表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/41

俺は幼馴染みコンビに激励される

授業も終わり、クラブ活動。今日は楔と諏佐原が鍵を取りに言っていたようで、部室の扉は開いており、中に入る。案の定中には楔と諏佐原がいて、入ってきた俺の顔を見て楔が口を開く。


「酷い顔してるね、神座」

「…そうか?見てくれは悪くないと思うんだが」

「あぁ、いや。僕が言ったのはそういう意味じゃないよ。こう、自分は悪いことをしてしまった、みたいな。そんな感じの雰囲気って言うか、顔に書いてあるって言うか」


彼は、俺の顔を見てそう言ったきり、俺から視線を外し、諏佐原と会話を始める。楽しそうに会話するその姿は、俺の心中を言い当てた人間のものとは思えないほどに鮮やかで、まるで世界が輝いて見えているかのようだった。……俺の顔の表情筋は榊に言われるほど動かない。動いたとして、月に二、三回程度で、時間にしたら五分もないだろう。動いたとして、長年幼馴染みをやって来た榊が分かるか分からないかレベルのことも多い。俺は、頬を触り普段との感触の違いを確かめるが、俺には普段とどこが違うのか何一つ理解できなかった。


「神座。僕は君を友人だと思っている」

「……今さら何をいってるんだよ?」

「困ったことがあるなら助けてあげたいとも思う」

「……」

「――でも、それは神座自身の問題だ。何を抱えているのかは知らないけれど、君が動きたいように動けばいいと思う。いや、君は動くべきで、動かないのは最悪だ。結果があって、初めて改善の余地が生まれると僕は思うんだ」


楔の言葉は、真っ直ぐで、純粋に格好いいと思えるものだった。しかしながら、俺には真っ直ぐすぎて、捻れて曲がって歪んでいりくんだ俺の心の奥底には届きそうもなかった。動くことができるのは、それこそ逃げ出さない勇気を持っている奴か、失うものが何もない奴だけだ。


「……神座君! 私は神座君が思った通りにすればいいと思うよ!!」


黙りこんでしまった俺に、そこで諏佐原は激励を俺に送る。楔に抱きついたままではあるが、その激励は俺の心の重荷を僅かばかりおろしてくれたような気がした。なんというか、こう、言葉は悪いが馬鹿っぽい奴がナチュラルに吐く言葉は、不思議と元気を分け与えられるようなそんな気持ちになる。元気というイメージも伴ってよりその効果が高まっているのかもしれない。諏佐原はそこで息継ぎをして、再び言葉を続ける。


「だって、楔がそう言ったんだからね!」


バカ丸出しの理論。しかし、諏佐原の口から放たれた言葉は、不思議と説得力があった。幼馴染みの彼女が楔と共に何を体験してきたのかは俺には分からないが、諏佐原にしか分からない楔への信頼感の現れとでも言うべきだろうか、それが切実に伝わってくる言葉だった。


「さてと、今日は部長もいないし解散にしない?ねぇ帰宅部副部長?」

「……あ、えっと。あぁ、そうするか?」


楔の台詞がいきなりすぎてどもってしまう。最近、喉の調子が悪いんだよな。などと考えながら、俺は楔の案に載る。


「じゃあ、副部長は先に帰っててよ。後輩たちには僕達から言っておくからさ」

「……悪いな、じゃあ先に帰るわ。鍵、よろしく」

「神座君! ファイトだよ!」


俺は、鞄を肩にかけ直し、見るからに全力で片腕をふる諏佐原に苦笑しながら、腕を振り替えし、片腕で楔に抱きつくその姿を見て、なんとも言えない気分になったのは秘密である。あれじゃあ、全部台無しだわ……。




階段をかけ上がる足取りは限りなく思い。ではなく重い。学校を出る段階まではよかったが、歩き続け、我が家(高層マンション)が見えた瞬間に、急に足が鉛のように重くなった。そして、次に榊に対してどう謝罪するのかを全く考えていなかった自分に気づき、しかしながら道の途中で止まるなんていう、普通に歩くよりも他の人の目に止まってしまうような行為を許容できるはずもなく、カタツムリもビックリの速度で、マンションまで移動してきた。普段なら、十分の所を三十分もかけたのだ。そんな速度で進んできた俺が、階段を一気に上るわけにも行かず、ゆっくり移動しているのだ。うん。これでもかけ上がってるつもりなのだ。五秒に一段進んだり進まなかったりしていたとしても、これは俺の心情的にはかけ上がっているのだ。エレベーター?お、俺は足腰を鍛えるためにつ、使わない主義なんだよ。


だが、こうやって、いつまでに愚図ってノロノロと移動するだけでは、俺の背中を押してくれた楔に申し訳ない。あと、楔の言葉をリピートしただけの諏佐原にも。俺は、意を決して階段をかけ上がった。が七階登ったところでその決意も折れた。か、階段が長すぎる。そもそも、俺はこのマンションの下層の一部を買い取っているだけなのでこの辺まで登って来たことはない。登ってきたら、榊に襲いに来たと勘違いされるのが嫌なのだ。それで、何もやっていないのに仕返しされるのも。


「くっそ……。エレベーター使えば良かった……」


しかし、あとたった二階登ればいいだけなのに、エレベーターを使うのはどうも。俺はここまで電気の力を使わずに登ってきたエコな男だ。それをここに来て覆すつもりはない。俺は文句を一人で呟きながら、榊の階まで登りきる。


「ふー。すっげぇ達成感」


俺は一人で達成感に浸りながら、榊の部屋を探す。来たことがないので、高校一年生の時、ここに引っ越してきたときに記憶した部屋番号へと向かう。俺は、記憶の番号と、部屋番号を照らしあわせながら、ここも違う、そこも違うと、進みながら、やっとこさ彼女の部屋を見つける。探した部屋総数、約20。隅っこの部屋だった。俺はここに来て、自分が何の言葉も用意していないこと思い出す。ええい、女は愛嬌、男は度胸(らしい)。俺は意を決して玄関の呼び鈴に手を持っていく――。


「痛っ」

「……神座?」


扉を開けて榊が出てくる。どうして、俺が来ることが分かったのだろう。というか、どうして扉を開けたのだろう。彼女はその長かった黒髪をバッサリと切っており、顔は目元が赤くなっており、泣き腫らしたことが伺える。白いレースの服を着ており、短いその髪には偏見とかが伴って些か不釣り合いに見える。


「よ、よう。これ、今日のプリントな」

「……うん」


出鼻を挫かれた俺は今日はもうやめようかなと思ったが、今日を逃したら、あとに残るのはこんな感じの雑務が大半を占める会話になるんじゃないかと思いとどまる。しかし、なんというか榊の今の状況を見るに、まるで失恋したようだ――女性にとって、髪は命のようなものだとどこかで聞いた記憶がある。そして、それを切るのは失恋した時も――だと。勿論、榊が髪を切っているのはもっと違う理由かもしれないし、俺が踏み込んだらいけない理由なのかもしれない。


「……どうして髪、切ったんだ?」


俺が聞くと沈黙が広がる。一秒、二秒と時間がたつにつれて、やはり地雷だったのだと気づく。しかしもう遅い。賽は投げられたのだ。時間を巻き戻すなど、俺にはできやしない。くるりと、ふわりと、彼女は後ろを振り向く。指で着いて来てと訴えかけている。俺と榊が奥まで進むと、彼女は再び俺の方を向く。


「……この景色を見て神座はどう思う?」

「うん?凄い高いなーと思うが」


彼女が指差したのは、高層マンションの最上階ならではの窓からの絶景だった――と、普通だったらそう答えると思う光景。別に俺は絶景だとは思わない。強いていうなら人がアリのようだ。とかか?まぁ、しかし榊もそんな答えをされては困ると思うので無難に返す。


「キレイとか思ったりは?」

「しない」

「じゃあ、私のことはどう思う?」


景色のことを聞いたのはこのための前ふりだったのか。確かに、直球でこの台詞を聞くのは勇気がいる。いや、ワンクッションはさんでも勇気がいることは違いないが。俺は一番最初に思い付いた言葉を、俺の言葉を待っている榊に告げる。


「俺の幼馴染み」


その一言が彼女にどんな影響を与えたのかは分からないが、彼女はボロボロと泣き出し、そして崩れ落ちてしまった。彼女の心境の変化は当然俺には分からない。俺には分からないが、眠ってしまった彼女に制服の裾を捕まれたまま、どうすることもできず、次の日まで待機した。一件落着なのだろうか?……一つ言えることは、昨今のスピーディーな(展開の早い)小説でも、こんな置いてけぼり感は感じないと思った。

第二十二話。

なんか、どうしようもなくなってしまった。

これでも何度か書き直したんですが……やはり見切り発車は良くないですね!

第一話から書き直した方がいいんじゃないかこれ……。

と、ちょっと鬱になってしまいましたが、きっと、恐らく、たぶんエタることはないので、最後までよろしくお願いします!

ジ ュ ケ ン ベ ン キ ョ ウ?

それは一体……なんでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ