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俺とサッカー部副部長は協力する

「っち。サッカー部部長は伊達じゃねぇな、やっぱ」


 倒置法を用いて、俺は彼の凄さを表現する。

 現在は体育の授業でサッカーの授業をしているのだが、当然、俺とペアに成りたい等と言う酔狂な奴はおらず、必然的に、同じ外れ者であり、余り者である幸崎とペアを組むことになっているのだが、やはりサッカー部の部長として認められてはいるその実力は伊達ではないのか、思ったところにパスが来る。彼と組むことになったときは、俺とは普段関わりがない奴まで、親指を立てて、健闘を祈っていた。こいつは一体どれだけの男子に嫌われるのだろう。少なくともここにいる、俺を除くサッカー選択者の十六人には嫌われているようだ。俺?榊と関わらないなら嫌いじゃないよ?

 俺が練習で幸崎にパスを出すと、彼の元へ届く距離の中間辺りまでボールが転がったところで、先生がホイッスルを鳴らした。


「ふぅ、やっぱり、簪は上手いな」

「……、世辞は止めてくれ」


 爽やかな笑みを張り付け、俺のプレイを好評価してくる幸崎。あぁ、うん。多分、俺はこいつの、きっとこういうところが余り好きではないのだ。宣戦布告しようと、対立しようと、それが終わった次の瞬間には仲良くなれる、言うなれば一昔前の正しい主人公みたいな対応が。良いことを言って、きっとそれで終わり。相手によって態度を変えることなんてほとんどなくて、女子相手にフラグを立てて、攻略してそれで終了。アフターケアなんて、思い浮かばないし、そもそも好意を寄せられていることに気づいていない。つまり、幸崎光輝という男は、そのまんま鈍感系の主人公なのだ。

 もし、フィクションであれば彼はご都合主義の名の元、クラスメイトの眼には好青年に映り、女子を侍らせていても俺は何の違和感も持たないだろう。だが、どれだけ現実離れした状況があろうとここはノンフィクションだ。誰の彼の眼に写るのは、現在進行形のドキュメントなのだ。だから、女子を侍らせる幸崎は他の男子に嫌われる。フォローってやつもないからな。恐らく、それをしっかりとやっていればここまでこいつが嫌われることもなかったのだろう。俺には、関係のない話だが。


「よーし、二チームに別れてゲームするぞ」


 そう言って、教師は俺たちサッカー選択者の十八人を九人と九人に分ける。この二チームで試合をするのだろう。俺は、幸崎の敵チームで、サッカー部の副部長と同じチームだ。彼の名前は、桔梗(ききょう)(きり)といい、なんというか、幸崎と似ているんだが少し違う爽やか好青年だ。明確な違いが俺に分かるわけではないが、常にキラキラしてる幸崎と違って、落ち着きがあり、スポーツしてるときに輝くみたいな感じ。彼は、俺のクラスとは違い、二年一組所属である。


「よろしくな、簪」

「あぁ、よろしく。桔梗」


 フレンドリーだ。

 だが、彼も幸崎のことを嫌っている。さっき、俺が幸崎とペアを組んだときに真っ先に親指を立てやがったからな。桔梗というこの男は、俺の推測するところ、幸崎と楔を足して二で割ったような存在だ。幸崎と違い、男子にも女子にも人気があるらしい。副部長という肩書きだが、実質は部長のようなもので、サッカー部が纏まっているのも、一重に彼のお陰と言っても過言ではない……はず。


「お前なら、幸崎を止めてくれると期待してるぜ、簪」

「えーと、過度な期待は困るんだがな。俺はサッカー部じゃないんだぜ?」

「中学時代のお前を知っている俺からすれば、これでも過小評価だよ」

「はぁ……、やるだけやってやるよ」


 全然、俺の話を聞いてくれない。過大評価も良いところだ。大体、現役サッカー部が元サッカー部に負けるとかあり得んだろう。どれだけ、練習サボってるんだよ。こっちはブランク一年あるんだぞ。一年生にならまだ勝てるかもしれないが、レギュラーやってたりする、幸崎とかに勝てるわけないじゃん。やるだけやると言った手前、それなりの成果は出さなきゃいけないな。


「二チームに別れたな?それじゃあ、試合開始!」


 桔梗から、キックオフでゲームを開始する。桔梗は俺にパスを出すと、全力で前に上がる。うわっ……超速ぇ。流石にあれには追いつけないな……。俺は、後ろの味方にボールをパスし、それなりに走り出す。


「うわ、ピッタリマークされてんじゃん俺」


 幸崎に、完全にマークされている。俺を抑えることにエース使うとか、彼らは馬鹿なのだろうか。明らかに人選ミスだ。幸崎は桔梗につけるべきだ。運動できる奴は、運動できるやつについて欲しい。幸崎の何もさせないという意志がひしひしと伝わってくる。俺、何か悪いことしたかな。正直、思い当たるふしがない。いや、嘘です。そう言えばデパートで盛大に喧嘩吹っ掛けました。さっき、爽やかだったから完全に油断していたが、根に持たれていたかもしれない。


「簪、パス!」

「おう、よ!」


 味方から来たボールを、パスの声に合わせ、直ぐ様に掃く。少し、タイミングがずれたが、大体あっていたのでよしとしよう。サッカー部のお株を奪うような真似はしたくないしな。奪えるなんて思ってもいないが。ボールを味方に捌いた俺は、走りだしDFを走って抜き去り、再びパスを貰い、ゴール前にいる桔梗にダイレクトパスをする。まだDFが数人残っているため、オフサイドではないはずだ。


「決めろ!桔梗」

「任せとけ!」


 俺は、俺にあるまじきテンションの高さで、桔梗に向かって叫ぶ。ボールを受け取った桔梗は、そのままDFをごぼう抜きにして、GKと一対一まで持ち込む。桔梗は、そのままシュートモーションへと移り、ゴールの右下のポストに当たるギリギリにシュートする。ゴールキーパーは左に飛んでいて追いつけない。


「決まった!」


 俺の属するチームの生徒の一人がそう言う。


「決めさせるかぁぁぁ!」


 ――だが、走り込んでいた幸崎が、スライディングでボールを弾く。


「……おいおい、まじかよ」


 そのプレーに、彼のことを散々過小評価してきた俺も感嘆を禁じ得ない。そして、それと同時に女子の歓声が上がる。その音は耳障りなことこの上なく、何故かは分からないが無性に俺を苛立たせた。いかん、いかん。落ち着け俺。クールだ、クール。冷静になれ。俺は自制心の強い男。女子の歓声がかけられないからどうした。お前らも試合してるんじゃねぇのかよと思ったが、ふと見ると、榊と空谷が同じチームで無双してた。あぁ、うん。現実逃避で俺達の試合を見ているのかもしれない。


「簪!」

「分かってるよ!」


 桔梗は、幸崎の弾いたボールに一番近い俺を向かわせる。対して、相手チームはそのまま幸崎がそのボールを取りに来る。


「っし!先とった!」


 先にボールに追い付いた俺は、なんとかボールをコントロールして、ゴールへと向かう。幸崎が向かってきているがそんなものは関係ない。俺は、彼をルーレットと呼ばれる技であっさり(・・・・)と抜き去る。


「一度攻撃止められたなら、もう一回チャンスを作ればいいだけだ」


 俺は彼に背を向けて、格好つけたみたいにそう呟いた。

第十八話。

サッカーのこと全然知らないのに、サッカー回を作るんじゃなかったと誠に後悔している。

というわけで、作者のためにもこんなのサッカーとは呼ばねぇ!と、思っても心の奥底に止めて置いてあげてください。

ついでに、新キャラ桔梗くん登場。

サッカー部の副部長。初登場なのに、既に主人公と意志疎通ができる謎。

何か続きそうな雰囲気を醸し出している神座くんですが、サッカーは次回には続かないと思います。

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