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俺と幼馴染みの遭遇する

 俺と榊は、幸崎との邂逅の後も様々な店を回っていた。流石に女性ものの下着売り場だけは勘弁させて頂いたが。俺が頼み込んで簡単に断ったところを見ると、実は用はなく、俺をからかいたくて行こうとしただけに見える。今、幸崎達に言った台詞を思い出すと随分恥ずかしい。余り、人が集まる前に逃げ切れたから良かったものの、よくよく思い返してみれば、今と同じように俺は左手に荷物を持ったままだった。格好つかない。よく分からないと言う人は、ヒロインのピンチシーンに主人公が拳一つで乗り込んできたが、その主人公の左腕に買い物袋がぶら下がっているシーンを思い浮かべて貰いたい。想像できたか?……台無しだろ?


「あ、神座、榊さん。二人も買い物?」

「あぁ、そういう楔も二人きり(・・・・)で買い物か?」


 二度あることは三度ある。そんな言葉を思い浮かべながら、デパートで会った楔と須佐原に、二人きりの部分を強調しながら挨拶する。まぁ、モテない男子の僻みみたいなもんだ。その程度で傷つく楔でもないし。帰宅部唯一の良心の渾名は伊達ではないのだ。あ、今は並譜さんもいるから二分してるけどな。二分の一だ。


「うん、彗ちゃんに誘われちゃってね」

「須佐原、デートもいいが課題は終わったのか?」


 嬉しそうに、楔の腕に自らの腕を絡める須佐原にそう質問すると、笑顔のまま表情が固まる。なんだ、まだ終わってないのか。まぁ、俺や榊じゃあるまいし、初日に終わらせている方が変だな。榊の友人によると普通は、ゴールデンウィーク後半にするらしいし。俺は終わってるけどな。


「あっ、彗ちゃん、悪いけど僕課題終わってるから手伝えないよ?」

「……え?」


 ギギギと錆び付いた油の切れた機械のように動いた、というありふれた表現がぴったり当てはまってしまうほど、人体の動きとは思えないほどの不自然さで、首を傾げる。普通なら、頭にはクエスチョンマークが浮かんでいるのだろうが、どうにも俺には首の不自然な動きといい、現実逃避しているようにしか見えない。


「須佐原、まだ時間はある」

「頑張って彗ちゃん!」


 拳を握り、両手を胸の前まで持ってきて、須佐原を応援する榊。辺りを見渡すと、その仕草にクラッと来ている男が数名。因みに、俺と楔は平気である。何故なら、美形耐性を持っているからな。


「うぅ……出来るきがしないよぅ……。そうだ!今から課題やったら終わるかも!」

「うぇ!?彗ちゃ、首がしまってる!!」

「ふぇ?あ、ごめん。じゃ、二人ともバイバーイ!!」


 楔の後ろ襟をがっしりとつかみ、爆走していく須佐原。楔は息苦しそうに、首の後ろにある須佐原の腕をタップするが、それが聞き入れられることは無さそうである。……こんな、扱い受けてたら、そりゃあんだけひどく当たっても可笑しくないわ。うん。謎解明。


「うわー、楔くんも大変だねー」

「そうだな……」


 まるで嵐のようだったといえばいいだろうか。特に、直ぐにどっか行くところあたりがそれっぽい。窒息死しそうな楔に合掌。強く生きろ……楔。課題が終わっているのに見せないところ辺りが彼っぽくはないが。聖人君子の彼なら見せても可笑しくはないが、彼女にだけはきっと見せることはないのだろう。普段苦労させられてる分は、苦労してもらわなきゃ気が済まないとかかな。


「あっ!」

「どうした?榊」

「幸崎くんに気を付けろって言うの忘れてたよ」

「あぁ、そうだな」


別にそれを伝える必要はないと思ったが、適当に相槌をうっておく。正直、楔が幸崎と対立することはないと思うのだ。幸崎の考えは俺には分からないので、多分でしかないが、幸崎は楔を友達だと思っているはずだからな。内心どんなことを思っているにしろ、幸崎も楔のお陰で幾らか助かっているということは流石に把握しているだろう。それよりも、俺の方が心配である。楔と違って、俺はあいつと決定的に対立したからな。あいつを敵に回すということは、あいつの取り巻きを敵に回すことと同義であるはずだ。ちっ、格好つけすぎたかもな……。


「神座ー。お腹すいた」

「あぁ、そうか。もう一時だしな。そこの店に入って昼飯にでもするか」


榊がお腹すいたとねだってきたので、俺と榊は店に入り、食事を取ることにした。





二度あることは三度ある。

そんな言葉が俺の脳裏を駆け巡る。食事をとったのち、アクセサリーが見たいと言い出した榊に連れ添うように、アクセサリーショップに足を踏み入れた俺を待っていたのは偶然の遭遇だった。


「……よう、古幡後輩、並譜さん」

「か、簪先輩!?」

「どうしてここに?」


聞きたいのはこっちである。俺と榊が店にはいると、目立つ二人組がいた。それは俺の帰宅部の後輩だった。二人で来ているようである。初々しいカップルのような雰囲気が滲み出ている。なんだろう、幸崎といい、楔といい、古幡後輩といい。なんで、俺の回りにはカップルもどきが多いのだろう。俺なんて、本日限りではあるが奴隷扱いも同然なのだが。何?泣いていいの?泣くよ?俺。


「勿論、遊びに来たんだよ!」

「あぁ、そうなんですか、榊先輩」


並譜さんからの何故ここにいるという質問に答える榊。遊びに来ただと……?一切遊んだ記憶がないのだが。店に入って暫くして幸崎達と出会い対立してー、そのあと楔達と会って、一瞬で須佐原と何処かに行ってー、昼飯を食って今に至る。あれ?何処に遊んだ要素が?


「なぁ榊、俺全く遊んだ記憶がないんだけど」

「あっはっは、何言ってるのさ神座。私が神座で遊んだでしょ?」

「……弄んだの言い間違いだな」

「ははは、で、古幡くん達はどうしてここに」


乾いた声で笑われスルーされた悲しみは一先ず置いておこう。多分、遊んだのではなく弄んだという表現に言い換えられたことが図星で触れてほしくないんだろう。俺は空気の読める男――否、空気になれる男。違和感なく空気に馴染む、エアーマンの称号持つのが俺。ゆえに、問いただすタイミングが過ぎたことは理解している。あとで聞けばすむ話だ。ここは古幡後輩の話を聞き、リア充かそうでないかの判断を下すほうが大事なのだ。


「いえ、今日家で課題をやっていたら、雪吹くんが家に電話をかけてきて、一緒に遊ばないかと誘われたんですけど……」

「あぁ、うん。なるほど。お前達の状況はよく分かった」


つまり、古幡後輩は同級生及び、クラブメイトとしか見られていないということだ。ドンマイ。古幡後輩が並譜さんに恋愛感情があるのか知らないが。でも、この前チラチラ見てたし、そういう感情が含まれてるのは確かだろう。


「簪先輩に言われたくないっす!?」

「はぁ?お前それはどういう意味だ?」

「だって、榊先輩がめっちゃ――」

「どうした榊。なんで俺の耳をふさいで俺に聞かせないようにしている?」


後ろから、耳を防がれ、古幡後輩が何を言っているのか聞こえなかった。なんだったのだろう。気になるが、後ろから聞いたらお仕置きムードがとても漂ってるので聞くに聞けない。


「も、もう用事はすんだしか、帰るよー!神座!」

「は、急に何言って、首がゴフッ」


連れ去られた楔と同様の格好で俺は、動揺した榊に家まで後ろ襟を捕まれて、帰っていった。

第十六話。

次回から、学校に戻ります。多分。

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