第二十七話 戦斧VS大剣──ではない!?
僕の戦斧とマサニの大剣がぶつかる。
その衝突により、洞窟内では眩い火花と、耳を劈くような金属音が鳴り響いた。
僕の武器とマサニの武器の衝突は一瞬で、すぐにお互いの武器が弾かれる。
しかし、確かに感じた手応え。お互いにお互いの武器を弾いた。だが、その実、ほんの僅か、ほんの僅かではあるが、僕の方が少しマサニの大剣を押し返していた。
『気功術』を用いた状態であれば、僕はマサニだって力負けしない。それが確認できた。
大剣を弾かれた際、マサニは驚いた顔をしていた。
まさか、真っ向から立ち向かい、そして、競り合ってくるとは思っていなかったのだろう。
マサニの体勢が整っていない。
攻めるなら、ここ!
「───っ!」
薙ぎのような連続攻撃。
マサニの体を弾き飛ばすよう、僕は何度も武器を振るう。
流石のマサニも、戦斧の攻撃をもらうのはよしとしなかったようで、大剣を盾にして防御に回った。
僕の戦斧と、マサニの大剣がぶつかり合う度、鋭い金属音が洞窟中に鳴り響く。
攻めているのは僕。レベルアップと『気功術』によって強化された肉体で攻撃を叩き込んでいるため、流石のマサニも衝撃を全て受け止めることはできなかったようだ。大剣で受ける度に少し後退している。
このまま攻撃を叩き込んで、マサニの防御を崩せれば───勝てる、勝てるぞ! 僕が、あのマサニに!
勝利の希望が見えた。
この命懸けの戦いに、終わりが見えた。
僕は歯を食いしばり、マサニの防御を崩すため、渾身の一撃を叩き込ん───
「───っっっ!!!!」
瞬間、世界が反転した。
「───がっ、はっ」
違う、世界が反転したんじゃない。僕の視界が目まぐるしく変わったんだ。
いつの間にか、僕はダメージを受けて宙を舞い、地面に転がっていた。
幸い、武器は手放さなかったため近くに落ちてるが………一体、何が起きた???
痛みで悲鳴を上げる体をなんとか動かしながら、僕は顔を上げる。
すると、そこには、さっきとは反対の位置で移動を終えた体勢のマサニが見えた。
どういうカラクリだ……? 一体、どうやってあそこに移動したんだ??
とにかく、立ち上がろうと片膝を立てよう───とした所で、
「───!?!!?」
また一緒でマサニが移動した───僕の目の前に。
「くっ!!」
咄嗟の判断で、僕は戦斧を盾にする。
すぐにマサニによる斬り上げがくり出された。
立ち上がっている最中、つまりは油断していた所で、いくら武器を盾にしたとはいえ、マサニの強力な一撃を受けた。
僕はほとんど衝撃を受け止めきれず、一気に後ろへ吹き飛ばされる。
地面と水平に飛ばされ、その後地面を転がされ。
なんとか武器は手放さなかったとはいえ、このまま戦闘を継続するなら、すぐに体勢を立て直すことが必要で。
体に走る痛みを無視して、僕は顔を上げ───
「───」
そこで、見た。
再びマサニが僕の目の前に急接近。
今度は大剣の振り下ろし。
戦斧で受け止めようとしたが、やはり衝撃に耐えきれず、また後ろへ飛ばされる。
「………」
あぁ……そうか。
飛ばされながら考える───マサニの力を、『スキル』の正体を。
僕は、見た。マサニが僕との距離を詰める際、二度、瞬間移動するのを。
いや、厳密には瞬間移動ではないのかもしれない。並の人には全く捉えられない速度で移動する『スキル』。
『スキル』……『スキル』か。どおりで……詰めるのが速い筈だ。
おそらく、『指定先へと素早く体を動かす』とかそんな能力ではなかろうか。
戦いという、一センチ・一ミリが重要な世界では───なるほど、確かに凶悪な『スキル』だ。
その『スキル』のせいで、現に、優勢から劣勢へと追い込まれている。
“技”という可能性もあったが、見るからに“気功術”を扱えている感じはしない。
ガルクさんと戦って、他の修練生と戦って、感じた僅か差。それが何かはよく分かっていないが、けど、明確な差があった。
それを、マサニからは感じない。マサニはきっと“気功術”が使えない。
確かに、この『スキル』だけでも十分凶悪だ。
他者よりも卓越した筋力も相まって、とても厄介なものへとなっている。
おそらく、他にも『スキル』があるんだろう。
だが、この『移動スキル』、明確な弱点がある。
それは───
マサニに吹き飛ばされた。
けれど、今度は空中で半回転して、着地と同時に体勢を立て直す。
そして、また距離を詰めようとマサニが視界から消えた瞬間、半歩前に出た。
マサニの『移動スキル』の弱点、それは、『移動中は途中で止まれない』と、『移動距離がかなり限られる』こと。
先程、高速移動で吹き飛ばされた際、体当たりをするよりも移動中に大剣を振るった方が、戦いを有利に進めた筈だ。大剣の当たり所が悪ければ、最悪致命傷。そこで決着がついていた。
あの時、僕を吹き飛ばした後、すでにマサニは大剣を構えていた。つまり、あの『スキル』発動は、苦し紛れの選択ではなく、優位を取るための攻めの一手だったということ。尚更、移動中に大剣を振るわなかった意味が分からない。
他にも、わざわざ大剣を振るう前に移動をやめる意味が無い。マサニは、攻撃する前、いちいち僕の目の前に現れてから行動していた。どれも、移動しながら攻撃していた方が有利を取れていた筈だ。
つまりは、『スキル』発動時、マサニは移動以外の行動が取れない。
さらに、移動距離の制限。マサニは、吹き飛ばした僕との距離を詰める時、二度『スキル』を使って接近してきた。
わざわざ一瞬で距離を詰めれる『スキル』があるのに、二度に分けて接近する意味とは? それは、『スキル』に制限があるから以外に考えられない。
連続で発動可能な『スキル』故に、移動距離の制限。釣り合いが取れている。
吹き飛ばされて、少し距離が空いている。吹き飛ばされる心配は無い。
移動中に大剣が振るえないなら、攻撃する前に一度止まる筈。
なら、半歩前に出て、マサニの狙いをズラす。そして、僕が先に───攻撃をぶち込む!
「───!!」
マサニが目の前に超移動してくる。
しかし、そうして移動してきたマサニの顔には、驚愕が浮かんでいた。
もらった!
僕が先に戦斧を振るう。
上段に構えていたマサニだったが、まさか先手を撃たれるとは思っていなかったようで、攻撃を中止して急いで大剣を下ろし盾にする。だが、そんな防御で僕の攻撃を受け止められると思うなよ。
戦斧と大剣がぶつかる。
そのまま僕の戦斧がマサニの大剣を払い、その影響でマサニが体勢を崩し、後ろへたたらを踏んだ。
よし、もらった───
「───っ!?」
追撃を仕掛けよう───と思った所で、強い衝撃が僕を襲い、吹き飛ばされた。
「───がっ」
吹き飛ばされ、倒れ、そして、痛みで体が悲鳴を上げながらも、なんとか顔を上げる。
マサニがいつの間にか体勢を立て直している……?
───そうか、高速移動の『スキル』! あれは、体勢を崩していても使えたのか!
体勢を崩した所で、『スキル』により移動。高速で僕にぶつかり、吹き飛ばした。
体勢を崩していても使える『移動スキル』とかありかよ!?
いや、反省は後。また───来る!
僕が立ち上がった所で、またマサニの姿が視界から消えた。
また高速移動の『スキル』。
僕は再び半歩前に。
次は同じ失敗をしない。
体勢を崩したら、即座に間合いを取る。
そして、隙をついてマサニの背後を取れれば。
高速移動で飛んでくるであろうマサニに対し、僕は右から戦斧を薙いだ。
「───」
しかし、予想に反し、目の前に飛んでくると思われたマサニは、その実、僕の右側へと、屈んだ状態で飛んできた。
当然、予想を外された僕の攻撃は空振り。マサニに至近距離で隙を見せてしまった。
「しまっ───」
すぐに体勢を立て直そうとするも、抵抗虚しく、マサニに首元を掴まれ、
「がっ───」
投げ飛ばされてしまった。
───そう、投げ飛ばしだ。
ネフィサファ鉱山は、その名の通り、昔は鉱山として炭鉱夫により掘られていた。山には穴が開けられ、土は削られ、魔石が発掘されていた。
そうして、魔石がいくつも産出した所で、さらに彼らは気付いた───地下には、さらに高価な鉱石が眠っていることに。
それに気付いた彼らは、すぐに行動に移した。鉱山のど真ん中に、大きな穴を開けたのだ。
直径100メートル以上はありそうな大穴。この大穴から、炭鉱夫は下に降り、鉱石を発掘していた。
僕は、マサニとの戦闘により、奥へ奥へと進んでいた。相手を追い込むため、前進していた。
それにより、その大穴の近くにまで来てしまったいたのだ。
わざわざ隙をついたのに、大剣を振るわず、僕を投げ飛ばした理由、それは───
「うわあああぁあぁあぁぁぁ……」
その大穴へ、僕を落とすためだった。
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