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聖地巡礼してる場合じゃありません!~「推しを苦しめるはずの悪役令嬢に転生しましたが、ハッピーエンドは私が守ります」~  作者: 若松りこ


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ちょっと情報量が多い!


 小鳥のさえずりで目が覚めた。


 ……朝?

 ぼんやりと目を開ける。

 見覚えのない天井だった。


「……ん」


 身体を起こした瞬間、妙な違和感を覚えた。

 身体が軽い…布団が大きく感じる。

 寝ぼけてる……?

 そう思った、その時だった。

 控えめなノックが響く。

「お嬢様、お目覚めでしょうか。」 

……え? 

返事をする間もなく扉が開いた。

「失礼いたします。」 

黒と白を基調としたメイド服。 

銀のお盆を持った若い女性が、慣れた足取りで部屋へ入ってくる。


「え…だれ?こわ。」


知らない人が自分の部屋みたいな顔で入室し近づいてくるものだから思わず声に出してしまった。


「いかがなさいましたか?お嬢様」 

不思議そうに首を傾げる女性。 

いや、それはこっちの台詞なんだけど。


「あ、あの……。」 

恐る恐る口を開く。

「どちら様でしょうか……?」

「……はい?」 

女性が固まる。


「お、お嬢様……?」

 女性は困ったように私を見つめた。

「ご気分でも優れませんか?」

「えっと……。」


 状況が分からない。


 ここはどこ?

 この人は誰?

 なんで私を『お嬢様』なんて呼ぶの?


「セシリアお嬢様。」

 ――セシリア?

 その名前に胸がざわつく。

「お召し替えをお手伝いいたします。本日はアンナ様とご朝食のお約束がございますので。」

 アンナ。

 また聞き覚えのある名前だ。

 偶然……?

 いや、そんな偶然ある?

 侍女に促されるまま着替えを済ませ、部屋を出る。

 広い廊下を歩きながら、セシリアとアンナという

人物が出てくる物語の事を考えていた。

まさかね、と思いつつも私はできるだけ自然を装って探りを入れてみる。


「もしかして、お、お姉様がいたりとか…」

「エレノアお嬢様でしたら、すでに食堂へ向かわれております。」


 やだ。ビンゴ。


 セシリア。

 アンナ。

 エレノア。

 三つの名前が頭の中でゆっくりと並ぶ。

 いやいやいやいや……でも

 

まだ!

まだ決めつけるには早い。

異世界ファンタジーあるあるだし。

名前かぶりがちだし。


その時、廊下の向こうから執事が歩いてきた。

「おはようございます、セシリアお嬢様。」

深々と一礼した執事は、そのまま穏やかな口調で続ける。

「アルディス公爵様は、すでに公務へお出かけになられました。」


「え……。」


「本日のご朝食は、アンナ様、エレノアお嬢様、セシリアお嬢様のお三方でございます。」


 アルディス公爵様。

 もうフルコンボ。


「『9年前』じゃん……。」

『婚約破棄された公爵令嬢ですが、すべては九年前から始まっていました』

私が一番好きな異世界恋愛小説。

略して『9年前』と呼んでいた。

「待って……。」


 私は高橋紡希。

 二十三歳。

 ごく普通の会社員。

 昨日だって普通に仕事を終えて、コンビニでお弁当を買って帰っただけ。


 別に過労するほど働いてないし……。

 交通事故にも遭ってないし……。


「えぇぇぇぇぇ……なんでぇ………。」


 よりにもよって。

 セシリア。

 エレノアを苦しめ、最後にはすべてを失う悪役令嬢…!

 でも。

 今からエレノアに会えるってこと…!?


(待って。)

(落ち着いて、紡。)

(つまり今から……。)

(え、無理無理無理無理。)

(推しと朝ごはんとか心臓もたない。)

(本物のエレノア……。)

(やばい、泣きそう……。)


 思わず口元が緩む。

 夢みたいだ。

 ずっと小説の中で応援してきたエレノアが、この扉の向こうにいる…!!


――婚約破棄されたけど、最後まで諦めず真実を追い続けて、レオン様と結ばれるエレノアがこの向こうに…!


 ……ん?


 婚約破棄……?

……誰のせいで…??


え…。

これ喜んでる場合じゃなくない!?


コメディっぽいものに挑戦したいと思います。

この転生モノの原作は、私の初めての投稿作です。

転生物はよくあるけどその原作って読んだことないなぁと思ったので、原作が存在しているものに転生させてみました。

「9年前~」も合わせて読んでいただけると少し楽しいかも知れません。

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