第三十二話 実態無し
「……」
まだ煙は晴れない。
『属性解放剣術』を使ってから少し経つけど、未だにアクションが無い……? 流石にあれ一発で倒せるとは思っていなかったけど、僕が考える以上に威力が出てたのか? 倒せちゃ───
「───!?」
そうやって惚けそうになった所で、急に洞窟が揺れ・近くから大きな爆発音が聞こえてきた。しかも、一度だけじゃなく複数回、いや、収まる気配が無い……!? これは、まさか!
化け物の体発火。何度も壁に手を打ち付けて爆発を起こし、壁を削っているのか!?
確かに、化け物の大きさじゃあ僕のいる洞窟内に入るのは無理がある。だからって、無理に削って侵入範囲を広くするとか無茶苦茶もいい所だろ!?
スキルホルダー:気功術
:気功剣
:縮地 カチッ
僕は駆けて一気に洞窟から広間へと出る。
幸い、化け物はまだ壁を削るのに夢中。わざわざ削り終わるのを待ってやる必要は無い。
化け物の股の下を通り、一度化け物を通り過ぎる。
そして止まり、方向転換。化け物の背中へ跳び向かう。
「───」
だが、僕が跳んで離陸した瞬間、化け物がこっちを向いた。まるで、こっちに僕がいると確信した上での行動。やばっ───
「───っ!?!!?」
化け物が腕を薙ぎ、それが僕に直撃する。瞬間体発火。空中にいた僕は上手く対応出来ず、腕の振りと爆発の衝撃によって右に弾き飛ばされてしまう。広間の壁と僕の体が衝突すると壁に亀裂が入って凹み、ほんの少しだけそこで留まると僕の体は自由落下を始めた。その後地面に直撃し、僕は倒れる。
「───っ、ぐっ、がっ、っっ」
体を圧迫する様な痛みにより上手く息が出来ない。目もチカチカする。起き上がろうにも腕は震えるだけで僕の体を支えてくれない……!
「───!」
と、そこで光を感じる。化け物が僕目掛けて光線を放とうと準備していた。
「───っっっ!!!!」
僕は痛み関係無しに力み、化け物は光線を放つ。だけど、僕の方がほんの僅かに早かった。『縮地』を使用、光線爆破の範囲外まで左に移動して───改めて化け物の方を見て鉄剣を構え直す。
「…………っ」
しかし、俺の体は痛みに耐えきれなかった。膝から崩れ落ち、鉄剣を落として四つん這いになってしまう。
一発で……これかっ。スーサイドロックの非じゃないな、分かっていた事ではあったけど。
これ以上ダメージは貰えない。次食らったら、きっと立てなくなる。
鉄剣を握り直し、立ち上がった。
「……お優しいね、待っててくれたんだ」
言葉は伝わらないだろうけど、ハッタリの意味を込めて笑みを浮かべる。
化け物はこっちの様子を伺い、尻尾の様な部分を左右に揺らしていた。本体が動いてない分、嫌でもそっちに注目が行ってしまう。
「で? まだ来ない───」
尻尾に行っていた目線を戻し、化け物の顔を見上げる───と、すでに化け物は光線を放つ為に準備していた。
「───っ!!」
『縮地』を使用。それと同時に化け物が光線を放つ。
僕は左に向かい、また爆発を避ける。熱と爆風を背中に受けながらも、何とか体勢を立て直して走り続ける。
化け物の攻撃は続く。再度口内にエネルギーを溜め光線を放ってきた。
僕はまた『縮地』でかわす。だが、跳び位置は前方ではなく斜め上、壁のある程度高い位置だ。
ここは広間、確かに発掘路に比べると広いが、それでも限界がある。だから、途中で方向展開をしないといけないが、走っている最中の方向転換は時間のロスに繋がる。この化け物の光線の前では、そのロスこそが命の危険に繋がってしまう。
どうしても方向転換はしなければならない。だが、方向転換時には必ずロスが生じてしまう。ならば、そのロスを少しでも無くし、そしてロスが生じてもカバー出来る様に動けばいい。
『縮地』の連続使用。移動後、またすぐに『縮地』が利用出来る体勢になる。
僕は『縮地』により壁───化け物の目線と同じぐらいの高さにまで来ていた。
化け物がまた僕目掛けて光線を放ってくる。瞬間 僕も『縮地』を使用。今度は化け物に向かう様 移動する。
後ろの壁では光線が達して爆破が起きている。洞窟を振動させ、爆発しても収まりきらなかった衝撃が四方八方に伝わっている。だが、その衝撃が後押しとなって僕と化け物の距離がさらに縮んだ。
僕はすでに剣を後ろに引いて振り被っている。このまま化け物の頭部へと接近して斬り裂く勢いだ。
だが、化け物による度重なる爆発の影響で広間には煙が立ち込めている。煙により視界が遮られている箇所が多い───死角が多い。
まるで煙から突如現れたかの様に化け物の右腕が僕目掛けて迫ってきた。
死角からの攻撃。僕は空中で上手く身動きが取れず、しかも自分の攻撃に意識が向いてしまっている状況。かわせない───
そう、普通ならば。
腕が迫ってきた瞬間、僕は空中で身を捩って見せた。それにより迫ってきた化け物の腕の上を転がり、攻撃を回避。
まさか かわされるとは思いもよらなかったのだろう。僕が丁度 腕を転がり終えた所で体発火が起きる。
遅れた体発火の爆炎は僕には届かず、衝撃は僕と化け物の距離を離す手助けをする形となる。
僕は予想していた───化け物の近付かれた際の対処行動を。
最初の攻撃時、化け物は光線ではなく腕の薙ぎにて僕の攻撃を対処していた。
何故明らかに威力の高い光線爆破ではなく、横薙ぎからの体発火で処理する事を選択したのか───それには二つの理由があると思う。
まず一つ目は準備時間。先程までの戦闘風景から考えるに、あの光線攻撃は連続して使用出来ない。必ず、一回一回の間に少しだがタイムラグが生じている。あの威力の高い攻撃はノータイムでは放てないという事だ。
そして二つ目、これは距離だ。威力が高いという事は、それだけ規模もでかい。そして、そんな大規模な攻撃を近距離で行ったのなら、当然巻き添えを食らう。僕の『自爆術』と似た様なものだ。
だから僕は、光線が放たれた直後、一気に接近した。この距離ならまず光線は撃てないだろうし、何より溜めが足りていない。必然的に、腕の薙ぎになると推測した訳だ。
死角からの攻撃でも、ある程度 来ると予測していたならかわせる。
僕はそのまま地面に着地。そして、すぐに駆け出した。
かわすだけじゃ勝負には勝てない。しかるべき所で反撃も行う。
攻撃が空振り隙だらけとなって、尚且つ煙の多いこの状況───僕の攻撃は必中となる。
まずはその左膝、もらうぞ!
スキルホルダー:気功術
:気功剣
:属性解放剣術 カチッ
剣の内部に魔力を集中。だが、まだ解放して周りに纏わせる事はしない。
僕は踏み込む足から順に魔力を通していき体を強化。
後ろに引いて振り被っていた剣で勢いよく横薙ぎを行った。
今の僕のレベルなら、気功術を使用するだけで鉄剣でも岩を斬る事が出来る。
剣が岩に斬り込みを入れ・めり込んだ───所で、『気功剣』『属性解放剣術』発動。
溜め込んだ魔力を火へと変えて一気に解放───擬似的な爆発を起こす。
取った!
僕の剣が完全に化け物の左膝を斬り裂き吹き飛ばした───
「───」
あれ?
そこでおかしさに気付く。
確かに物質を斬る感触はあった。岩を斬り裂く感触は、しっかりと感じた。
だが、体を───肉を斬り裂く感触はしなかった。その代わりにあったのは、流動性のある物質を横切った様な柔らかい感触だけ。
なんで……?
その瞬間、化け物が体全体で体発火を起こした。
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