いきなりスキル!
ある日、俺達は交響祭のグッズ専門店に来ていた。
「レイ、こんな場所になんの用があるんだ?」
「解っていないな。ここには過去に参加した奴らの商品が置かれているんだ。つまり、顔と名前を覚えるのにはうってつけの場所だ。」
「なるほど、そういう方法もあるのか。」
実際、ここに来たことで今回の交響祭の他の参加者の顔ぶれも大分見えてきた。個人的には、シュクの恋を応援してやりたいけど、新旧様々なアーティストにあの胡散臭い民俗学者、これだけでもシュクにとっては苦戦する場所になるだろう。あいつには後でアドバイスでもしてやるか。そんなことを考えていると、カウンター側から何やら揉めている声が聞こえてくる。俺たちはそのまま声の聞こえる方へ向かうと、見覚えのある奴らが店員に文句を言っていた。
「ですのでお客様、こちらの商品は団体様一組で一点のみの販売とさせておりまして…」
「知るか!これだけ余っているんだ!俺たちが全部買ってやるって言っているんだからおとなしく売れよ!」
「その商品は入荷して間もない品物なので、個数制限をかけさせていただいています。」
「そんなの、開店前から待っていないのろまが悪いだけだろ。さっさと在庫全部よこせよ!」
声の主はいつぞやの人身売買の組織の三人組だった。あいつら、転売行為にまで手を出していたのか。
「そこの三人組、あんたらは文字を読む目がついていないんか?それとも頭が悪いから文字の意味がわからないのかな?」
俺はバカにするような口調でデブなリーダーに話しかける。
「おい、にいちゃん。あんまり馬鹿にしていると…って、お前はセイスティアにも現れた救世主!また俺達の邪魔をしようっていうのか!」
「するに決まってんだろ。ラヴェーラに頼んで警察には通報しているから、脅迫の現行犯になりたいならご自由に。」
「ちっ…逃げるぞ!」
三人組はそのまま逃げていった。店舗は狭い、武器はない。そんな状態では不利だと理解しているからだろう。
「救世主様、ありがとうございます。あの三人組には迷惑していました。いつも開店前から見せ前を徘徊して客足を遠ざけて買い占め行為をしていたんです。救世主様のおかげで新商品を買い占められなくて助かりました。」
俺たちは店員と軽く会話をし、駆けつけた警察に事情を話して帰路に立つ。すると、新しいスキルがいきなり5つも増える。とはいっても、どうせろくでもないスキルだろうが。どれどれ、『近くの電車の最短出発時間がわかる』スキル、便利といえば便利だけど、インフォがあれば充分だから、バッテリーが持たないときとかなら使えるか。それから、『鏡で自分を見たときに消費カロリーと摂取カロリーがわかる』スキルって、使いみちに困るものが来たな。あとは『永続的に喉の乾きがなくなる』スキルに、『寝ずに行動が可能になる』スキル、この2つは単にデメリットしか発揮しないから好き好んで使うことはなさそうだな。ただ、『尿意、便意を一時間後に先送りできる』スキルはまだ使いみちがありそうだな。効果の重ねがけができないのは不便だけど。
「どうしたレイ、急に立ち止まって。」
「いや、女神から急にスキルを渡されたけど、まともなスキルは相変わらず渡してもらえなかった。」
「またそれか。スキルについては宿に帰ってから聞いてやるから戻るぞ。」
俺たちはそのままホテルに帰った。




