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俺とギャルゲー主人公達は邂逅する

 運命の歯車がいつも噛み合うとは限らない。

 小説や、漫画、アニメなどは、噛み合うことで物語が始まるが、しかし噛み合わずとも、空回りしようとも進んでいくのが人生と言うものではないだろうか。始まりもしかり。それに、噛み合って始まったからといって、それがハッピーエンドで終わる確証など何処にもないのだ。全てが順調に進んでいるように見えても、実はそれは見せかけだけかもしれない。ハリボテの可能性だってあるだろう。人生とはままならないものであり、全てが上手くいく人間など真の意味では存在しない。人生に失敗も下手も必要なのだ。

 そんな、俺の考察より導き出される結論はたった一つ。過程がどれ程滅茶苦茶で破茶滅茶であろうと、終わりよければ全てよし。ようは、始まり方が、唐突だろうと、衝突だろうと、回避だろうと、最終的に強引にでもハッピーエンドに持っていける奴が一番の勝ち組。そういう意味では、やはりギャルゲー主人公的立ち位置である幸崎は勝ち組なのだろう。


「や、奇遇だね、榊さん、簪」


 榊の買い物の荷物持ち……虚しいので、虚言でもいいからデートと言っておこう。榊とのデート中、俺は彼女に振り回され、様々な場所を回る訳だが、その途中で悲しいかな、幸崎と出会ってしまった。今日も、何時ものように女子を回りに侍らせているようだ。流石は、全男子の敵である。人数は四人。榊をライバル認定してるのか知らないが、俺の大事な幼馴染みを睨んでいる。どうやら今日は比較的人数が少ない日らしい。榊にだけ挨拶するのかと思ったら、俺にもしたので、ちょっと意外だったが。まぁ、宣戦布告しといて無視するのは流石に格好つかないからだろう。そうでもなければ、勝ち組が負け組をきにするはずもない。


「……こんにちは、幸崎くん」


 不満げに眉をひそめながら、それでも挨拶する榊。随分、ハーレムを嫌っているようだ。その証拠に、代表である、幸崎にしか挨拶をしていない。まぁ、睨んできてる奴にまで挨拶する義理はないのだが。


「一緒に行ってもいいかな?榊さん」


 爽やかな笑みを浮かべて、榊に訪ねる幸崎。榊は俺の方をちらりと見る。俺は、どちらでもいいことを、目線で伝え、榊に一任する。本当は関わり合いたくないけど、今日は榊の用事だし、荷物も……従者が主君に意見を述べることなどあってはならない。俺は、榊に対しては、色々と渋るけど最終的にはイエスマンだからな。プライド?それで、人権が守れるなら、持つが。俺の人権と、誇りなら、当然人権を選ぶ。襟を片手で握られ、首もとが締まったまま連行されるぐらいなら、俺は任意同行するね。


「え、えーと……」


俺の方をチラチラと見ながら、答えに窮する榊。あ、これは断りたいけど、断る方法が思い付かないタイプの状態だ。多分。従者は、主君に従うのみ。勿論、そんなものは俺が比喩した現在限りの関係ではあるが、それが真実であるということに変わりはない。だから、俺は身を挺してでも、泥を被ろうと主君()を守る。幼馴染みだしな。姫を守るのも騎士の役目なんだよ。榊の数歩分後ろに居た俺は、榊に歩み寄っていき、左後ろから近づき右手で、右肩を掴み榊を抱き寄せる。驚いたのかヒャッとか言ってるが今は気にしない。正直、冷静に考えたら超恥ずかしいのだ。勢いに乗っている今だからできることだ。そう言えば、幸崎は俺には負けないとほざいていたな。なら、見せてやれ。


「悪いな、幸崎」


幼馴染みとの仲の良さを、魅せてやれ。


「――榊は今日。俺の貸し切りなんだ」


口まわりの表情筋が、吊り上がるのを感じる。俺は、笑えているだろうか。榊には悪いことをしてしまった。こんなのに貸しきられるなんて可哀想な幼馴染みである。が、これも自分の保身の為と割り切って貰いたいものだ。俺に会わせて演技してほしい。この作戦に乗ってくれるのなら、少なくとも幸崎よりは好かれているということの証明になるから。


「っ!?やめろ、簪!!榊さんが嫌がってるじゃないか!!」

「え?マジで?」


た、確かにヒャッとか言ったもんな。え?それって驚いたからじゃないの?俺のこと嫌いで声だしたの。嘘だろ?超ショック。


「そ、そんなことないよ!」


榊は慌てて幸崎の言葉を否定する。良かった。嫌われているわけではないようだ。幸崎のハーレム陣に嫌われようと、クラスメイトに嫌われようと、別に構わないが榊に嫌われるのだけは、マジ勘弁。家族のこともあるし、何より唯一の幼馴染みに嫌われるとか、俺じゃ耐えられない。


「……嫌がってないじゃないか。嘘は良くないぜ、幸崎」

「じゃ、じゃあ、私たちはもう行くから。バイバーイ」


俺と幸崎の一触即発のムードを感じ取ったのか、フォローして去ろうとする榊。手を取られ、走り去ろうとするが、一つ言い忘れていた言葉を思いだし、立ち止まる。


「すまん、榊、一つだけ」

「分かった」

「……なんだよ、簪」


俺を睨み付けて、問いただす幸崎。お前に用があるわけではないのだが。まぁ、こいつにもいっておいた方がいいか。意図せずだとしても関わってしまった訳だし、いけるところ、もとい言えるところまでは言っといた方がいいだろう。


「幸崎の回りにいる女子」


俺は、幸崎の取り巻きどもに、話しかける。眉を寄せて、睨み付けるように。今日は表情筋の調子がいいようだ。これも、幼馴染み()が絡んでいるからだろうか。彼女たちには言っておかなければならないことがある。うん、これは絶対に言っておかなければならないな。


「――榊に害を成すつもりなら、全力で叩き潰すから、覚悟しろよ?」


女子に向ける言葉では無いことは俺が一番理解している。が、不愉快な感情を幼馴染みに向けられているのを、見逃せるほど、俺は人間できてはいない。幼馴染みに害するものは敵。そこに女子や男子、性別は全く関係ない。だいたい、俺の回りで女子と認識しているのは、榊と須佐原と並譜さんだけだ。それ以外の人間は女子と認識していない。興味が湧かない。あ、あとは幸崎の幼馴染みの空谷ぐらいだろうか。そう言えば、取り巻きにいないようだ。


「いくぞ、榊」


言いたいことは言い終わったので、彼らが絶句している間に榊の手を取り走り出す。こういう奴らは敵対するとすぐに逃げるに限る。じゃないと、正論振りかざして口撃してくるんだから。全くもって面倒くさい。幸崎たちは追いかけて来なかったようで、ある程度距離を取れたので、そのまま歩く。榊が俺を見て喋り出す。


「どうして、あんなこと言ったの?」


責めるような口調で、俺に聞いてくる。が、その根底には俺を心配してくれているような色が見える。どうしてと、言われても理由なんて決まっている。


「俺は、お前を守りたいから」


だから、釘を刺しておいた。と答えると、顔を俯かせ、耳を真っ赤にしている。多分顔も赤い両手で覆っているし、俯いているから分からないが。榊はやがて蚊の消え入るような声で呟く。


「なんで、そういうこと言うんだよ神座は……うぅ……バカ」


グフッゥ!ふ、不意打ちだ。余りの可愛さに俺の美形体制Sであるはずの俺ですら大ダメージを受けた。くっ、俺を殺す気なのか!?というか、なんだこのシチュエーション。どこぞのラブコメか。俺にそういうの向いてないの分かってるはずなのにな。今日は従者の身でちょっと暴走しすぎた感が否めない気もするので、そういう雰囲気に乗っておこうじゃないか。


「大事だからな。幼馴染みが」

「もう!いいところを無表情で言わないでよ!!」


最後の最後で働かない表情筋に、俺は泣きたくなった。

第十五話。

少し、執筆に時間がかかってしまいました……。

毎回三千文字前後で弱音あげてる僕って……と思わないこともないですが、実は第四話辺りからすでにネタ切れだったのです。察してあげてください。


因みに、今回のサブタイトル

『神座さん、格好つけるの巻』


次回もよろしくお願いします。

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