資料館での出来事
読み上げソフトで一通り遊んでみた翌日、俺達は歴史資料館に行き、交響祭を始めるより前のロバルテオについて調べようとしていた。
「おや、この資料館に客人が来るとは、珍しいこともあるものだね。」
見た感じ三十代半ばほどの男が何かの資料を見ながら言う。
「インテリジェントフォンの情報だけでは分からないこともあるからな。」
「そうか。兎に角、遮光眼鏡は外してくれ。ここは本来は子供向けの資料館だ。目元を隠した成人男性が居るのは、資料館の評判に関わる。」
「さっきはあまり人が来ないとか言っていなかったか?」
「それとこれとは話が別さ。この資料館は国営施設でね、施設運営法の中には〝模範的常識の範疇を外れた衣装での入場を放置した場合、一定期間内の施設運営を停止する。〟という法があるのさ。私も、15年前からここの管理者を任されて以来一度も法を破ったことはない。これは他国の観光客や異世界の救世主であっても、捻じ曲げることはない。」
「馬鹿みたいに真面目だな。疲れないのか?」
「私にも、年に一度の楽しみがあるからね。」
「交響祭のことか?」
「ああ。私も、何度か王に選ばれて参加しているからね。」
「交響祭で歌えるのは生涯に一度ってわけじゃないんだな。」
「ああ、そんな決まりはない。それに、私と今の国王は昔からの馴染みでね、交響祭の後には、色々と楽しませてもらっているのだよ。」
「色々って?」
「おっと、お話はこれくらいにして、資料でも拝見したらどうだい?」
館長は無理矢理話を終わらせようとしている。色々って所、なんか引っかかるな。
「二つ聞き忘れていた。館長の名前は?」
「私はルスト。今年の交響祭にも参加するから、覚えてもらえると助かるよ。」
「そっちから言ってくれて質問の手間が省けた。じゃあ、資料を読ませてもらうよ。」
まずは国の成り立ちを調べる為に年表を読み漁る。建国は今から350年前になるのか。
「ラヴェーラ、サンレイドの建国って何年前?」
「およそ2,400年前になる。ただ、サンレイドが古すぎるだけで他の国もロバルテオと建国の時期はほぼ似ている。」
なるほど、そこまでおかしくはないか。とりあえず、交響祭に関する資料を読む。その中で疑問が生まれる。
「ルスト館長、一つ聞きたいことが出来た。」
「なんだい?」
「過去の交響祭で勝者になった男と、姫巫女の夫婦がどうなったか、知らないか?」
ルストは暫く沈黙を保つ。そして口を開く。
「それについての情報はない。交響祭が終われば町中を普通に歩く夫婦になるだけさ。その後の事なんて二人にしか解らない。」
「じゃあ、過去の勝者夫妻の住所を調べて当時の様子を聞いても問題ないのか?」
「問題ないとは思うが、頑張りたまえ。」
「参考になった、ありがとう。ラヴェーラ、役所に行くぞ。」
「解った。ルスト館長、救世主が迷惑をかけた。」
俺達は資料館を出て役所へ向かう。後ろでルストが不敵な笑みを浮かべていることなんて気付かずに。




