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俺と幼馴染みは修復する

 人間というのは、簡単に煩悩を振り払うことはできない。

 俺の住んでいる部屋とほぼ同じ作りの部屋を見渡したあと、天井を仰ぎ切にそう思う。横ですやすやと眠る少女、榊を見てそう思う。

 幾ら俺の美形耐性がSへと成長したからといって、それは普段の黒い鮮やかな長髪を見慣れているからそこまでの効力を発揮するのであって、完全に印象の違う――ショートカットの髪型をした榊は、当然対象外な訳であって、俺の精神力をガリガリ削ってくる。そもそも、美形耐性はあくまでも『耐性』な訳であって、その理性の崩壊を完全に防ぐものではないのだ。極僅かにだが、徐々にダメージは食らっているのだ。俺のメンタルが。

 日が沈み、日が上ってくるまでの長い時間を一人で待機し続けた俺を誰か誉めてください。俺の精神力の強さに全俺が感動した。

 しかし、まだ日が登ってきただけなのだ。それでも、少しばかり終わりが見えてきて気が楽になった。

 太陽が登ってくるまでは、彼女に触れた瞬間、社会的に死ぬかもしれないという恐怖が理性を上回っていた稀有な時間だった。まぁ、横で穏やかに寝ている榊を見るだけならば、危害は加えられないだろう。

 ……本当に大丈夫だろうか。あと数十分して、起きたときに拒絶されるかもしれない。冷静に思い返して見れば、昨日の一件。一件落着とは言ったが、榊は俺の返答を聞いて泣いて眠ってしまっただけで、俺は彼女の返答を聞いていない。そう、彼女の言葉を聞いていないのだ。自分でも、焦っていたのか彼女が制服の裾を掴んだから、勝手に安堵してそう決めつけてしまったが、実際のところは分からないのだ。


「……神座…」


 横にいる榊が俺の名前を呟いたので、起きたかと思ったら、寝言だった。どうやら、嫌われてはいないと考えてもいいのかもしれないようだ。ちょっと、自分でも何言ってるのか良く分からない。とりあえず、たぶん嫌われてないと思ったという旨を伝えたかった訳です、はい。嫌ってるようなトーンではなかったから。

 むしろ、親愛とかそういった感じの――自惚れっていうのは分かっているけれど。彼女に嫌われていないと考える方が楽だし、そうであってほしいという願いも込めて、今日ばかりは自惚れることにする。

 時間が刻々と過ぎて行く。俺の瞼は睡魔との戦いによって、大ダメージを受けている。

 救護班、医療班早く。正直、もうヤバイんですよね。今すぐ寝れるレベル。若い奴は、深夜まで起きてても大丈夫とかいったやつ誰だよ。知らね。誰かが言ってたのだろうか。

 …………。


「……はっ!」


 ヤバイ、今のはマジでやばかった。ちょっと寝てた。仮眠ならぬ半眠してた。ここで寝たら、色んな意味で死ねる!

 というか、時間が既に六時だ。俺はいつまで裾を捕まれたまま待機していれば良いのだろう。トイレに行きたくなってきたんだが。榊は目覚ましかけない派なのか?


「……うーん。おはよう、かん……え!?ど、どうして神座が居るの!?どうして私のベッドの上に居るの!?というか、なんで制服なの!?」


 朝起きて、そうそう詰め寄られた。やめろ、近寄るな。お前のその服装と髪型にはまだ耐性がない。近寄られたらドキドキするんだよ! 折角理性で本能を押さえつけてるのに、それを台無しにするきかよ!?


「ちょ、ちょっと落ち着け。お前が聞きたいことは分かった。とりあえず、お前の質問にはこう答えておこうか」


 そして、俺はタメをつくる。そう、名言の前のタメは必須!タメがあることにより、そのあとの印象がより深くなる! はずだ。すいません。適当に言ってました。本当は何も知りません。だが、既に作ったタメを無駄にする俺ではない。さぁ! お前の名言を伝えるんだ!


「榊が、泣いてて眠ったから」

「タメをつくる必要性は何処に!?あと、純粋にどや顔うざい! 」


 神座は1000のダメージを受けた。

 俺の心情。一気にライフを持ってかれるレベルである。く、罵倒っていうのは純粋にくるな……。あれで喜べる奴はツワモノだと思う。美少女に罵倒されるのは業界ではご褒美だと?悪いが流石に俺もそこまではマイナーじゃないんだ。ノーマルだからね?ラノベや、小説だって、メジャーなものしか基本読まないし。


「……まぁ、その。この前は悪かった」


 俺の唐突な謝罪。このタイミングで言わないと、いう機会を逃すか、シリアスになる。あんまし、そういうのは得意じゃない。できる限り、タイミング悪く。そうじゃないと、榊に悪い。


「はは、何が悪かったのか分かってる?」


 彼女はベッドから立ち上がり、ふわりとこちらを振り向く。昔の長髪が、見えた気がする。幻覚か。俺も相当疲れているようである。


「ま、神座は鈍感だから、何の事か分かってないんだろうけどねーー」


 図星である。が、鈍感とは失礼である。あの時の場面で、理由を理解できる奴がいたら紹介してほしい。大体、鈍感とは、対人関係において他者からの好意に疎い人間の事を指すと思う。すなわち、俺のように自分の発言の問題に気付けない奴に使う言葉ではないだろう。榊でも間違うことがあるのかと少し意外だった。榊もまだ、人間を辞めるつもりはないようだ。


「神座、私がどうして髪をばっさり切ったのか、分かる?」

「……分からないな。イメチェンとか?」

「……」

「……え、あ、俺が悪かった。悪かった! だから、無言で微笑むのをやめてくれ!」

「はぁ、しょうがないなー神座は」


 まるで、駄目な子を見るような目で見られた。泣きたい。だが、俺の表情筋は働かない。というか、俺の瞳が乾いてる気がする。中途半端なハイライトはこれのせいかもしれない。あと榊の目が笑ってなかった。威圧感がなんか凄かった。……これじゃ、小学五年生の感想だな。


「まぁ、神座が私が髪を切った理由が分からないのは分かってたけどさ。でも、もーちょっと自惚れてもいいんだよ?」

「……はあ。良くわからんは、自分に自信をもてっつーことか。分かった」

「……絶対に私の言いたいことは伝わってない……」

「ん?なんか、言ったか?榊」


 榊が何か呟いていたようだが、全く聞き取れなかった。何故だ、何故急に聞こえなくなった。まさか、なんか、耳の病気!?こ、怖い。……自分でやると、キャラに合わないことが良く分かる。俺のキャラはもっとこう、シニカルでクールな感じなはずである。最近では、主人公然とした幸崎に絡まれまくっていたが、俺のモットーは、傍観と静観と諦観であったはずだ。つまり、見てるのが好きな黒幕体質である。って駄目じゃん。黒幕とか最後に出てきてやられちゃうじゃん。表舞台に引きずり出されるところを考えてみても、俺とほぼ完全に一致している気がしてしまう。あー、俺やられちゃうのかー。まぁ、榊がいるから大丈夫だろう。


「あ、神座。今日の朝御飯家で食べていきなよ」

「ん、いいのか?なら言葉に甘えさせてもらうよ」


 普段ならあり得ない状況に、全俺が感動した。榊の手料理が食べられるとか、マジで幼馴染みやってて良かった。決して餌付けされた訳じゃないし。全然、榊の手料理に期待している訳じゃないし。男がツンデレても気持ちが悪いだけ(勿論、楔とかだと話は別だが)なので、ここら辺でやめておこう。実際はかなり嬉しい。嫁に来てほしいレベル。いった瞬間、彼女の父親に八つ裂きどころか細切れにされてしまうけど。俺は、キッチンに向かい、台拭きでテーブルを拭き、テレビのニュース番組を見ながら榊の手料理をとても楽しみに待機していた。

第二十三話。

榊さん復活。まぁ、メンタルが大人なので頑張って神座君の台詞を許容したのでしょう。

地雷踏まれて嫌わないとか、なんて聖女。

……自分で言ってて虚しくなりますね。

仲直りさせれて良かったです。正直、少し無理がある気がしますが、そこは榊さんだからで許容していただけると嬉しいです。

次回は、残念なあの人が登場の予定。予定は未定。よろしくお願いします。

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