第三十七話 変k█▃▇▄▆▆■▅▃▄▨
俺がネフィサファ鉱山を出て最初に思ったこと ───身なり。
長期間洞窟内にいたため、ずっと同じ服を着ていたが、岩の化け物と戦った時に完全に焼け消えてしまったな。流石に、宝石や魔石を換金しにギルドへ行かないといけないとはいえ、この状態で人前に出るのは憚られる。
と、そこで思い付いたのが───あの巨大な岩の化け物と戦った時、身に纏った黒い兵装。あれを身に付ければ問題無く人前に出れるだろう。
そう考えた俺は早速黒い兵装を纏い出す。
左の拳を握って、右の掌をその上に乗せながら、腕を沿うようゆっくりと肘に向かって動かしていく。
すると、先の戦闘の時と同じように左の拳から肘までの辺りが光り、その部分にだけ黒い甲冑が出現。そして、全身には、黒色で長袖のジャケット・黒シャツ・黒の長ズボンといった黒づくめの兵装が俺に着用されている形で現れた。
よし、これで大丈夫だな。
あの戦闘後、爆発によって負った火傷を冷やすために、俺はすでに『属性解放剣術』を用いて水浴びをしていた。火傷の部分に水がしみて痛かったが、その痛みに我慢しながらついでに汚れも落としておいた。
一先ずは、ギルドに行っても大丈夫だろう。
と、そこで、一つのことを思い出した。
今の俺の能力値、どうなっているんだ?
戦闘中ではあったが、俺の力があそこまで変化したんだ。ステータスボードに何かしらの変化があってもおかしくない。
「“オープン”」
俺はいつものようにステータスボードを斜め上に出現させた。
ラクト=ユウキ 種族 (人げn゛_∟△) 年齢:16
レベル:21 取得経験値量:623495
筋力 :6542
瞬発力:7963
体力 :6042
魔力 :89630
出力 :3453
抵抗力:45127
スキルホルダー:気功術
:気功剣
:黒赫化
スキルリスト
《パッシブ》魔素完全適応
《パッシブ》魂喰い
《チョイス》気功術Lv.26
《チョイス》気功剣Lv.20
∟《チョイス》属性解放剣術Lv.14
∟火
∟風
∟雷
∟水
∟土
《チョイス》自爆術
《チョイス》縮地Lv.12
《チョイス》測定眼Lv.10
《チョイス》斬鉄術Lv.4
《チョイス》刺突術Lv.3
《チョイス》発勁Lv.3
《チョイス》剛体術Lv.2
《チェック》空歩Lv.3
《チョイス》黒赫化
《チョイス》黄絶化
「あ? んだこれ……?」
改めてステータスボードを開いてみると、化け物と戦う前に比べて随分とボードの様子が変化していた。
「レベルが……二十一? 何で魔獣を倒したのにレベルが下がってんだよ。それに種族の欄、これ何て読むんだ……? レベルが下がってるのに、能力値は異常な上昇を表している……どうなっているんだ……?」
目の前に表示されたステータスボードに首を傾げる。
しかも、このステータスボード、前よりも掠れる回数が多くなって不安定になっているし……壊れた?
とにかく、増えている『スキル』が気になって、まず『黒赫化』についてタップしてみる。
だが───
「………動かない」
そう、前までは長押しするとその『スキル』の詳細が現れたというのに、今は全く表示が変わらない。何故?
「参ったなぁ。これじゃあ強くなって新しい『スキル』を得たとしても、『スキル』の詳細が分からないじゃないか」
おかしくなったステータスボードに溜め息をつきながら、駄目元で今度は『空步』の欄に触れてみる。
『空步:足に魔力を集中させ、強靭な脚力により、空を蹴って空中移動を可能にする』
「あれ? 表示された……」
壊れてもう『スキル』の詳細が知れないと思っていたら、駄目元で押した『空步』の説明がステータスボードに表示される。
壊れていない?
俺は次に『黄絶化』をタップしてみる───変化無し。
「………ん〜?」
また『黒赫化』に戻ってタップ───変化無し。
やっぱり壊れたか?
今度は元々表示がされた『気功術』をタップ───説明がステータスボード内に表示される。
「え〜?」
訳が分からず、それからも色々タップしてみて───結果分かったことは、
・種族欄、『黒赫化』、『黄絶化』はタップしても表示されない
・その他はタップすればきちんと表示される
ということのみ。
文字化けしている種族欄、これも訳が分からず長押ししてみたが反応無し。
でも、この三つ以外は長押しすれば説明が表示された。
ということは、だ。この三つは説明不可なだけで、ステータスボードは壊れていないと考えるのが自然、か?
「………」
駄目だ、考えてもさっぱり分からない。
……やめよ、考えても分からないことをいつまでも考えていたって時間の無駄だ。
今はこれからやらなければならないことについて考えよ。
さて、今の俺の状態だけど……手ぶら。
長期間ネフィサファ鉱山に潜っていたにも関わらず成果無しの状態だ。
化け物と倒した後、一刻も早く外の空気に触れたいという考えのみが先行して、結局宝石類など発掘せずにそのまま出てきてしまった。
当初、小銭稼ぎとしてネフィサファ鉱山に足を踏み入れた、にも関わらず、帰りは化け物を倒した時に手に入った鉱物のみ。
収入無し、どころか、ギルドで借りた戦斧まで壊してるんだから完全にマイナスだ。
このままじゃ帰れない。
「ッスーーーーーー」
俺は後ろにあるネフィサファ鉱山の入口に振り返る。
「戻るか」
ということで、俺は宝石採掘のため再びネフィサファ鉱山へと入っていった。
□□□
あの後、ネフィサファ鉱山の深部へと潜り、何往復もして宝石を採掘しまくった結果、やるのが途中から楽しくなって止まらず、宝石を入れて直径一メートルぐらいまでパンパンに膨れ上がった袋が三つもできあがってしまった。
流石にこれを一度に持って帰るのは無理だ、と考えていた所で、丁度鉱山近くに放置されていた荷車を発見。ありがたく使わせてもらうことにした。勿論、換金が終わったら荷車は元あった場所に戻すつもりである。
「あれの換金、お願いできますか?」
そうして、ギルドまで荷車を押し、その入口近くに荷車を置いて、俺は受付嬢さんに換金をお願いしていた。
「………坊主か?」
「へ?」
不意に隣から声が聞こえ、振り向くと、そこには以前お世話になったガルクさんが、まるで幽霊でも見るかのように目を見開かせて、こっちを見ていた。
「あ、ガルクさん! お久しぶりです」
「お、おぉ……そう、だな……? 久しぶり……??」
久々に、ガルクさんという親しい人に出会ったことで、なんか嬉しくなって元気に挨拶をする。
しかし、それを受けたガルクさんは、どこか戸惑うようにぎこちない表情をしていた。どうしたんだろう?
「ちょ、ちょっと待って……」
と、そこで、僕の前にいる受付嬢さんが肩を震わせていることに気付く。
「あ、貴方! ユウキ=ラクトさん!?」
「うぇ!? は、はい……そうですけど?」
「───」
突然、受付から身を乗り出してそんなことを訊いてきた受付嬢さん。
それに驚きながらも、正直に答えたが、それに対し、その答えを聴いた受付嬢さんは呆然としてしまった。何なんだ本当に?
「す、少しお待ちください!」
と思ったら、受付嬢さんは慌てて奥に引っ込んでしまう。
「………」
今度は僕が呆然と見送っていると、
「な、なぁ坊主」
ガルクさんが話し掛けてきた。
「坊主は、ネフィサファ鉱山にいたんだよな?」
「え、はい、そうですけど……何でそれを?」
「さっき聴いた」
いや、「さっき聴いた」って、守秘義務とかどうなってんの?
「その……大丈夫だったか? 一ヶ月帰ってないって聴いたぞ。やっぱり、ネフィサファ鉱山で何かあったか?」
「……」
おそるおそるこちらを気遣うように、ガルクさんがが質問をしてくる。
やっぱり、この人は優しいな。まだまだ、ランクで見た時、僕は底辺だ。そんな僕にも、こうやって心配してくれる。ほとんど他者と関わりの無い僕にとっては、本当に有難いことだ。
彼の問いに答えるため、僕は腰に取り付けた麻袋から、あの巨大な岩の化け物が落とした鉱石を取り出した。
「実は───」
「───ほぉ、珍しいな。星晶石か」
そこで、急に知らない人が、俺に話し掛けてきた。
「え、うわ!? ……誰? てか、せい、しょう……?」
「おいおいおい……珍しいとはこっちのセリフだぜ」
誰だか分からず困惑する俺とは裏腹に、ガルクさんは引きつった笑みを作っている。
どうやら、ガルクさんはこの人を知っているようだ。
「あの、ガルクさん。この人は……?」
「あ? そ、そうか……まぁ会う機会ねぇわな。聴いて驚け、こいつはなぁ───」
「この組合ギルドを任されている長、正真正銘ギルド長その人だよ!」
「───!?」
驚いて慌ててギルドマスターなる人の方を向くと、その男の人はニッコリとした笑みをこちらに返してきた。
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