交響祭の裏側
さて、交響祭の歴代勝者の名前が分かったことだし、そいつらの住所を調べて話を聞きに行くか。
「ラヴェーラ、役所に行くぞ。」
「そうだな。住所がわからなければ話を聞きに行くことすらできないからな。」
俺たちはそのまま車に乗り、役所へ向かった。
「どうして一組を除いて全員出国していて国籍なしになっているんだ!?」
役所で住所を調べていて俺はそんな疑問が浮かんだ。そう、第六回の勝者以外一人残らず交響祭の翌日には国外に出ていてロバステオ国籍を失っていた。
「ラヴェーラ、この第六回の勝者のバクとステーの夫婦のところに行ってみよう。」
「そうだな。どうして夫婦揃って国外逃亡しているのか、それを紐解くには唯一残っている夫婦の話を聞く必要があるな。」
俺たちは再び車を走らせてバクたちの住んでいる家に向かった。
家に到着した俺達はインターホンを鳴らす。
『どちら様でしょうか?』
インターホンのスピーカーからは三十代ほどの女性の声が聞こえてくる。この声の主がステーか。
「すみません、俺は零。救世主として呼ばれた者で…」
『あら、今話題の救世主様ですか。バク、上げてもいいでしょうか?』
インターホンの先からはなにか話し合う声が聞こえ、少し経つと再び声が聞こえてくる。
『鍵は開けましたので、どうぞ上がってください。』
ドアを開けてもらい、俺たちは家に入る。
「救世主様、はじめまして。ここにいらしたということは、交響祭の関連ですよね。はじめまして、俺は第六回の勝者、バクと申します。こちらは連れのステーです。」
「よろしくお願いします。」
二人は席に案内してくれて、挨拶をしてくれた。
「一つ気になったことがあるんだ。」
俺が話を切りだそうとすると、
「勝者が皆、なぜこの国から出ていったのか、なぜ俺達がこの国に残ったのか、ですよね。」
バクが先に話を始める。
「交響祭は確かに国の豊穣を祈る祭だけど、それ以外の悪い部分もあるんだ。」
「悪い部分?」
「俺たちが結婚して夫婦になることは確かに交響祭の最重要事項だ。でも、現実はひどいものだ。」
「そんなに悪質なのか?」
「ああ、勝って結婚した俺達に国王は聞いてくるんだ。『歌の姫巫女を王の妾にするか、それとも国から出ていくか?好きな方を選べ。』そう聞いてくる。勿論、こんなことを聞かれたのは俺だけかもしれない。でも、他の勝者は皆、この国を出ていってる。それを理解してほしい。」
なんだそれ。ひどい話だな。
「それで、お二人はどうしてこの国に残ってらっしゃるのですか?」
そんな中でもラヴェーラは二人に質問する。
「国を出ていくことは簡単には出来ない。金銭的にも、生活方面でも。俺たち夫婦は、お互いに話し合った。それで…」
「苦しいことを聞いてしまい、申し訳ありません。それでは、ステーさんはやはり…」
「はい、ラヴェーラさんの想像通りです。」
そうか、そうなるとステーは国王の慰み物になるってことか。
「失礼極まりない話ですまないが、ステーが合わなければいけない相手にルストっていう奴はいるか?」
「…どうしてそれを?」
ステーは一瞬の戸惑いを見せてから質問で返してくる。
「資料館での会話の中で、国王から参加を推薦されていること、楽しませてもらっていることがあること、それを聞いたときはなんのことが解らなかったが、今の話を聞いてそんな考えがよぎった。」
「救世主様の想像通りです。」
「やっぱりそうか。ラヴェーラ、あいつに事実を伝えに行くぞ。」
俺たちは席を立つ。
「わかった。お二人とも、貴重な時間をいただき、ありがとうございました。」
俺たちはバクの家を後にした。




