第三十三話 心の進化・人間の退化
広間だけでは収まりきらない程の爆発が岩の化け物を中心に引き起こされる。
今までのとは比較にならない程の熱と衝撃が辺りを襲って、地面は黒く変色をし出し、壁───特に発掘路が掘られている部分はすぐに崩れ、広間が強制的に拡張される事となった。
「………ぐふっ……ガッ! ハッ!」
当然、化け物の近くにいた僕もその爆発に巻き込まれた。
爆発が起きる寸前、バックステップをして衝撃に身を投じ、受けるダメージを緩和したが、後ろに壁があっては受け流せる量にも限界がある。
壁に当たってからは諸に爆炎を浴びてしまった。おかげで全身火傷だ。髪も少し焼けたか。服もボロボロで……いや、少しでも残っただけ奇跡と言うべきか。
喉も焼かれた。呼吸するだけでつらい。体は、力を入れるだけで痛みが走る。
爆発が起きた際、見た。あいつの本体、黒い体がどの様になっているか。
あれに、形は無かった。
かろうじて人と同じ二手二足を保ってはいたものの、すぐに崩れてしまいそうな程 不安定で、流動的。
奴に、物理攻撃は意味を成さない。あぁやって、体を岩で固める必要すら無かったという事だ。
あの岩を引き寄せるという力は、奴にとってはただの性質でしかない。守る為では、なかった。
岩の化け物が、こちらを見下ろしている。すでに岩も全身に貼り付け直されていて、最初と何ら変わらない姿。
こんなにボロボロになっているというのに、僕は奴に何も与える事が出来なかった。それがどうしようもなく、奴との差を表現している。
勝て、ない……?
あぁ、クソッ………これで、終わりなのか?
「………」
終わり?
いや、終わっていい筈がない。
終わりという事は、諦めるという事。
……諦める?
ふざけるなよ……もう諦めるのは・もう奪われるのは、懲り懲りなんだ!
三週間、何の為にこの薄暗い地下で粘ったんだ……? 何の為に、あんなにもクソ不味い肉を喰らい続けたんだ?
生きる為だ。また陽の光を浴びて、“最強”を目指す為だ。
体は痛むし、呼吸をするのもつらい。だけど……まだ、命はある!
僕は地面に左手を着け、力を込める。
ここで諦める事は、過去の自分が・今までの自分が、許してはくれない。
右足を立て、闘志を奮い立たせる。
立て!
この命尽きるまでっ、何もかも諦めるなぁ!
俺はァ───
体を起こし、剣を握る。
───“最強の騎士”となると誓ったァ!!
「お゛ぉオああ゛あ゛ぁぁぁぁぁ゛ぁ゛!!!!」
俺は全身に力を入れ、化け物と相反する様に、焼かれた喉を震わせながら咆哮をくり出した。
───ユーザーの心理力がセキュリティを突破しました。
───五箇条制門の一つ、序門が解放されます。
───アバターの数値を初期化、現段階で蓄積され・成長援助として換算されていなかった魔素量を計算し直し、換算可能上限までアバターを強化します。
───禁書観念的身体能力値表示板Ver.1.25起動。
───警告、アバターの種族限界に一段階近付きました。後四度の覚醒を繰り返す事で、アバターは完全に悪魔へと変貌します。注意してください。
ラクト=ユウキ 種族 (人間) 年齢:16
レベル:23 取得経験値量:438291
筋力 :5121
瞬発力:6039
体力 :4523
魔力 :60001
出力 :1023
抵抗力:21431
スキルホルダー:気功術
:気功剣
:黒赫化
スキルリスト
《パッシブ》魔素完全適応
《チョイス》気功術Lv.23
《チョイス》気功剣Lv.17
∟《チョイス》属性解放剣術Lv.11
∟火
∟風
∟雷
∟水
∟土
《チョイス》自爆術
《チョイス》縮地Lv.9
《チョイス》測定眼Lv.7
《チョイス》斬鉄術Lv.4
《チョイス》刺突術Lv.3
《チョイス》発勁Lv.3
《チョイス》剛体術Lv.2
《チョイス》黒赫化 NEW
「おぉお゛おおお゛お゛ぉぉ゛ぉお゛ぉおおおおお゛お゛!!!!」
俺の咆哮に呼応する様に、岩の化け物もこの広間全体を揺るがす程の咆哮をくり出した。
この咆哮を聞いた時、俺は大なり小なり気圧されていた。レベル三十五になっても、この化け物の圧はとてつもなく大きなものであり、中々怖気付かずにはいられなかったのだ。
だが、今その恐れは無い。しっかりと前を見据え、奴の咆哮を真正面から受け止められる。
力が俺の体に流れ込んでくるのを感じる。いや、俺の内から込み上がってきているんだ。
そして、この力の使い方も、分かる。
左の拳に右の掌を当てる。そして、腕をなぞる様に掌を動かす。すると、なぞった所から左の腕が紅く光り出し───所々に赤い亀裂の入った黒い甲冑が創り出されていく。そして、肘の辺りまで甲冑が出来上がった瞬間、今度は体全体が緑色に光り出し、黒の長袖・黒の長ズボン・黒のマントといった黒い兵装が、まるで最初から装備していたかの様に現れた。
この力が何なのか・溢れ出る この力の正体とは───そんな事、今はいい。
戦える───この一点こそが、現状況において最も重要視すべき事だ。
ダメージが消えた訳じゃない。気を抜けば、今にも足は震え、倒れてしまいそうだ。
でも、抜かなきゃいい話だ。この戦いの決着がつくまで、俺の心が折れなければいいだけの事。
さぁ、やるぞっ。
俺は右手で握った鉄剣を構えた。
化け物が口を開き、淡い光を発し始める。
また光線爆破か。
スキルホルダー:気功術
:縮地
:黒赫化 カチッ
化け物が口の中に溜めた光を解放する。
僕はその光を回避する為、『縮地』による高速移動を開始。
光が地面に直撃して爆発が起きる。それを避ける為・そして化け物に近付く為、左斜め前に『縮地』。
当然化け物もまた光線を放ってくる。だがそれを、今度は右へ行って回避。回避と前進、それを同時に繰り返す。
化け物の放ってくる光線は速い。目視してからの回避じゃ間に合わない。それに強力。巻き込まれた瞬間、そこにあった物を焼き消してしまえる程の高温と衝撃。
だが、その分 単調だ。放ってくる前でも、ある程度の予想がつく。『縮地』が使えれば、回避はさほど難しくない。
化け物が先程行った全身の体発火。
その際、身に纏っていた岩が全て剥がれ、奴の体が固形物でない事が分かった。けれど、それと同時にもう一つ見たんだ。奴の体、その胸部が、強く紅く光っている事を。
いくら確固たる肉体が無かったとしても、生物である以上、心臓部となる核が存在している筈だ。
そこを、叩けば───
「うああぁああ゛ぁあぁああ゛あああ゛あ゛!!!!」
化け物の光線放出速度がどんどんと速くなる。
たたでさえ目視では捉えられない攻撃が、さらにスパンが短くなって行われていく。
これがどれ程の脅威か。
だが、それを俺は左斜め・右・時には爆破範囲ギリギリ上を跳び越えて、全てをかわしていく。
一発も食らえない。だから、意地でも回避を断行する。
そして回避を続けていく事 十数回───遂に化け物の背後へ回る事に成功した。
化け物の後ろの壁を駆け上がり、化け物の頭部と大体同じ高さに来た所で───
「───!」
化け物が振り向きざまに腕を振り回し、俺がいた部分の壁を、腕を体発火させる事で削り取った。
俺はすでに攻勢に移っていて、化け物に跳びこもうとしている所での攻撃。そんなタイミングでの攻撃だ、必中不可避
───と思えたかもしれないが、俺はそれを斜め上に高く、化け物の頭上を軽々と跳び越える事で回避して見せた。
攻撃がワンパターン過ぎるぜ。
そもそも俺はまだ攻勢に移ってはいなかった。来るって分かっていたから。光線ではなく、体発火による攻撃が。
そして、これは回避だけでは終わらせない。
前の俺ならやろうとも思えなかった。
だけど、今の俺なら───出来る!
スキルリスト
《チョイス》空歩 NEW
スキルホルダー:気功術
:空歩
:黒赫化 カチッ
俺は瞬間的に脚───母指球に魔力を通す。
行くぞぉ!
俺は空を蹴った。
無防備になった背中。
この好機、逃しはしない。
俺は化け物目掛けて一気に跳んでいく。
スキルホルダー:気功術
:気功剣
:黒赫化 カチッ
愛用の鉄剣に魔力を通す。
それに呼応する様に、鉄の刃は淡く光り出して。
今の俺の身体能力で、斬れ味の上がった この鉄剣を、奴の胸部にぶつける!
「取ったァァァ!!!!」
俺が化け物に肉迫して、鉄の剣は簡単に奴の岩の衣を斬り裂き、そして振り切り、俺の体は化け物の体を通り過ぎた。
これだけを見れば、俺が奴の体を完全に裂いて、その隙間を俺の体が通った様に見えるだろう。
俺の刃は奴の心臓部を斬り裂き、俺が勝利した───そう見えるかもしれない。
「───」
でも、違う。俺の体は、正しく通り過ぎただけ。粘着性のある流動体の中を、通っただけ。
奴の核と思えた部分、紅い心臓部───そこも、個体ではなく液体だった。
俺の刃は、奴の命には届かなかった。
ほんの少しの間、静寂が訪れる。
何故か止まっている岩の化け物と、奴の体を通り過ぎて落ちる俺。
でも、すぐに状況は変わって、まるで気を取り戻したかの様に化け物が動き出し、俺目掛けて その岩の手を振り下ろしてきた。
岩の手は俺を巻き込んだまま地面にぶつかり、爆発を起こす。
それで化け物が止まる事はなく、次々と掌を僕がいる地面に向かって叩き下ろしてきた。
次々に起きる爆発の連続。それはまるで、この化け物の怒りを表現している様だった。
ただただ、僕は、その怒りを受け止める様に、何回もその張り手と爆発を受け続けた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
もし少しでも面白いと思っていただけたら、ブクマ又は感想等 貰えると嬉しいです。作者自身、自己顕示欲の塊みたいな者なんで、貰えると滅茶苦茶 励みになります。
また、誤字や辻褄が合わない点などがあれば即修正に入ろうと思いますので、言って貰えると幸いです。
よろしくお願いしますm(_ _)m。
次回更新日や更新時間を知りたい方は、私の活動報告やTwitterで色々と呟きをしていますので、そこを見てくださればと思います。プロフィールに行けばTwitterのURLや活動報告が確認出来ると思いますので、気になる方はそちらに飛んでください。
それではまた次回の更新で。





