てられないんだけども、だからって行動制限されるのも嫌だな~。
「……ま、そこそこ情報も集められたし別に問題はないけどね♥️!」
この世界に私が来てから、もう1週間から2週間程度は経ってる。
……その間に集めた情報と、限定的な全知の権能で集めた情報があれば何でもござれよ。
「……この全知も昔は元の世界と勇者召喚された世界でしか使えなかったけど、今では他の世界でもちょっとした情報程度なら難なく視れる様になったしね♥️!」
かつて、私がこの能力を手にした当初の頃とは色んな意味で熟練度が違う。
今の私は、ちょっとした情報なら集められるんだから!
「……ただし、そのちょっとした情報に迷宮至上教根城の位置が含まれてなかったのは痛かったけど……」
う~ん、やっぱりままならないね……しくしく……
なんて、悲しんでる場合じゃない!
いつでも茜ちゃんは超絶無敵なんだから★!
……うん、そろそろこの思考パターンも虚しくなって来たから真面目に考えよう。
「さてと、ここから私達が取れる手は限られてるけど、神性ラビリンスが相手となると異世界の人間による過剰な介入は寧ろ悪手になる……この条件下で私に打てる一手、何があるかな?」
私と風斗ちゃんでゴリ押しするのも良くないだろうし、かといって何もしないのもな~。
何だかんだ私も勇者の端くれ、滅亡の危機が迫ってる人達を見捨てられないし……
とか思ってたら……
「ぶつぶつ……どうして俺が台風の近付いてる長崎へ行かなきゃいけないんだ……」
「んん?」
私の横を、1人の男性が通り過ぎた。
……あれは確か、このところS級探検者を2人続けて恋人にしたっていう早水 勇雄君!
私のお兄ちゃんを彷彿とさせる没個性感と何でか知らないけど恋人が増える感じはまさに特異点……
……よし、面白そうだし着いていっちゃお!
「ぶつぶつ……あ、炎麗さんが立ってる……だとすれば、あそこが待ち合わせ場所の○○駅か……」
「……んんん?」
あの駅前に立ってるのって、S級探検者の火神 炎麗ちゃんじゃん♥️!
いや~、あの可愛くもクールかつスタイリッシュな美貌がたまりませんなぁ~♥️!
……って、気楽に考えれたら良かったんだけどね?
「ハァ……俺はどんな顔して会えば良いんだ……」
「あ、勇雄さんが来ましたわね……」
「うわぁ……炎麗ちゃん、覚悟の決まった復讐鬼みたいな顔しちゃってるよ……」
私が見る限り、炎麗ちゃんが凄い覚悟の決まった顔をしちゃってる……
あの様子だと、勇雄君は気付いてないのかな?
「……炎麗さん、見るからに怖い顔してるな……まあデビルダンジョンと言えばお兄さんが殺された場所らしいし無理もないか……よし、俺は気付いてないってテイで進めるか……」
……いいや、そんな事はなさそうかな。
何だ、好かれるだけのアレはあるんじゃん。
私からしたら男性って時点で恋愛対象外だけど、友人としては割と好ましいかな?
「んじゃ、私もバレない様に行こうかな~♥️」
そうして、私は密かに2人の尾行を開始した。
……ちょっとしたサプライズを計画しつつ、ね♥️。
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(視点は戻り、早水 勇雄視点)
うおぉ……
炎麗さん、かなり覚悟の決まった顔してやがる……
けど、あの感じがマズいのは分かる。
……もしもの時は俺がストッパーにならないとな。
「よぉ、炎麗さん」
「……勇雄さん、この度は我が儘を言ってしまい誠に申し訳ありませんわ……」
「あ~……気にしてないって言ったら嘘になるが、どうして俺だったんだ?……マッドフラワーや翔悟さん、宗則さんとか他にも適任は……」
「……あの者達では駄目でしたの。……宗則以外は私を止められるだけの実力者ですし、その宗則も戦闘力以外の点で私を止められますから……」
「あっ……」
要するに、俺は炎麗さんを止められないから選ばれたと……
……何じゃそりゃ。
「……今回のデビルダンジョンに仇が居る訳でないとはいえ、やはり思うところはある場所ですわ……だからこそ誰にも邪魔されずに行きたいという想いと、その様子を誰かに見ていて貰いたいという想いがありましたの……」
「そ、そうだったのか……」
俺からすりゃ迷惑な話だったが、その言葉は口から出す前に飲み込んだ。
……炎麗さんからすれば、覚悟の要る事だったんだろう。
「それでは、台風が来る前に行きますわよ」
「……そ、そうだな……」
こうして俺達は長崎へと向かう新幹線に乗り込み、目的地へと旅立った。
……俺達を尾行するみたいに新幹線へ乗り込んだ、左目に黒い眼帯を着けた女子高生らしき人物をたいして気にも留めずに……
ご読了ありがとうございます。
茜、今後も本格的にストーリーに絡みます。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




