勝つためには…
「…というわけだ。シュクは信じられるか?」
バク達の家を出て俺達はすぐにシュクが練習している場所に向かい、交響祭の真実を話す。
「確かに、信じたくはないけど、今までの勝者がみんな行方不明なのは不思議なことだって学校でも話題になっていた。それに、救世主さんがそんな嘘をつくことに何の意味もない。俺は救世主さんの話を信じるよ。でも、今の俺じゃあ交響祭で勝つことなんて出来ない。今話題のカーンだっているんだ。それに、たとえ勝てても国の外へ逃げることも出来ない。どうすればいいんだ!」
シュクは目で訴えてくる。
「方法はある。金のことなら任せろ。」
「レイ、どうするつもりだ?」
ラヴェーラは俺に質問してくる。
「当分の資金なら俺が貸しといてやるよ。勿論、利息なんて取らないから安心しろ。」
そう、金なら億単位で持っている。こういうときに使わないでどうする。
「救世主さん、いいんですか?」
「気にするな。それから、逃亡先はセイスティアにしておけ。話ならこっちでつけておく。」
「そこまでしていただけるなんて。」
「セイスティアも、局長が交代して職業求人数が上昇しているから暮らしには困らないはずだ。」
実際、そこらへんの情報はゼンリンから聞いているし。
「ありがとうございます!」
「それから、一つ聞きたいんだけど、歌う曲って自分で考えた曲じゃないといけないのか?」
そこは聞いておきたかったことだ。
「別に決まりはありませんが。」
「それなら、俺が一ついいことを言っておいてやる。姫巫女はお前の幼馴染なんだろ?だったら、そいつとお前、二人がどっちも好きな歌を歌えばいい。結局は姫巫女が歌いたい歌を歌うんだから。」
「そんなことで大丈夫なんですか?」
「そんな簡単な事、に意味があるんだ。姫巫女は望んでいると思うぜ。大舞台でお前と一緒に好きな歌を歌うことを。」
「頑張ってみます!」
俺達はシュクに別れを告げてホテルに戻る。
「レイ、さっきの助言、本気で言っているのか?」
やっぱり疑っていたか。
「まさか。あのときのシュクは緊張で心が張っていた。だから緊張をほぐすために言ったんだ。あまり張り詰めてもいい歌なんて歌えないんだから。歌ってのは娯楽なんだ。娯楽を楽しめなくてどうする?」
「それなら、本気の助言ではないか。」
「あれが助言になるかは、シュク次第だ。」
「どういう意味だ?」
「言われた言葉の意味をどう解釈するか、それは言われた人にしかわからないってことだ。同じ言葉でも、十人居れば捉え方は十通りだ。だから、俺の助言をどう活かすかは、シュク自身にかかっている。それで対した結果を出せなければ、シュクの幼馴染に対する情熱は、その程度だった、ってだけだ。」
そんな話をしながら、俺達は食事を取りに向かった。




