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聖人君子と体育会系女子は対決する

現実において、勝負とは無情である。必ず、勝者と敗者を生み、結果という形で、重くのしかかる。今までの努力が無駄だと気がつかされ、どちらかの努力が水の泡とかす。勝負とは、それほどに残酷なものだ。敗北から得られるものは、勝利よりも少ない。勝者は勝ち続け、敗者は負け続ける。それが、この世界の理。強者が肯定され、敗者は否定される。そんな時代。そもそも、勝負とは、戦争の縮小化させたものだ。将棋しかり、チェスしかり。戦う上で、相手を叩きのめす覚悟を持たなければ為らない。そうでなければ。


「くっそー!神座にまた負けるなんて!」

「フッ!プレイ時間千時間越えをなめるな!」


――格ゲーにおいて、勝利することなどできる筈もない。


俺と榊が自分の住んでいるマンションに招き入れたところまではよかったが、何分やることがない。そんな訳で、俺の部屋まで侵入してきて、わざわざゲームをしているというわけだ。俺は自分のマンションの内、数部屋を自分の部屋として使っているが、客人様に幾つか使っていない部屋を割り当てている。ベッドに、机、中身の入っている冷蔵庫、そして、ゲーム機にキッチンなど、そこでも暮らせる程度のものは買い揃えている。俺と、榊達帰宅部の部員一同は俺に格ゲーで挑んでいた。


「なんで、そんな強いの!?」

「……することがなかっただけだ」

「只の暇人じゃないっすか!!」

「う、うるせぇ!!そういうのは、俺に勝ってから言いやがれ」


連戦連勝、百戦錬磨、一騎当千。俺の格ゲーの実力は、それほどまでに彼らとかけ離れていた。とはいえ、これは、俺が滅茶苦茶に強いというわけではなく、彼女達が弱いだけなのだ。格ゲーというのは、コンボもさることながら、その最大のメインは、どれ程いかに早く、ボタン入力が出来るか、その全てにかかっている。全ての攻撃の起点となる一撃目を確実に決めれるか決められないかで、その勝率、試合運び、キャラ運用は大きく変わる。因みに、これだけぺらぺらと喋っているが、大会に行けば、一回戦勝ち抜けるかどうか分からない。千時間など、初心者の粋でしかないのだ。


「神座、こんなことしてたんだね……」

「おい、なんだその哀れみの込められた実に形容のし難い目差しは」


何故だ。何故、勝ったはずの俺がそんな目で見られているんだ。あれか、これが噂の勝負の勝って、試合に負けたという奴か。そうなのか。言っておくが、初心者の粋をでないと言っても、それは玄人目から見ればの話なのだ。初心者からすれば、俺の実力は、さぞ強く写っていることだろう。


「はぁ、仕方ないな。変わってやるか」

「いやぁ、凄いな神座は」


楔がそうやって俺を褒め称える。こうやって、楔が俺を褒めるのは久しぶりな気がする。最近、それ以外の視線を送られることが多いからな。


「よし、勝負だ!くー()くん」

「うん、よろしくね彗ちゃん」


俺が楔にコントローラーを渡したとき、丁度相手が諏佐原だった。諏佐原は、相手が俺ではなく楔であることに気合いを入れ直す。というか、いつも思うのだが、諏佐原の楔の呼び方は、青い魔導士の黄色いマスコットを連想させる。消すのが楽しいんだよな、あのゲーム。じゃなかった。今は、楔と諏佐原の対戦だ。諏佐原が選んだキャラは、俗に言う強キャラで、それに対して楔は、特筆すべき弱点はないが、長所もないという、よく言えばオールラウンド、悪く言えば器用貧乏のキャラ。


「じゃあ、よろしくね彗ちゃん」

「いっくよー!くーくん!!」


戦いの火蓋は切って落とされた。彼らのやっている格ゲーは、普通の格ゲーで、それなりに面白い。雑魚キャラでもプレイヤー次第では勝てるようになっているからだ。……それが普通だと思う。諏佐原が一方的に攻めている状態だが、それらをさばき、技を繰り出して出来た隙に少しずつ楔が諏佐原のキャラにダメージを蓄積させていく。コツコツと戦いっていくスタイルのようだ。その一方で、諏佐原は大技を繰り出し、楔が削っていった分を一気に取り戻す。流石に、必殺技をかわしきることが出来ないか。因みに、玄人なら、余裕でかわします。俺も使っているキャラによっては出来ないこともないです。


「うーん、ちょっと諏佐原が有利か……?」


諏佐原の使用キャラが強キャラで、楔の使用キャラが並み程度の性能を持っていない時点で、諏佐原が少し有利なのだ。とはいえ、楔の方が、キャラの使い方はうまい。諏佐原が有利と言ったが、分からないな。そろそろ、キャラの性能による差が出始めている。


「あっ……」


諏佐原がコマンド入力をミスし、技を失敗したと思われる。その隙をついた楔がここぞとばかりに必殺技を連発し、そのまま勝利を勝ち取ってしまった。楔、強い。


「ねー、神座ー。他のゲームないのー?」

「……人生ゲームぐらいしかないぞ」


暇になってきた榊が俺に訪ねる。みんなでできるゲームと言えば、あとは人生ゲームぐらいしかない。運が大きく作用されるあのゲームを俺は余りやりたくはないが、確かにあちらの方が条件は公平かもしれない。格ゲーはプレイ時間がもろにプレイの上手さに影響するからな。


「じゃあ、とってくるかちょっと待っててくれ」


確か、人生ゲームは他の部屋においていた筈なのだ。取りに行くのはめんどくさいけど、口で説明しても、分かりにくいし、俺が取りに行くしかない。俺は、渋々立ち上がり、部屋まで取りに行く。誰も一緒に俺と来ようとしないところが流石だと思った。これでも、俺は帰宅部の副部長なのだが。まぁ、今は遊びに来ているので、余りそうゆうことにこだわっても仕方がない。俺は、そんな細かいことにこだわるほど小さい男ではないのだ。


道中、勿論誰にも会うはずがなく、そのまま突き進み、人生ゲームを奥の方から取りだし、来た道を戻る。俺が、帰ってくると、楔と諏佐原がまだ対戦していた。榊に聞くと、これで七戦目で、楔が全勝しているらしい。楔の戦い方はなんかプレイになれている気がする。実は格ゲーやったことあるんじゃないだろうか。


「あ、人生ゲーム持ってきてくれたんだ」

「おう、さっさと始めるか」


それぞれが自分の駒をとして車にピンを突き刺す。順番はルーレットで、決める。しかし、いつも思うんだが、このルーレットの順番を決めるルーレット回しをしなくてもいいのだろうか。じゃあ、俺から回すな?とか、少し不公平じゃないか?それを言うと、いつも怪訝な顔をされて、黙ることになるのだが。因みに、俺は人生ゲーム榊としかやったことないです。一回も勝てたためしないです。


「うわ、ここでそのマスは厳しいっす!!」


順調に皆が古幡後輩が、皆にお金を払うマスに止まったり、榊が俺から財産を巻き上げたり、並譜さんがカジノマスで一発当てたりととても楽しい時間を過ごしたと思う。けれど。


「……当初の目的を忘れている」

「……あ」


俺がポツリと呟くと榊が反応し、回りも静かになる。クラブ活動一切してないもんな。実際はこれが普通なのだが。部屋を涼しくするためのエアコンの音が、やけに響いた。

第十三話目です。

最後の方は少し早足になってしまいました。人生ゲームの順位は多分、榊さん、楔、並譜さん、神座、古幡後輩、諏佐原さんだと思います。次回からは、傍観出来たらいいなぁ……。

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