50.躊躇う悪魔と来訪した戦乙女
今回の話、本格的に作者の別自作からキャラクターがクロスオーバーして来ます。
(ミランダ視点)
……お許しください……
アゼトリーチェ、貴女の今後を思えば、この選択こそが最善なのです……
……アゼトリーチェへ追放処分を言い渡した私は、頭の中でそんな許しの懇願と言い訳を並べていました。
と、そこへ……
「……んま、ミラちゃんにしてはよくやった方だと思うじゃんじゃん?」
「っ、荒波 團麻……」
……何やら狡猾そうな笑みを浮かべつつ壁にもたれかかっていた荒波 團麻が、私へ話しかけて来たのです。
「うぉ~、急に睨んで来られたら流石の團麻ちゃんでも怖いじゃんじゃん?……ってか、そもそもそっちが勝手に決めた事なんだから、團麻ちゃん恨むのはいくら何でも筋違いじゃんじゃん?」
「………………分かっています……分かっている、筈なんです……」
荒波 團麻の言う通りです。
アゼトリーチェを追放処分にして逃がすと決めたのは私であり、荒波 團麻へアゼトリーチェを託すと決めたのも私……
なのに、私は今も躊躇っています。
「うわぁ……未だに未練たらたらじゃんじゃん?」
「……貴女に私達の何が分かるのですか?……アゼトリーチェは、長年この組織の財政面に貢献してくれた功労者です!……それを手放すとなれば、躊躇の1つや2つ……」
「違うじゃんじゃん?……躊躇の理由はそんな理屈っぽいものじゃなくて、もっと感情的な……」
「黙りなさい。……貴女はただ、アゼトリーチェを連れて追放されるだけで良いのです!」
おっと、珍しく感情的になってしまいました。
……冷静にならなければ。
「ぶひゃひゃひゃひゃ!……ま、團麻ちゃんはアゼちゃんをここから連れ出せるなら何だって良いじゃんじゃん♪」
「……本当に貴女に任せて良いのか、早くも不安になっていますよ……」
「んも~、團麻ちゃんに任せれば万事OKなのに酷いじゃんじゃん!」
「その自信は何処から来るのですか……」
駄目ですね……
これ以上話を続けていても、耳が腐るだけです。
「あ、ミラちゃんまでアゼちゃんみたいな目で團麻ちゃんを見てるじゃんじゃん!」
「逆にどうして見られないと思ったのですか?……とはいえ、貴女にこれ以上時間を割く義理はありませんので失礼します」
「あ、ちょい待つじゃんじゃん!……最後に1つだけ聞かせるじゃんじゃん!」
「……しょうもない質問であれば、即座に喋れなくしますからね?」
あ~もう、どうして私はこうも身内に甘いのか……
最終的に切り捨てたフライウルですら、切り捨てるには遅過ぎた程ですし……
敵対者なら、容赦なく殺せるというのに……
…………いえ、それも誤りですね。
事実、かつて1人のS級探検者を殺してから、ずっと報復を恐れ続けて人的被害を可能な限り出さない方向へ方針をシフトしましたし……
……って、思考が逸れました。
「お~、怖いじゃんじゃん。……んで、團麻ちゃんからの質問なんだけど……………ミラちゃん、最近死に急いでるじゃんじゃん?」
「っ!……どうして、そう思ったのです?」
「ん?……ただの勘じゃんじゃん♪」
荒波 團麻……
やはり、侮れませんね……
「ええと……ドラゴンダンジョンでの一件から数日後、こんな動画がマッドフラワーのチャンネルに上げられていましてね……」
ーピッ!
『あ~……ミランダ、これを見ているなら聞いて欲しいんであるが……実はドラゴンダンジョンで相対した際に伝えられなかった事として、臨死体験した時に茨木童子から伝言を頼まれてたんであるよ……曰く、『先に地獄で待ってる』との事である……』
ーピッ!
「……荊鬼にこう言われては、私も終活を始めざるを得ません……ついでに因縁も払拭しなければいけない頃合いですし」
「ふ~ん……ま、ミラちゃんがその気なら止めはしないじゃんじゃんが……アゼちゃん追放してミラちゃんまで死んだら、この組織はもう終わりじゃんじゃん?」
「そこはまあ、堕骨丸とゼバッティを信じていますよ」
口ではそう言った私でしたが、内心では不安もかなりありました。
……しかし、それで滅びるならそれまでだっただけの話です。
「……そこまで言うならミラちゃん、最期まで頑張って生き抜けじゃんじゃん♪」
「ええ、言われずともそのつもりです……さて、言っていた通り話はこれで終わりです」
「むぅ……分かったじゃんじゃん……」
ータッタッタ……
とまあ、こうして私と荒波 團麻による会話は終わりを迎えました。
……何とも言えない、後味の悪さを覚えながら……
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(金村 風斗視点)
「う~ん……ボクはいったい、この世界で何をしているんでしょうか……」
とあるカプセルホテルの一室にて……
ボクは、そう呟かずには居られませんでした。
「ラビリンスに関係ありそうな迷宮至上教に関しては未だに拠点の位置すら絞れず……これじゃあ、今のボクはただ場を引っ掻き回してるだけのトリックスター未満の存在じゃないですか……」
分かっては居ましたが、やはりボクは未熟者です。
……こんな時、父上と母上ならどうするんでしょう……
いえ、それ以前にそもそも今のボクは上手くやれてるのでしょうか?
……こんなボクでも弟の冥堂よりは優れていると思いたいですが、あっちもあっちで見てない内に成長してそうですし……
ああ、嫌になりますよ……
「ハァ……そもそも神性タイプに分類されるラビリンスの調査なんて、ボクには荷が重過ぎるんです……」
遂には、こんな弱音まで……
ほんと、家族や友人には顔向け出来ませんね……
なんて思っていたら……
「あ~うん、ごめんね?……やっぱ風斗ちゃんに神性ラビリンスの相手は時期尚早だったかな?」
「っ!?……え、その声はまさか……」
突如として寝るだけのスペースしかない部屋の外から聞こえたのは、故郷で何度も聞き覚えのあった声……
ですが、わざわざボクの手助けに来たとは到底思えませんでした。
しかし、確かめない事には話が始まりません。
「ん~?……風斗ちゃん、私だよ~?……君の両親の親友にして盟友、浅山 茜だよ~?」
……どう聞いても、ボクの両親の親友にして盟友の茜さんの声にしか聞こえないのですから。。
ただ、わざわざ今更茜さんが来る理由なんて……
「……………………あっ」
「……風斗ちゃん、今の『あっ』は何かな?」
「茜さん……さては、またシトラスさんと喧嘩して島流しならぬ別世界流しにでもされたんですね?」
「ギクッ!……ナ、ナンノコトカナ~?」
やっぱりですか……
道理で事前連絡が何もなかった筈です。
「ハァ……ボクの手助けに来た訳じゃないなら、さっさとシトラスさんと仲直りして帰ってください!」
「いやそのつもりではあるよ!?……でも、それはそれとして風斗ちゃん辛そうじゃん……やっぱり神性ラビリンスの相手はまだ早かったんだよね?」
「うぐっ……」
あ、さっき口を滑らせたせいで……
確かに手助けは必要ですが、それで来て欲しいのは変態レズな茜さんじゃないんですよ!
「……うん、決めた!……私、風斗ちゃんの手助けしてあげる!」
「いいえ、間に合ってます!」
「も~、遠慮しないの~!」
「ひぇっ……この貞操が危機的な状況からボクが入れる保険はありませんか~!?」
あああああああああああ!
いくらボクでも、茜さんだけはお呼びじゃありません!
「……風斗ちゃん、流石の私も合意のない相手は襲わないよ?」
「でも茜さん、ご自身の姪にはしょっちゅうウザ絡みしてるじゃないですか!……かなり前に菜々乃さんが愚痴ってましたよ!」
「ぐはっ!……そ、それについては私だって一応反省してるから……」
「だとしてもです!……ボクは貴女を信用出来ません!」
ボクにとっては幼い頃から遊んでくれた信じられる大人ではありますが、行動に限定すれば一切信用出来ない変人なんですよ。
「ぐすん……分かったけど、心配ではあるから単独行動で手助けはさせて貰うよ?」
「まあ、それなら……」
「あ、ちなみに今の私って高校生っぽいセーラー服のコスプレしてるんだけど、10代後半から不老になってるし問題はないよね?」
「いやいやそれでも問題大有りですからね!?」
いくら不老だからって、貴女はアラフォーの自覚を持ってくれませんか!?
「え~、そうは言っても似合ってるよ?」
「似合っててもです!……不老とはいえ茜さんはもうアラフォーなんですから、いつまでも学生気分は辞めてください!」
「ぶぅ……風斗ちゃんの分からず屋」
「……ボクと少し会わない間に精神の幼児退行でも起こしました?」
その後、数分に渡って茜さんと口論をしたものの、ついぞ茜さんはセーラー服を脱いでくれず、そのまま何処かへと走り去ってしまいました……
……いやまあ茜さんなら何かあっても大丈夫なんでしょうけど、もし何かやらかしてもボクは一切関知しませんからね!?
ご読了ありがとうございます。
なお、茜は自作『妹の勇者召喚に~』に、名前だけ出て来た冥堂は自作『男女比の狂った~』に、同じく名前だけ出て来た菜々乃は自作『滅亡寸前ギリギリの~』に登場するキャラクターとなっています。
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