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私、時永めぐる(16)は11度目の人生を歩んでいる


 私、時永めぐる(16)は11度目の人生を歩んでいる。


 今回の人生も順調順調。


 前回の時もそうだったけれど、早期に橋姫様と接触したことで、それからの死亡イベントの対処が格段に楽になっている。


 ……まぁ、ものによってはやりすぎな対処になりそうだったりしたけれど。


 橋姫様、普通にヤンデレだからなぁ。もともとが嫉妬に狂ったことが元で鬼に堕ちた人だしねぇ。さもありなん、ってことか。


 いや、でも、いまだになんで私がこんなに気に入られたのかが不明なんだけれどね。


 さて、そんなわけで、気持ち的にも時間的にもだいぶん余裕の出来ている今回の人生。父による売り飛ばしイベント以降、これまでに遭遇したことのない妖怪さんたちと交流を持ってみたよ。


 まず最初に交流を持ったのが、狸さん。……いや、妖といっても、見てくれは普通に狸なんだよね。狐さんなんかは格が上がると尻尾が増えるんだけど、狸はそのままなんだよね。普通の狸との違いは、会話が可能というところか。あと妖術。


 特異な姿をした狸となると、茶釜な狸さんとかいるけれど、あれは特殊なんだろう。見なかった……というか、現在はいないらしい。で、時永のお山に隠神刑部を筆頭に、狸さんのクランが新規に出来上がったよ。


 そんなわけで、おじさんと顔合わせをしてもらった。いや、おじさんが急に「そうだ、狸狩りをしよう」などと思い立たれても困るからね。


「めぐるちゃん」

「なに? おじさん」

「えーっと……なんで妖怪と知り合いになったの?」

「玉様からの紹介?」

「たまさま?」

「玉藻様」


 おじさんは絶句し、頭を抱えた。


「え? 玉藻様って、玉藻様!?」

「そうだよ。ほかにいるわけないじゃん」

「待って、そっちの方が謎だよ。国政に関わるような政治家にでもならなけりゃ、接点なんて欠片もないよ!?」


 あー……確かに、玉様=神様、だからねぇ。うーん……ちょっと秘密をバラすか。おじさんなら大丈夫だろうし、最悪、【現実改変】で【制約】の呪いみたいなことをすればいいや。


「私が神隠しに遭ったのは知ってるでしょ?」

「あー。うん。聞いた。でも……あー、免れたんだろう?」


 あれ? なんでそんな困ったような……あー。私がいじめに遭ってたからか。免れた理由がいじめ由来って知ってるから、そりゃ気まずい感じになるか。


「実はそれ嘘。私もしっかり神隠しに遭ったんだよね。で、みんなを見捨ててひとりで帰ってきた」


 おじさんは絶句して私をみつめた。ちょうどこの場所は、以前の世界線で珠ちゃんの祠があった場所だ。ついさっきまで狸さんと顔合わせしてたんだ。

 今後は、ちょこちょこと交流を持つ予定だ。まぁ、一緒にご飯を食べる程度だけど。おじいいちゃんとおばあちゃんとは意気投合しそうなんだよね、雰囲気的に。刑部さん。


「え、見捨てて?」

「あ、おじさん的にはそこが気になるんだ。いや、神隠しの先ってのが、いわゆるファンタジーな世界でね。私たちは“人がモンスターに食い殺される”っていうエンタメの……役者? だったんだよ。要は、モンスターから逃げ惑う人間を見ながら、酒盛りをしてたんだよね、私たちを誘拐した連中」

「なんだそのクソみたいな輩は」

「王侯貴族他諸々」


 いや、おじさん。そんな顔をされましても。


「で、私。クラスメイトに『お前が食われて死ね!』なんて感じで蹴り飛ばされてね。そんな感じだから、助けてやる必要なんてないでしょ? というか、そんなこと考える間もなく、こっちに戻っちゃったんだけど」


 あ、おじさん、ガチ頭を抱えだした。そんなにショッキングだったかな?


「でさ、異世界転移なんかのファンタジー小説だと、チート能力を得たりするじゃない。私もそれっぽいものを身に着けたんだよね。多分。玉様によると、世界間を移動している間に強く願うと、その願いっぽい能力が身につくみたいだよ。願わないと、単純に身体能力が凄くなるみたい」

「それで……戻ってきたと」

「うん。あんな変なことに巻き込まれてさ、いじめもあったで、もうなにかも嫌になって、バスの外が真っ白になって地震みたいに揺れてる間、『もうやだ、お家に帰りたい』ってずっと思ってたんだよ」

「そうしたら、家に帰れる能力を得たと」

「そう」


 私はうなずいた。嘘だけど。あ、でも、【異空門】とか得たし、嘘ってわけでもない?


「だから、いまは迷子になっても、最悪自宅に直帰できるよ。異世界から戻った時は、なんでトイレなんかに出たのかはわかんないけど。って、こんなこと云って信じてもらえるのかな?」

「信じるもなにもなぁ……」

「んで、こんな能力をもって、でまぁ、何度か使ったりもしたんだけれど、そのせいで玉藻様に、というか天狗様に色々とばれて、その縁で玉藻様と知り合いになった感じかな。それでウチのお山、守り神様がいないって天狗様から教えてもらったから、なってくれる方がいないか聞いてみたら、狸さんたちが拠点にしてくれたんだよ。ほら、最近山を荒らす連中が多いって云ってたじゃない。キャンプブームだかなんだかしらないけど、その影響で」


 おじさんは何とも言えない疲れたような表情を浮かべた。


「まぁ、それはありがたいが」

「ウチの畑を荒らす害獣も排除してくれるっていうし、ありがたいよ。報酬ってわけじゃないけど、月一くらいで情報交換的な食事会をするだけでいいわけだし」

「妖怪相手に何をだせばいいのかわからんぞ」

「普通のごはんでいいと思うよ。あぁ、あと、ここらに祠でも建てといたほうがいいかな。お稲荷さんの祠っぽいの」

「……なかの像を狸にするのか?」

「あー、そうなるのか。いい塩梅の狸の像とかあるかな? お蕎麦屋さんにあるみたいな信楽焼の狸はちょっとアレだしね」


 なんてやり取りをした。


 現在は、刑部さんとおじいちゃんは意気投合して茶飲み友達になっている。


 うん。酒飲み友達でなくてよかったよ。妖怪相手の酒盛りなんて自殺行為もいいところだからね。酒豪なんて言葉じゃ収まらないから。


 で、次に会ったのが、売り飛ばしイベントの時の海坊主さん。なにかで見た達磨大師みたいな山伏的な恰好をした巨人さんだ。


 無口な頑固親父みたいな雰囲気だったよ。本質は酒呑童子のおっちゃんと同類かな。せっかくだから、お近づきの印にお酒をひと樽渡してきた。樽といっても、海坊主さんのサイズを考えるとたかが知れてる量だけどね。


 あとは河童とか毛羽毛現とかかな。毛羽毛現は結構ヤバい感じの妖怪だと思ったんだけど、なんだか妙にほのぼのした妖怪さんだった。


 いまは橋姫のダンジョンのお仕置き部屋の一部を担当しているそうだ。


 うん。記憶違いじゃなかった。危険度は低いながらも厄介な妖怪の類なようだ。能力的には。


 まぁ、油すましとか、無害といわれながらも人食いの小豆洗いよりはマシなんだろう。もっとも、人食いなんてすると面倒が過ぎるために、現代の妖怪の食生活は人とさして変わらないらしいけど。


 河童もいくらか種類……種族? があるらしくて、淵猿なんて呼ばれてる河童は現代でもかなり危険であるそうな。


 さて、それはさておいて高校2年生に突入。


 私の話を聞いている橋姫様はダンジョンの整備時期をズラして、私の死亡イベントに備える、といってくれた。ありがたいことだ。でも下手に変更するとどうなるかわからないから、予定通りに整備を進めてもらっている。


 今回の殺害対策? ばっちりだよ。どうするかというと、ここのところ設定していなかった【自動発動】を利用する。


 私が害された場合、それをなかったことにする。


 現状、兵器でも使用しない限り、近接でしか私を害することはできないだろうことから、害された直後に現実を改変し、武器を取り落したという形でなかったことにする。心臓がふたつあるからこその対処法だ。


 これだと危険は排除できていないけれど、そっちの対策もばっちり。実体化した珠ちゃん(大人バージョン)に一緒にいてもらい、下手人を捕らえてもらう予定だ。


 あとは何事もなく下手人と一緒に電車を降りて、認識阻害の魔法を掛けてから下手人を玉様のところへ転送。


 私は学校へ、という手順だ。


 ん? 刺された時点で転送できるんじゃないかと? いや、できるだろうけど、下手をすると周囲の誰かを巻き込みかねないんだよ。満員電車だから。ほら、足元に【転移門】を開いて落っことす形だからさ。






 放課後。


 私は校門を出た後、適当なところで玉様の社へと【転移門】開いた。


 ……玉様の社。いつみても凄いな。まぁ、神様扱いだからね。思うんだけれど、狛犬がわりの狐像はどうなんだろう。いや、ちゃんと阿吽の形式になっているんだけれどさ。


「こんにちは。お疲れ様です」


 玉様の社。社なんて云っている通り、見た目はでっかい神社だ。それも長い階段を上った先にあるいかにも感じな神社だ。


 その階段を登りきると、なんていえばいいんだろ? 昔風に云えば関所? みたいな感じに人の出入りを管理する詰所っぽい建物が左右にあり、その向こうに鳥居。そして社というちょっと変わった作りになっている。


 だからここに来るときは、まずはこの詰所にいる門衛? さんに挨拶することになる。何度もきているから、もう私はもう顔見知りだ。


「これは女神様。お久しぶりにございます」


 あ、ここのところ会わなかった門衛さんだ。確か――


「えっと、奥さんは無事出産できた? 大丈夫?」

「はい。無事に何事もなく」

「おー。おめでとう。……あれ? それじゃなんでもう仕事してるの? 育児休暇とかあったよね?」

「……身内が大挙して手伝いにきまして。たいして役に立たないんだから仕事にいけと追い出されました」


 門衛さんがなんとも表現しがたい表情を浮かべた。もうひとりの門衛さんが労わるようにポンポンと背を叩いている。……不憫な。

 でもまぁ、それなら育児問題で離婚とかなったりしなさそうだな。


 そうだ。お祝いを渡さないと。っていっても、準備もしてないから、手持ちのものからってなるな。


 ……渡せるようなモノを持ってないんだよねぇ。あるのはヤベーものばっかりで。

 となると、食材とお酒くらいなんだけど。


 うん。めぐる印の薬酒ひと樽と竜のお肉(無毒な草食竜)を渡そう。肉はともかく、樽は運ぶのが大変かな? 神社に奉納するような日本酒のアレと似たようなサイズだけど。まぁ、いいか。人に化けてるけど、この人も狐さんだしね。


「それじゃ遅ればせながらお祝いを置いていくね。むき出しのまんまで悪いんだけど」


 樽をドン。でもってでかい葉っぱでつつんだお肉をドン。肉は10キロくらいあるかな?


 門衛のふたりがあんぐりと口を開いて呆然としている。


「め、女神様、これは?」

「お祝いの、めぐる印の薬酒。昔、異世界で10年位生活してた時に作ったやつ。お肉はドラゴンのお肉。最初に遭遇したのが毒でそのまま食べられない種類だったから、普通に焼いて食べられるやつを狩ったんだよね。それはモモの部分になるかな?

 あ、薬酒は水割りにして飲んでね。多分、ストレートで飲むと効きすぎると思うから。奥さんの体力回復の一助にどうぞ」


 説明した後、もうひとりにもお酒を渡す。サイズはビールの大瓶サイズ。おめでたいことのおすそわけだ。


 さぁ、それじゃ玉様に会いに行こう。さてさて、私を殺した犯人は何者なのかな? 橋姫様の目を突破してきたんだ。しっかりと話を聞かないとね。




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― 新着の感想 ―
 もうやりたい放題。  でもまだアレだけ対策しても、それを貫通する手段を用意してくるんでしょ?  もうイカれとるわ。
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