実写だ……!
心の中がまだ落ち着かない私を他所に侍女が食堂の扉をノックする。
「セシリアお嬢様がお見えです。」
飾り掘りの施された高級感のある扉が開く、
私はごくりと唾を飲み込み
…ゆっくりと食堂へ足を踏み入れた。
「おはよう、セシリア。」
その声に、私は顔を上げた。
!!!
――いた!
朝日に照らされる金色の髪。
柔らかく微笑む、澄んだ青い瞳。
エレノア!エレノアだ!
web小説しか読んでないけど本物だと何故か分かる。
本物のエレノアが、目の前で笑っている。
何度も小説で読んだ。
何度も応援してきた。
あのエレノアだ。
(やばい……。)
(実写だ……。)
(コミカライズもアニメ化も通り越して実写だ……。)
(しかも推しが目の前で動いてる……。)
(声も可愛い……尊い……。)
胸の奥がじんわりと熱くなる。
でも今は泣くわけにはいかない。
「お、おはようございます、お姉様。」
なんとか平静を装って挨拶を返す。
エレノアは安心したように微笑み、軽く頷いた。
「こちらへ。」
勧められるまま席へ向かう。
向かいにはアンナが座っていた。
艶のある栗色の髪。
年齢を感じさせない整った顔立ち。
穏やかな笑みを浮かべているのに、その美しさには思わず目を奪われる。
(うぉー……。)
(アンナぁぁぁー!)
(出た、悪役!)
(美人!!)
……いや、感心してる場合じゃなかった。
「セシリア。」
「は、はい。」
「今日は随分静かなのね。」
「そ、そうですか?」
「ええ。何だか少し様子が違う気がして。」
一瞬、心臓が跳ねた。
(さすが母親……!)
(鋭い!)
(私はお嬢様、私はお嬢様……。)
落ち着け私、お嬢様らしく振る舞わないと!
「ちょっと寝不足で……。」
苦し紛れに笑う。
「そう。体調には気を付けなさい。」
アンナは穏やかに微笑んだ。
(外面、完璧すぎる……。)
原作を知っているからこそ、その笑顔が少し怖い。
「では、いただきましょう。」
三人で手を合わせる。
焼きたてのパンに、湯気の立つスープ。
朝食はどれも美味しそうだった。
(これがアルディス公爵家の朝ごはん……。)
(コンセプトカフェじゃなくて本物……。)
(ティーカップも高そう…)
一口食べる。
(おいしい……。)
(パンふわふわ……。)
(毎朝こんなの食べてたの!?)
感動しながら顔を上げる。
エレノアは背筋を伸ばし、綺麗な所作で食事をしていた。
ナイフとフォークを持つ手も美しい。
(さすが未来の王太子妃……。)
見惚れていると、エレノアと目が合った。
「どうかしました?」
「へっ!?」
「先ほどから私の方ばかり見ている気がして。」
「あっ……。」
しまった。
完全に推しを眺めるオタクになっていた。
「な、なんでもありません!」
慌ててスープを飲む。
エレノアは不思議そうに首を傾げたあと、小さく微笑んだ。
その笑顔に、少しだけ肩の力が抜ける。
朝食を終え、エレノアが席を立つ。
「それでは、王妃教育へ行ってまいります。」
その言葉に、胸がざくりと疼いた。
(王妃教育……。)
(待って。)
(この辺からだった気がする……。)
「ええ。行ってらっしゃい。」
アンナが穏やかに送り出す。
エレノアは私にも微笑みかけた。
「セシリアも、良い一日を。」
「は、はい!」
にこり、と笑うエレノア。
(可愛い……。)
……はっ!
(違う違う!)
(見惚れてる場合じゃない!)
(今から何が起こるんだっけ……。)
思い出せ。
私は必死に原作の記憶を辿った。
お読み頂きありがとうございます。
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この転生モノの原作は、私の初めての投稿作です。
転生物はよくあるけどその原作って読んだことないなぁと思ったので、原作が存在しているものに転生させてみました。
「9年前~」も合わせて読んでいただけると少し楽しいかも知れません。




